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攫われた女性達の捜索

拙作ですが読んで頂けると嬉しいです。



本話には残酷な描写表現がありますのでご注意ください。

苦手な方はその部分を読み飛ばして頂けると幸いです。

「惨憺たる光景ね」

 私達は待機してもらっていた村人ともに砦に戻ってきた。

 プリスの言葉は的を得ており、あれだけ大勢いたゴブリン達は全て動かぬ肉塊となっていた。

 城壁にもたれ掛かっている一際大きな肉塊はゴブリン達のボスのグレーターゴブリンだろう。先程まで怒気に染まっていた顔は表情が分からない程真っ黒に焦げていた。

 この状況に村人の何人かは吐いた。

 普通の生活を営んでいる彼らにこの状況は酷過ぎたかもしれない。

 元一般人である私が平気な顔をしていられるのは勇者ヒイロの力に拠るものなのだろう。

 そしてうちのメンバーはと言えばだ。

「サウナ結界は想像以上の破壊力ですね。建造物に大きな被害を与えず生物に対してのみこれほどのまで殲滅力を発揮するとは。手間と時間が掛かりすぎるので実用性はイマイチですが」

「う〜〜、まだ耳が痛いよ〜。音が変に聞こえて頭がぐるぐるするよ〜」

「まるで焼き肉パーティーの会場みたいですね〜」

 この状況に一切狼狽えることはなくいつも通りのマイペースだった。

 とんだサイコパス集団だな。特にジェスがひどい。

「おい、オマエら。遊んでないで行くぞ」

 ウォリアはすでに砦の入口にいた。

「ゴブリンの残党がいるかもしれない。ここからは屋内戦になるから奴らの不意打ちに細心の注意を払う必要がある。奴らは自分たちで調合した妙な毒を使う場合があるから全員解毒薬の準備をしておいた方がいい」

 ウォリアは空を指差す。

「それに日没までもう余り時間がない。アタシらの任務はゴブリン退治じゃない。攫われた村人達の救出だからな」



 砦の中は薄暗かった。

 しかしそれ以上に気になったのは臭いだ。獣臭に近いが、これがゴブリンの臭いなのだろうか。鼻が曲がりそうな据えた臭いが建物中に満ちている。

 これはあまり長居をしたくない。

 砦は地上部2階と地下部で構成されていた。

 地上部の規模はそれほど広くない様子だった。

 しかし、地下部に関しては規模が未知数だ。

 地下へと続く階段の先は真っ暗で先が一切見通せない。

 プリスは奇跡で、メイは魔法でそれぞれ明かりを作る。それを使って地下部の様子を窺う。

「これは想像以上に捜索が厄介かもしれないわね」

「ああ、森の中の砦だからな。地上よりも地下に作られた空間の方が広い可能性が高いな」

 日没までもう時間の余裕はほとんどない。ここからは本当に時間との勝負になるというのに捜索する範囲が想定以上に広いとなると問題だ。

 今すぐに取れる対策手段は1つしかない。

「もうゴブリン達はいないかな?」

「残党は多少いるかもしれないが驚異にはならないだろうさ」

 ならリスクは低いし、この状況なら止むを得ない。

「時間がない。手分けして攫われた人達を捜索しよう」

 私の提案に全員一致で頷いた。


 私とウォリア、メイとファイ、プリスとジェスはそれぞれ村人達を伴って砦内を捜索することになった。攫われた人達を見つけ次第運び出すためだ。

 私とウォリアは地下部の南側から探索を始めた。

 地下とは言え空気の換気は十分にできているようだった。今や風化してゴブリンの巣と成り果てているが、かつてはここで人が生活をしていたのだから当然と言えば当然だ。

 メイは私達全員に魔法の光を作ってくれた。宙に浮く光の玉だ。それは私達の顔の横辺りを浮遊していて、歩くと一緒に着いてくる。触ることもできて、触感は全く無いが、押し出すように触ればふよふよと前方に進み、しばらくすると再びふよふよと自動で戻ってくる。

 ちょっとかわいい。

 この光の玉のおかげで捜索はかなり捗った。 

 そして、やはり残党のゴブリンはいた。

 しかしそれは精々1,2匹が物陰に隠れて襲ってくるといった程度で村人達でも十分に対処することができた。


 地下捜索し始めて30分くらいが経った。

 私達は地下を虱潰しに捜索していた。効率が悪いようにも思うが、それは致し方ないことだった。

 何か痕跡があればそれを辿る方法が最も効率的だ。しかしゴブリンの巣は荒れ放題で痕跡を探すことは不可能だった。

 加えてここが砦であるということが事態を悪化させていた。敵の侵入を想定したためか、地下の通路は必要以上に入り組んでいるのだ。

 通路を進み、分かれ道に差し掛かれば1つの道を選んで進む。その通路が行き止まれば、分かれ道まで戻り、別の通路を進むという、正に虱潰しだった。


 今進んでいるこの通路はまだ続くのだろうか。

 ああ、また、分かれ道だ。来た通路にマーキングして次はどの通路を進むか決めなれけば。

「ウォリア、どうする? どの通路を……」

 ウォリアがジェスチャーで静かにと伝えてくる。

 私は息を潜めて耳をすます。

 

 何か音がする。いや、音と言うよりも、これは……声だ!


「ウォリア!」

「ああ、急ぐぞ」


 私達は通路の1つを走った。すでにかなり疲弊しているようだった村人達も私達の様子に気づいて走り着いてくる。

 通路の先、真正面に扉のない大きな部屋があった。

 部屋が近づいてくるとこれまでとは明らかに違う雰囲気を感じた。

 それは臭いだった。この砦は至る所でゴブリン臭がしている。そのせいで鼻はもう麻痺してしまい特に何も感じなくなっていた。

 それがその部屋に近づくと再び鼻が曲がりそうな程の臭いを感じたのだ。ゴブリン臭を何倍も濃くしてさらに血と糞尿の臭いを混ぜ合わせたものがその部屋から塗れてきていた。

 本能的に部屋に踏み込むことが躊躇われた。

 私は光の玉だけを部屋の中に進める。

 光に照らし出された部屋の中の光景に私は思わず口元を押さえた。


 そこには攫われた村の女性達の姿があった。

 全員ほぼ裸の状態で地面に倒れて呻いている。

 私達が聞いた声は攫われた女性たちの呻き声だった。

 女性達は皆下腹部が妊娠しているように大きく膨れ上がっていた。

 それは、つまり……そういうことだ。

 怪我をしているのか血を出ている女性もかなりの数いた。中には腕があらぬ方向に曲がっている女性もいた。

 彼女達が苦しがり呻き声を上げているのは怪我の痛みからだろうか、それとも……。


 部屋の中から突然1匹のゴブリンが飛び出してきた。

 私はそれを裏拳で打ち払う。壁にめり込む程の勢いで吹っ飛んだゴブリンは首の骨が折れて一瞬で絶命した。私の手は震えていた。


 部屋に足を踏み入れる。

 臭いはもはや感じられなくなっていた。

 目の前に仰向けで痙攣している女性がいる。私は彼女の側に膝を付いて、その顔を覗き込む。彼女は私に気づいたらしい。虚ろだったその目に一瞬光りが戻る。

 「助けに来ました」と言おうとしたとき、彼女の口が先に動いた。彼女は顎を外されていたようでまともに言葉にはならなかった。

「ほ、おひ、へ……」


 私は立ち上がり周囲を見回す。

 全員彼女と同じような状態なのだろうか。


 私は元一般人だが、この世界に段々と順応できていると感じていた。

 対人戦闘で相手の腕を斬り飛ばした。

 大量のゴブリン達を殺した。

 血の匂いも、剣で肉を斬る感触も、生き物が焼け焦げる臭いと光景も平気だった。


 だけど、これは……無理だ。

 涙が出ることを止められない。

 私にはこの状況が耐えられない。


「外に出てるか?」

 背後からウォリアが声を掛けてくれた。

 私は無言で頷いて、その場を逃げるように離れた。

読んでくださりありがとうございました。

面白いと思って頂けましたら評価とブックマークをよろしくお願い致します。



残酷な表現部分は多少趣味な部分もありますが物語を彩る上で重要な要素だと考えています。

なので今後もそういうシーンは出てくると思いますがご容赦ください。

全然残酷じゃないぞと思われた方、それは私の表現不足が原因なので生暖かい目で見流してください。精進します。

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