ブレクム王国からの使者
ジェーンが15歳になってから幾日か経った頃、国中が活気であふれてきたのをジェーンは感じた。
たまに忍び込む王宮にいる人たちも、なんだかあわただしくしていた。
ジェーンはいまだに王宮へ忍び込むのを続けていた。
なぜなら、王宮の図書室のほうが多くの本があるからだ。
そこで、ジェーンはドラゴニア王国の成り立ちの本を読み、黒が忌み嫌われていることを知った。
ジェーンはそのことを知ったとき、すぐにジェーンドゥに私たちの黒色は嫌われるものなの?と尋ねた。
ジェーンドゥはそれを聞いてすぐさま怒り、そんなわけがない、黒は多くの魔法属性を持っており強さの象徴でもあると答えた。
ジェーンはジェーンドゥの言葉を聞いて、やっぱり人間は嫌いだと思った。
ジェーンが嫌われて、ひどい目にあったのも黒い髪と瞳を持っていたからで、でもそれは本当は強い証なんだと知ってからは、人間に対する恐怖に加えて嫌悪感も募らせるようになる。
それからジェーンは、書物のみに興味を持つようになった。
だから、今回の国の活気づいた雰囲気には興味がなかった。
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国が活気づいている。
それは、隣国のブレクム王国から第1王子がやってくるからだ。
国民たちも城の者たちも、皆今か今かと待っていた。
今回第1王子がやってくるのは、両国の国交を強めるためドラゴニア王国の第1王女との婚姻を結ぶためである。
そのため、第1王子は国を視察し、王女と会うためにドラゴニア王国へ訪れようとしていた。
ドラゴニア王国へ向かう船の甲板。
3人の男性が見えてきた島を見つめていた。
1人は鎧をまとい剣を佩いたオレンジ色の紙を持つ男性。
もう1人は執事で、残りの1人がブレイク王国の第1王子であるユーリ・ブレクムだ。
「なあ、キーン、ジュニアス、本当にあの島にドラゴンがいるのか?」
「ええ、言い伝えではそう言われております。」
「実際にあの山のほうを見ていたら、ドラゴンが飛んでいるのを見かけるという話です。」
「そうか、実際に見れるのか!それは楽しみだな!」
「ユーリ様。これは国交を強めるため、そして婚姻のための外交であるということをお忘れなきように。」
「わかっている。はぁ、婚姻相手がましな相手だといいがな。」
「事前調査では、第1王女シャルロッテ・ドラゴニア様は優しく聡明な方だとお聞きしております。」
「それが本当の情報ならな。」
「ユーリ様、まだあってもいない方にそのようなことを言わないでください。」
「わかった、わかった。しっかり相手を見極めるさ。」
「はぁ……。」
執事のジュニアスはため息をついた。
そばで聞いていたキーンも苦笑いをする。
ユーリはこの外交で、現在のドラゴニア王国の状況を見てくるように言われている。
今までの報告と実際に見るのでは違う部分が見当たる可能性があるからだ。
もし、ドラゴニア王国が腐敗していたら…その場合は国交を断つつもりでもあった。
そのころ、ドラゴニア王国の王宮では外交の使節団を迎え入れる準備が着々と進んでいた。
「ねえ、お母さま。私のこの格好変じゃないかしら?」
「ふふっ、心配しすぎよシャル。とっても素敵だわ。」
「本当?」
「ええ、嘘なんかつかないわ。」
「ユーリ様…。いったいどんな方かしら。」
「聡明で魔法の扱いもお上手で、剣技も素晴らしいと聞いているわ。」
「そうなのね!ああ、今からお会いするのが楽しみだわ。」
「お顔立ちも整っていらっしゃるそうよ。私もお会いできるのが楽しみだわ。」
2人が談笑していると、ドアがノックされた。
「どうぞ、お入りになって。」
「失礼いたします。王妃様、王女殿下、使節団の方が到着したそうです。」
「あら、もう?」
「はい。ですので、謁見の間にお越しくださいとの王様から言伝をいただいております。」
「わかりました。すぐ向かいます。」
王妃と王女は謁見の間に向かい、使節団を待った。
謁見の間には貴族や騎士たちが並び、使節団を迎え入れた。
「遠路はるばるよく来てくれた。」
「はっ、お招きいただきありがとうございます。ブレクム王国から参りました、ユーリ・ブレクムと申します。」
「私はマルタ・ドラゴニアだ。そして妻のヘレナ・ドラゴニアだ。」
「ヘレナ・ドラゴニアと申します。よろしくお願いいたしますわ。ユーリ様。」
「そして、息子のアルバートだ。」
「アルバートです。お会いできて光栄です。」
「その隣が、娘のシャルロッテだ。」
「シャルロッテと申します。お会いするのを楽しみにしておりました。」
それぞれのあいさつにユーリは頭を下げ答えた。
「今日は疲れているだろう。ゆっくり休むといい。テイマー、案内を頼む。」
「かしこまりました。」
「ありがとうございます。それでは失礼いたします。」
ユーリたちは一礼して執事のテイマーの案内のもと、謁見の間を退出した。
使節団が退出した謁見の間では、ユーリについて感想が飛び交う。
「しっかりとした方でしたな。」
「これは、シャルロッテ様との婚姻もよいものになるでしょう。」
「見目麗しい方でしたね。」
「静まれ!」
マルタ王がざわついていた貴族たちに一声浴びせる。
一瞬にして静かになった謁見の間に、再び王の声が響く。
「これから各地へ使節団が向かい、見て回る。各自、盛大にもてなすように。」
「「はっ」」
マルタ王の呼びかけに貴族たちは頭を下げた。
そこで、今回の謁見は終わりとなった。
その日の夜。
王宮では、盛大な歓迎会が開かれていた。
王侯貴族たちが集まり、盛大なパーティーとなっている。
ユーリたちは、ドラゴニアの王たちと会話をしていた。
「この度はお招きいただき誠にありがとうございます。」
「こちらこそ、来ていただいて嬉しく思う。」
「出されている食事も大変おいしいものばかりで、満足しております。」
「それはよかった。ぜひ、たくさん召し上がってくれ。」
「ユーリ様、お会いでき本当に嬉しいですわ。」
「シャルロッテ様。私こそお会いできてうれしく思います。それにしても、シャルロッテ様様は美しくあらせられますね。」
「そんな、ユーリ様こそとっても素敵です。」
「ははは、ありがとうございます。」
「さっそく明日から各地を回られると聞き及んでおります。もう少し安まれてからでもよろしかったのでは?」
「いえ、こちらにいられる期間は決まっておりますから。それまでにこの国の良いところをたくさん知りたいのです。」
「そうですか!この国はよい場所ばかりです。ぜひ、楽しんでくださいな!」
「はい、楽しみにしております。」
「ちなみに、あちらに見える山に、ドラゴンがいるとのことですが、本当ですか?」
「ええ、実際にドラゴンが飛んでいるのを遠目ですが皆見たことがあります。」
「それはすごい。私も実際に見てみたいものです。」
「この国に滞在している間に必ず1度は見れると思いますわ。」
「それはそれは。楽しみです。ところで、山の手前にあるあの建物は何ですか?」
ユーリは山の手前にある建物を指差し訪ねた。
王宮を案内されたとき、あの建物には一切近づかず説明もなかったためユーリは気になっていた。
「あれは、後宮です。」
「後宮でしたか。」
「はい。今は使われておらず、管理を任されているもの以外が出入りすることはありません。」
「そうだったのですね。本日王宮を案内された際、あの建物だけ何も説明がなかったものですから、気になってしまって。教えてくださりありがとうございます。」
「いえいえ、それでは、今後の予定について話し合いましょう。」
「ええ。」
そう言って、後宮についての話は切り上げられた。
パーティーは盛り上がり、幕を閉じた。