これは重要な確認事項なんです!
拙い内容と文章ですが、読んで頂けると嬉しいです。
気が付くと、私はベッドに寝かされていた。これまでの流れから今度はどんな目覚め方をするのかとひやひやしていたので少し安心する。
ベッドの脇で動く人の気配を感じた。
「目が覚めた?」
そこにはプリスがいた。メガネを掛けている。
ベッドの側で椅子に座り、本を読んでいたようだ。
「何? どうしたの、びっくりした顔して」
「ずっと側にいてくれたのか?」
「ええ。……あなた、ウォリアみたいな、そんな男っぽい口調だったかしら?」
「そ、そんなことない、よ?」
「あんまりウォリアの影響を受けない方がいいわよ。あの子の強さは本物だから勇者として気になるのは仕方ないとしてもね。それは口調を真似たところでどうにかなるものではないのだから」
「う、うん」
「まぁいいわ。ねぇ、あなた路地裏で突然倒れたのよ。覚えてる?」
プリスが真剣な顔で私を見る。
それに合わせて真剣な顔を作り頷く。
「この町に来るまで強行軍だったから疲れが出たのかもしれないわね」
いや、色々あり過ぎて、脳の容量がオーバーフローしただけだ。
「それでね。少し予定を変更して、この町で少し休息を取るのはどうかしら? ここまでの皆の頑張りのおかげで2日間くらいの余裕は十分あると思うのよ」
「いいと思う、よ」
「そう。良かったわ。それじゃあ、皆には私の方から伝えておくから。あなたはゆっくりと休んでいて」
プリスはパーティーにおけるまとめ役だった。1番の年長者ということもあり、雑事等の調整も行ってくれているようだ。
確か、彼女には教会に認定された聖女という設定もあったはずだ。
「?」
静かに微笑む姿は正に聖女である。神々しささえ感じる程だ。
亜麻色の長い髪を後ろで編み込んだ複雑な髪型をしている。
普段は掛けていないメガネだが、彼女の清楚な雰囲気をより高めている。
本当に……着ている服がネグリジェなことを除けば完璧な美少女である。
そして、彼女はメスガキだ。
聖女の笑顔ではなく、悪女のドS顔で相手を精神的に追い詰めるのが得意だったはずだ。
さらに彼女は性的な知識を持っているため、そっち方面でも煽ってきたはずだ。
「じっと私のことを見つめて、何? ファイの言う通り、やっぱり様子がおかしいわね」
様子がおかしいのは当然だ。
外身はヒイロだが、中身はわからせおじさん(40)なのだから。
「あなた、まさか……」
えっ、なんだ? まずい、感づかれたか?
聖女の奇跡的な力で察したのか!
「生理が始まったんじゃない?」
「……へ?」
どうやら感づかれたわけではないらしい。
「ちょっと、見せてみなさい」
プリスにスカートを捲られそうになり、私はそれを必死に阻止して否定する。
「ち、違う!」
「なんだ、違うの? 生理は知ってるわよね?」
無言で何度も頷く。
「じゃあ、本当に生理が始まったなら私に言いなさいね。生理が来ているのは私とメイだけだから分からないことがあったら相談しなさい」
何だかんだ言って、彼女は私を本当に心配してくれているようだ。
「ありがとう、プリス」
「おほん。一応、パーティーの年長者として、ね」
プリスは少し照れたような顔をした。
「パーティーのリーダーはあなただけど、たまにはお姉さんを頼りなさい」
年上と言っても2歳だけのはずだが、確かに彼女は頼りになる仲間だった。
XXX XXX XXX XXX XXX XXX XXX
プリスが部屋を出ていき、私は1人になることができた。
色々と確認したいこと、考えたいことがあるのでこの状況はありがたかった。
私は姿見の前に立つ。鏡の中には若良瀬太郎ではなく、勇者ヒイロの姿があった。
手を上げる、しゃがみ込む、中指を立てる。私の意思で鏡の中のヒイロが動く。
笑ってみる。背筋がぞくぞくとした。
ああ、なんて素晴らしい、惚れ惚れするようなメスガキ顔だ。
これは是非ともわからせたい。
しかし何たることか。わからせたい対象がよりにもよって自分とは。
ああ、本当に私はメスガキ勇者になってしまったようだ。
いつまでも悲観していても仕方がない。確認作業を続けよう。
そう、これはあくまで確認だ。
私は着ているエプロンドレスを脱いだ。
ヒイロはブラジャーをしておらず、代わりに薄い肌着を着ていた。胸はほんの少し膨らんでいる程度だ。私に子どもはいなかったので、この程度ではブラジャーをしないのが普通なのかどうかは分からない。
いや、うっすらと記憶がある。これは……ヒイロの記憶だ。母親とブラジャーについて口論している。結論、あんたにはまだ必要ない、だそうだ。
全ての下着を脱ぎ終えて、再び姿見の前に立つ。
おおおお!
自分の裸体とは言え、美術的な美しさを感じる。女性としての肉感がまだない、幼さが残る裸体だからだろうか。
ありがたや、ありがたや。
しかし、本当に失くなってしまったんだな、私のわからせ棒。結局、実運用しないままだったな。
さて……と。
これも確認しておかないと、だ。
これは重要な確認事項だ。
決して、決してやましい気持ちはない。
何せこれは私の体なのだから。
…………よしっ!
ごくりと生唾を飲み込む。微かに震える指先をゆっくりと降ろしていく。
「……んっ!」
「オマエ、何やってんだ?」
「ぴゃああああああっ!」
急に誰だ! 誰か部屋に入ってきたか? ノックの音はしたか?
驚いて、わからせおじさん(40)なのにものすごい可愛い声を出してしまったじゃないか!
「ウォ、ウォリア?」
「おう」
「い、いつかそこに?」
「オマエが鏡に向かって祈り始めたところからだよ」
ほとんど全部見られてるじゃないかぁ!
こ、これは誤魔化さなければ。
「あ、あのね、ウォリア。今のはね……」
ウォリアがため息を吐いた。
「ふぅ、全く。仕方ねえな。アタシが代わりにやってやるよ」
へ?
何をヤルって?
ずかずかとウォリアが近づいてくる。
「ウォリア?」
「恥ずかしいからって暴れんなよ」
目の前にウォリアの顔がある。
男っぽい彼女だが、その顔つきは美人の一言に尽きる。
赤いショートヘアーと強い意志の宿る赤い瞳からは肉食獣のような美しさと可憐さを感じる。
彼女はその可憐な見た目に反して無類の強さを誇る。
その強さにより大人の男の戦士を物ともせず蹂躙する。そんなイベントが確かあったはずだ。
因みに彼女に性的知識はあまりないという設定だったはずだが。
え、何、私は今から何をされるんだ?
外身はヒイロ、中身はわからせおじさん(40)な私がメスガキ戦士にナニされるの?
「や、優しくして……」
「は? 何言ってんだ。いいからここに座れ」
ウォリアは椅子に布を掛け、私にそこへ座るよう促した。
「体調が悪いんだろ。アタシが代わりに体を拭いてやるって言ってんだ」
「ふぇ? あ、そういう……」
「ファイの言う通りだな。全然いつものオマエらしくない」
ウォリアは私の体を濡れたタオルで拭いてくれた。
他人に体を拭いてもらう行為は確かに少し恥ずかしかった。
「いつもの私ってどんな感じ……なの、よ?」
「ああ、そりゃあ、強気に強引に突っ走るアクセルボアみたいなやつだよ」
アクセルボアって何だ? 名前の雰囲気からして猪型のモンスターか?
人を例えるのにモンスターの名前を出すのがウォリアの癖なのだろうか。
「あと、偉そうな奴らの鼻っ柱を折るのが大好きだよな、オマエ。趣味なのか? いい顔してるぜ。まるでクルエルバードが獲物を食べるときみたいだぜ」
「クルエルバード?」
「獲物の手足を喰いちぎって散々弄んだ後に息絶える寸前でようやく捕食する悪趣味な大型猛禽だよ」
「ぶっ!」
最悪じゃないか。
だけど、そうだった。勇者ヒイロは生粋のメスガキだった。
「まぁ、勇者としては頼りになるのは間違いないけどな」
「そ、そう?」
今の話のどこが勇者っぽいのか。
「ああ、アタシが強いと認めているのはオマエとファイだけだぜ」
そう言って、ウォリアは笑った。
ああ、彼女も私を元気付けようとしてくれているのか。
「他の3人は?」
「アイツらは……確かにアイツらも強いんだけどさぁ。アタシの言う強さはアイツらの強さとは違うというか、なんというか」
ウォリアはうまく説明できないようだが、私には彼女の言いたいことがなんとなく分かった。
彼女は、他の3人の仲間が弱い、頼りない、と思っているわけではない。
きっと、強さとはパワーとか言いたいのだろう。なんという脳筋少女。
「大丈夫。言いたいこと分かるから。その……ありがとう」
「おう!」
ウォリアは屈託のない笑顔で私の背中を叩いた。
……素肌に張り手は痛いから、やめて。
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