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サウナ結界

拙作ですが読んで頂けると嬉しいです。




 私は思いついた作戦をメイとプリスに相談した。

 どんなに有用な作戦だったとしても実現できないのでは話にならない。

「私の方は可能です。なるほど、確かにヒイロさんの言う方法なら建物に大きな被害を与えずにゴブリン達へ継続的な攻撃を仕掛けることができますね。ですが、この作戦の要はプリスの奇跡ですね。プリス、どうですか、いけそうですか?」

 皆の視線がプリスへ集まる。

 彼女は腕を組んで考え込んでいた。

「確かにそういう奇跡はあるわ。でも、これまでその奇跡をそういう風に使ったことがないから分からないというのが正直な話なのよ。うーん、その奇跡の効果を考えると大丈夫そうな気はするのだけれど」

 プリスは確信が持てないらしい。

 メイの言う通り、この作戦の要はプリスの奇跡だ。それに不安要素があるのではこの作戦は採用しないほうが無難だ。

「試してみれば?」

 ファイが事無しげに言う。

「規模の小さいやつをここに作ってみればいいんじゃない?」

 一同、なるほど、と手を打つ。


 結論を言えば、私の作戦は実行可能だった。

 規模が大きくなったときに不測の事態が起こる可能性はあるが、リスク以上にリターンが多い作戦だ。試してみる価値はある。

「じゃあ、戦闘の開幕でこの作戦を実行するということでいい? その後は結局乱戦になるだろうけれど、これでかなりの数を減らせるんじゃないかな」

「皆、絶対に展開した結界の中には入らないでね。絶対だからね」

「ああ、分かってるよ。心配すんな、プリス」



 ゴブリン砦への突入作戦の開始だ。

 村人達には砦から離れたこの場所で待機してもらう。

 いくら武装しているとは言え、普段から戦い慣れていない彼らにはゴブリンとの戦闘は荷が重いとのウォリアの判断だった。武器はあくまで彼らが自身の身を守るために持たせていたようだ。

 彼らの出番は攫われた人達を救出した後だ。救出した彼女達を早急に村まで運ぶ必要がある。


 私達は村人と別れ砦の近くまでやってきた。

「さて、奴らをどうやって荒れ地の広場までおびき出すか」

「僕がやるよ」

 ファイが手を上げた。彼女はいつのまにか弓矢を持っていた。

「それ、どうしたんだ?」

「狩人のおじさんが予備の弓を持ってたからこのために借りてきたんだ」

 言うや彼女は矢をつがえ、狙いもそこそこに矢を放つ。

 放たれた矢は一直線に城壁の上にいたゴブリンの元へ飛んでいき、頭に矢を受けたゴブリンは城壁から落下した。

「よしっ!」

「相変わらずめちゃくちゃな奴だな。本職でもないのにこの距離を一発でよく当てるよ」

「じゃあ、この調子で他のゴブリンもやってくね」

 まるで自動照準でも搭載しているかのように、ファイはゴブリンを次々と射抜いていく。

 それでも弓矢で倒せたゴブリンは10体程度だ。

 外に出ていたゴブリンのほとんどはこれで倒せたが、異変に気が付いたらしいゴブリンが砦の中に仲間を呼びに行くのが見えた。

 本番はここからだ。


 砦からゴブリンの集団が出てくる。

 その数は100匹を優に超えていた。

 私はメイの方を見た。彼女はばっちりですと頷く。

「フレイムテンペスト!」

 メイの唱えた魔法の言葉により、離れた位置に何本もの炎の柱が発生する。

 ゴブリンの何匹かはそれに巻き込まれ燃え上がる。

 しかし、仲間の惨状を目の当たりにして一瞬怯むものの、ゴブリン達は進行を止めない。

「続けて!」

「フレイムテンペスト!」

 爆発系の魔法と違い、衝撃で敵を吹き飛ばすことができない炎系の魔法は足止め効果が薄いようだ。しかし、爆発系の魔法では砦を崩してしまう恐れがあるため、攫われた人達を助け出すまでは迂闊に使えない。

 だが、この場では炎系の魔法がベストだ。

「プリス! お願い」

 私の合図でプリスが奇跡を使用する。

「風の王よ。北風の加護を彼らにお与えください」

 以前に使用した弓矢避けの結界の亜種だ。この結界は炎の熱気を防ぐ効果がある。

 原理は不明だが空気の流れを遮断して熱気を結界内に通さないようにしているものと推測する。

 プリスはそれを私達の周りではなく、荒れ地の広場に展開したのだ。

 突然の結界にゴブリン達は戸惑ったようで足を止めて辺りを見回している。

 しかし、実害はないと判断した彼らは再び進行する。


 ゴブリンとの接敵までの距離はもうあまりない。

 私達の中で遠距離攻撃ができるのはメイの魔法とファイの弓矢だけだ。

 メイにはずっと炎系の魔法での攻撃をお願いしている。

 そろそろ仕掛けの効果は現れるだろうか。


 ゴブリン達が進行してくる荒れ地の広場には彼らの生活感溢れる残骸が大量に放置されている。それは彼らのズボラさの証であり、食べ残した動物の死骸や薪として持ちこんだ枯れ木などだ。

 つまりこの広場には可燃物が大量に放置されているのだ。

 メイの炎魔法によりゴブリン達とともにそれらも炎上している。

 そしてプリスの結界により拡散できない熱気は彼らの周りの気温をガンガンにあげているだろう。

 きっと結界の内部は地獄のような暑さのサウナになっているに違いない。

 これが私の立てた作戦である。

 馬鹿みたいな作戦ではあったが、思いの外効果はあったようで、ゴブリン達の動きが目に見えて鈍くなった。中には暑さで倒れるゴブリンまでいた。


 砦を出たゴブリン達のほとんどは真っ直ぐに私達の方へ進行してくる。

 そうすると自然に荒れ地の広場を横断することになる。

 メイとプリスによるサウナ結界(注:命名はファイ)は広場の中心から敷地の半分以上を覆うように形成されているので、彼らのほとんどはこの罠にかかってしまうのだ。


 ようやくサウナ結界を抜けた1匹のゴブリンがいた。

 そいつは汗だくになりながらふらふらとこちらへ歩いてきた。

「えい」

 その頭に剣の一撃を叩き込んで絶命させる。

 少し可愛そうではある。彼らもただ自らの本能で生きているだけなのだから。

 しかし、情けを掛けられるほどの余裕は私にもないのだ。


「皆、そろそろ結界を抜ける奴らや、結界に気付いて避けてくる奴も出てくるだろうから気を付けて! 近接攻撃組は本格戦闘の準備を、メイとプリスはそのまま結界の維持をお願い!」

 私は仲間達に檄を飛ばす。

「さぁ、ここからが本番だよ!」

『おお〜!』

読んでくださりありがとうございました。

面白いと思って頂けましたら評価とブックマークをよろしくお願いします。


本日中にもう1話投稿を予定しています。

よろしければお時間のあるときに読んでください。


また、唐突に別物語のネタが思い付き、

自分の中でネタが新鮮な内に消化してしまいたいと思ったので、

お休みと深夜のテンションで書き殴った1話を同時に投稿しています。


こちらは数話の短い話になる予定ですので本作と合わせて読んで頂ければ幸いです。

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