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空を目指して走れ~地下ロボ闘技場でトップランカーを目指す俺の記録~  作者: ユーリアル


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MMW-009

週2更新になります。


「登録戦士名、セイヤ。推定16歳、男。コランダムコロニー第83期卒業生。戦闘スタイルはインファイト。接近からの一撃は上位クラスすら沈めるだろう、だってさ」


「もうこんなに情報が……いえ、これすら商品ですかね」


「だと思うよ。ほら、ほかの戦士も詳細は値段がついてる」


 日課の鍛錬を終えて休息中。

 そんな時にお嬢様が見せてきた、俺の公開されている情報だ。


『これまでの戦闘映像もばっちりあるな。そりゃあ、上は対策しあっていくわけだ……』


 しみじみと言った様子の俺の声。

 どれだけ苦労した……苦労することになるのか、聞きたいような聞きたくないような。


 次の対戦相手は、まだ決まっていない。

 これまでのペースなら、そろそろ決まるはずだけども。


「飼い主が参加できる会議のようなものがあるんですよ。明日、誘われています」


 お嬢様に聞いてみると、そんな答えが返ってきた。

 ……大丈夫なのかな、それ。


(飼い主って、いかつい男とか、いかにもな金持ちとかがなるんじゃないの?)


『半数はそんな感じだが、意外と女もいたぞ。そりゃあ、ソフィアみたいなのはレアだが)


 やっぱり、そういうことらしい。

 最近は、勉強したのか頼もしい一面が見れるソフィアお嬢様。

 けれど、俺からするとどこかポンコツな気配もあるのだ。


「ねえ、それって俺はついていっちゃだめなの?」


「え? どうなんでしょう……でも、確かに護衛を連れてきてもいいとありますね」


 じゃあ、決まりだ。

 俺が守るなんて言うつもりはないけれど、変な約束とかされても困る。


『俺も賛成だ。でもまずは、衣服を整えることだな。いくら戦士っていっても、そういう場に出るなら必要な見た目ってもんがある』


(そういうもん? わかった)


「じゃあ、俺も行きたい。将来戦う相手がきっとたくさんいるだろうし……賞金を少し使って、服を買ってくれない? ほら、お嬢様も普段着をもう少し持ってた方がいいよ」


「んー、それもそうですね。ふふ、セイヤの頭、たまにオイルついたままですし」


 笑うソフィアお嬢様の姿は、たぶんかわいらしいのだと思う。

 正直、恋ってなんだよみたいな生活だったから、よくわからないけれど。

 泣いたり、冷たい表情よりはこの方がいい。


 そんなことを思いながら、さっそくとばかりに買い物に。

 一応、飼い主と買われた側というのを外で守れるように集中して、護衛らしい位置を保ちながら。


 俺たちが住むガレージのある区画から、買い物ができる場所まではそう遠くはない。

 MMWに乗って……は禁止されてないけど、もったいないよね。


『見ろ。人がそこそこ増えてきてるぞ。この区画が埋まるのもそう遠くないかもな』


「俺より後輩の戦士がもうこんなに……」


「セイヤ、顔見知りが相手でも、戦えますか」


 歩きながらの雑談、その予定だったところに大事な問いかけが飛び込んできた。

 お嬢様からすると、そりゃあ気になるよね。


「戦うさ。所詮は他人。俺の、俺たちの人生を保証してくれるわけじゃないからね」


「……ありがとう、セイヤ」


 返答は正しかったのか、小さく聞こえた返事はどこか嬉しそうな気配を感じた。

 こちらも小さくうなずきつつ、歩く。


 そうしてたどり着いたショッピングモールで、買い物開始だ。


 すぐに目的の店は見つかったらしく、まずは俺からとなった。


「サイズはどうですか」


「問題ありません。動くのにも邪魔になりませんね。ありがとうございます」


 人の目があるということで、言葉遣いは丁寧に。

 あくまで買われた側というのをちゃんと示す。


 戦闘中の会話も知ってる人は知ってるだろうから、そういう場では無意味かもだけどね。


「整備と訓練、試合以外はその恰好でいるように」


「わかりました」


 さすがに、戦士の俺までスーツといった姿になる必要はないはず。

 というわけで、俺の会議での服装はシャツの上に合皮によるジャケットとズボンといった出で立ちだ。


「さて、私のほうは……」


『なんでも似合いそうだがな。ん、割引コーナーに案内してみろ』


「お嬢様、この辺とかどうでしょう」


 言われるままというのも気になるけど、節約は大事。

 まだまだ安心できる貯蓄量ではないのだから。


 俺の声に従って、向かった先にある服たち。

 そんな中の上下セット品を、お嬢様は手に取った。

 明るい色のシャツにスカート、長い丈のコートだ。


「これがどうしてここに……いえ、そういうこともあるでしょう。これにします」


 なぜか真剣な表情を一瞬したお嬢様は、そのまま俺の分と一緒に会計に向かった。

 残された俺は、ぽかーんとした表情だっただろう。


『ソフィアの、屋敷のあれこれを処分した時の中にあったやつさ。かつての私物ってわけだ』


 そんな俺の頭の中に響いた声。

 その内容を理解した時、もっと頑張ろうという気持ちが湧いてくるのだった。


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