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ゲームオーバーを避けるには

拙い内容と文章ですが読んで頂けると嬉しいです。

 ウォリアを見送った後、漸く1人になれた私は改めて状況を整理することにした。


 ・私は死んだ。

 ・私はメスガキ勇者ヒイロになった。

 ・メスガキ勇者ヒイロは美少女ゲーム『メスガキパーティー』のキャラクター。

 ・仲間も『メスガキパーティー』のキャラクター達。

 ・つまりここは『メスガキパーティー』の世界。


 情報を整理するため紙に書き出してみた。

 頭の悪い内容が並んでいてげんなりする。

 しかし実際に経験している以上、これらが紛れもない事実であると認めざるを得ない。


 ゲームの中の世界で生きる。

 わからせおじさんだった頃の私ならばきっと今の状況に歓喜したに違いない。

 念願叶い、メスガキに出会えるのだから。


 しかし、今や私がメスガキだ。

 下手をすれば、私がメスガキとしてわからせられ、そのままゲームオーバーである。


 ゲームオーバー。

 この単語にここまで恐怖し、不安を感じる日が来ようとは思いもしなかった。改めて意識すると体が震える。

 それの意味するところが死なのか、はたまた、死以上の最悪なのか。

 何れにせよ、ろくなものではないだろう。


 これからの方針を決めよう。

 何よりも全力で避けるべきはゲームオーバーである。

 そのために2つの方法が考えられる。

 1つ目、スチル回収イベントで敗北する選択肢を選ばないこと。

 2つ目、そもそもイベント自体を発生させないように立ち回ること。


 1つ目は容易に行えるだろう。

 私はゲームの内容を知っているのだ。敢えて敗北しようと思わない限り、わざわざ誤った選択肢を選ぶことはない。唯一の不安要素は選択肢がどういう形で提示されるか分からないということだ。まさか目の前にゲームウインドウが表示されるなんてことはないだろうから、恐らく私達の取る行動により展開が変わるのだろう。


 2つ目については可能性の話になる。

 本来の『メスガキパーティー』のゲームであれば、この方法は取れなかっただろう。

 『メスガキパーティー』は俗に言う抜きゲーと呼ばれるタイプの美少女ゲームだ。

 この手のゲームには、ストーリーの完成度よりも、キャラクターやイベントシチュエーションの実用性が求められる。如何に使えるかが重要なのだ。故に、スチル回収イベントだけでゲームが構成されていることも珍しくない。

 御託にもれず『メスガキパーティー』もスチル回収イベントだけで構成されたゲームだ。


 だから宿屋で休息するという今のこの状況自体がゲームには存在しなかった。

 では、今の状況は?

 恐らくだが、本来のゲームには存在しない、イベントとイベントの間のインターバルなのだろう。うまくいけば、次に起きるイベントを避けて進めるかもしれない。


 方針は決まった。

 可能な限りイベントの発生を避ける。

 それが避けられないようであれば誤った選択肢を選ばないようにする。

 これでゲームオーバーを避けられるだろう。


 推測に推測を重ねた机上の空論の必勝法。

 それでも私はこの方法に縋るしか無い。

 下手を打てば命を失う。最悪、命以上のものも失うかもしれない。

 そんなデスゲームのような展開を、よりにもよって抜きゲーの世界で行うことになるなんて、色んな意味で泣けてくる。

 一体誰がこんな世界を作ったのだろうか。


 きっとそいつは残念な奴に違いない。



 XXX XXX XXX XXX XXX XXX XXX



「メイ、いる?」

 私はメイの部屋を訪ねた。


 メイは私達の旅程を計画する役を買って出ててくれている。

 私は次の目的地について彼女に相談しようと考えた。

 勿論、スチル回収イベントを避けるためである。


 ドアをノックするとすぐに返答があった。

「ヒイロさんですか? ちょうど良かった。今、鍵を開けますね」

 そうか。鍵を掛けておけば、さっきのような辱めは受けなかったのか。

 40歳の中年男としてその辺りの危機感が薄かったな。いや、これは私がズボラなだけか。


 ドアが開く。

 そこにはショーツを履いただけで上半身裸のメイがいた。

 彼女は左腕で自らの胸を隠し、右手で扉を開け、上目遣いで私を見ている。


「……」

「何してるんですか。早く入ってください!」

 絶句する私の手をメイは掴み、そのまま部屋へ引っ張り込む。

「閉めて、ドア閉めてください!」

 急かされ、訳が分からないまま、言われるままにドアを閉めた。


「ちょうどいいところに来てくれました」


 メイはパーティーの中で1番年下の11歳で、さらに1番背が低い。

 一方で、パーティーの中で胸が1番大きい。いわゆる、ロリ巨乳というやつだ。

 因みに、メイ以外のメンバーは私を含めて全員ツルペタなのだが、敢えて大きさに差を着けるならば、プリスが1番小さいというのがゲーム内設定だったはずだ。特にストーリーに絡まない設定だが、最年長が最も貧乳で、最年少が巨乳というのは美少女ゲームらしい業の深い話である。


「すいませんが、これを巻くのをちょっと手伝ってもらえませんか?」

「これは?」

「サラシです。先程、体を拭きまして、替えの新しいサラシを巻こうとしたのですが……。この通り、新しいものは少々巻き難いのですよ」

 なるほど、それで上裸だったのか。

 サラシと言って見せられたそれは、私の知る物よりも固い布で出来ているようだった。固いサラシは巻癖が付いていて確かに1人では巻き難そうだった。

「いつも1人で巻いてるの?」

「はい。まぁ、慣れたものです」

 私はメイがサラシを巻くのを手伝う。

「サラシを巻いておかないと激しい動きでおっぱいが揺れて痛いんですよ。おっぱいなんて大きくても良いことなんて何もないです」

「ふーん」

 メイが怪訝な顔で私の方を見てくる。

「……」

「どうかした?」

「ファイさんの言う通りです。今日のヒイロさんは変です」

 これを言われるの今日で何度目だろうか。

 しかし、誰もヒイロの中身がわからせおじさんになっているとは気付かない。

 本人である私だって未だ信じられないのだから、他人なら想像すらできないだろう。

「そう?」

「はい。いつもなら『生意気な、この駄乳め~!』とか言って私のおっぱいを揉んでくるのに」

「……じゃあ、折角だから」

「いえ、やって欲しいとかじゃないですから! 是非やめてください!」

 私が両手をワキワキさせながら近づくと、メイは怯えながら両手で胸を覆い隠す。

「やっぱりいつものヒイロさんです」

 そう思ってくれたら僥倖だ。


「それでヒイロさんは何しに来たんですか?」

 メイはいつもの格好に着替え終わっていた。

 魔法使いが着るようなローブ姿なのだが、ヘソと脇丸出しのデザインが扇情的な印象を与えている。先程のサラシの効果により胸は平坦になっていた。

 メイは長い緑髪を肩の当たりまで垂らしている。いつもは大きなトンガリ帽子を被っているのでこの姿は新鮮だった。

「旅程について相談があってね」

「この町で休息を取る話ですか? それであれば、私も問題ないと思いますよ」

「そうじゃないの。次の目的地についてなんだけど」

「はぁ。じゃあ、地図を出しますね」

 メイがカバンから地図を取り出し、テーブルに広げてくれた。

「次の目的地は……」

 私は次の目的地を把握していない。地図を曖昧に指差してメイの言葉を待った。

「ええ、アカネ村です。アネロ港への最短かつ比較的安全な旅程がこうですから、次の補給地点はここ、アカネ村が適当だと思います」

 メイは地図を指でなぞりながら説明してくれた。

 最後にドヤ顔する。かわいい。

 ……ごほん。

 なるほど。

 つまり、次はわからせゴブリンのイベントと言う訳か。

 なんとか違うルートを選択してアカネ村に近づかないようにできないだろうか。


「こっちのルートを通るのはどう?」

 とりあえずアネロ港までのルートを適当になぞってみた。

「うーん。遠回りな上にその街道は最近巡回兵が不足しているせいでモンスターが多く出るそうですよ。でも、どうしてそのルートなんですか?」

 メイは私の適当な案に対しても的確な意見を返してくれた。彼女は本当に優秀だ。パーティー最年少と思えない。

「えっと~、モンスターを倒して、レベル上げ……とか?」

「モンスター退治ですか……。レベルって何です?」

「うん、忘れて。何でもないから、あはは」

 この世界にはレベルの概念はないらしい。恐らくステータスもないだろう。

 だって、抜きゲーの世界だからね。

 ふと見ると、メイは困ったような喜んでいるような顔をしていた。

「やっぱり勇者としてモンスターで困っている人達を放っておけないんですね」

「ん? いや~、まぁ、そうね」

 私はバツが悪くて適当に言葉を濁す。

 そんな私の手をメイが両手で強く握った。


「ヒイロさんの気持ちは分かります。私達は旅を急ぎ、一刻も早く魔王を討伐しましょう!」

読んでくださりありがとうございました。

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1日1話以上投稿を目指していましたが4話目にして断念してしまいましたorz

3日坊主+1です。

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