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アカネ村の異常

拙作ですが読んで頂けると嬉しいです。



 盗賊の襲撃から2日後。

 ルーセル街道から外れ半日程北上すると周囲は森深い様相を呈し始める。

 若干の遅れはあったが、私達は無事アカネ村周辺へと到達した。


 馬車の御者台に座るウォリアは流れていく景色を怪訝そうに窺っていた。

「妙だな」

「どうかしたの?」

 馬の手綱を握るファイが訊ねる。

「村の様子が変だ」

「村って、まだ畑とかしかないけど」

「もうこの辺りは村の敷地だよ」

「え、いつ門を通った?」

「オマエってやっぱり都会っ子だよな。辺境になるとさ、敷地全体を塀や柵で覆うことができる村の方が少ないんだよ。そういう村は居住区を中央に配置して周囲に畑や牧場を作るんだ」

「でもそれじゃあ、モンスターに作物や家畜を食べられちゃうんじゃない?」

「それが目的だよ。こういう村にはモンスターを対処できる戦力がないんだ。だから敢えてモンスター達の餌になるものを外周に配置して人間様のいる所まで来させないようにするのさ」

「へー。ウォリアって見かけによらず物知りだね」

「オマエさ、それって褒めてるのか?」

「? うん」


 私は2人のやり取りを馬車の中で聞いていた。

 確かにウォリアは意外に博識だ。

 私も彼女のことを最初は脳筋だと思っていたので認識を改めないといけない。


「それで? 村の様子が変? 僕には普通に見えるけど」

「畑で仕事をしている奴が少な過ぎると思わないか? こんだけ畑があるんだぜ。それなのに畑仕事している奴をさっきから数人しか見てないんだ。しかもその中に若い女の人が全くいなかったってことに嫌な予感がする」

「うーん。女の人は力がないから畑仕事に出てないとか?」

「知らないのか? 田舎の女は逞しくて強いだぜ」


 私はウォリアがしきりに気にしていること、つまり、今この村で起きていることを知っている。それはゲームの知識によるもので、この村でついに『メスガキパーティー』のスチル回収イベントが起きるのだ。


「まぁ、アタシの気の所為だったらいいんだけどな」

 ウォリアは遠い目をして呟く。

 馬車はアカネ村の居住区へと続く道を進む。



 XXX XXX XXX XXX XXX XXX XXX



 馬車の行く道の周囲に家が増えてきた。

 それに合わせてこちらを窺うように見る人の数も増えてくる。

 どうやらアカネ村の居住区に入ったようだ。


 私はファイとともに御者台に座っていた。

 ウォリアは馬車の中で横になっている。


「おい、あんたらは行商人か?」

 1人の初老男性が私達に話し掛けてきた。

 ファイが手綱を引き、馬車を止める。

「悪いことは言わない。さっさとこの村を出た方が良い」

 男性の言葉と表情に悪意は感じられなかった。本当に私達を心配してくれているようだった。

 私とファイは顔を見合わせる。

「私達は……」

 何と答えるべきか一瞬迷う。

 正直に「私達は勇者パーティーで魔王を討伐するために旅をしている」と答えることは憚れた。余計なトラブルを生むだけだと思えたのだ。


「アタシらは冒険者だよ」

 ウォリアが馬車の中から顔を出して答える。

 なるほど、それは良い答え方だ。

 私達は実際に旅をしているのだから別に嘘を付いている訳でもない。


 ウォリアの言葉を聞いた男性はそれまでの暗い顔が一転して明るくなった。

「冒険者! もしかして村長が呼んだ冒険者はあんたらか!」

「ねぇ、何のことだろう?」

 男性の突然の変化に驚いたファイが私の耳元で囁く。

「こ、こっちだ! 付いてきてくれ!」

 男性は私達を先導するように手を振りながら走り出した。

 私達は再び顔を見合わせる。

「とりあえず行ってみようぜ」

 ひとまずウォリアの提案に乗り、男性の後を追って馬車を進めた。



 先程の男性(オラルドさんと言うらしい)に連れられてやってきたのはアカネ村の村長の家だった。

 出迎えてくれた男性に私達は冒険者という体で自己紹介した。

「村長のコドルです」

 コドルさんは村長と言うには非常に若い人だった。

 私達も勇者パーティーと言うにはかなり若い集団なので人のことは言えないかもしれないが。

 すると。

「若い村長だとお思いでしょう?」

 まるで私の心を読んだかのような返しをされた。私は顔に感情が出やすいのか?

「実際若輩ものなんですよ。前の村長が死んだ私の父だったので、後を継いだ形だけの村長ですよ」

 コドルさんが自嘲する。

「皆さんも、その失礼でなければ良いのですが、冒険者というにはお若いようですね」

 これは疑っているというよりも、何か事情があると察しているような口ぶりだ。

「え、ええ。若く見られて女性冥利に尽きるといいますか、ホホホ」

 プリスが変なキャラを作ってまで誤魔化そうとしてくれた。

 しかし、それが逆効果となり場に変な空気が流れる。

「ちょっと、これどういう状況なの? 私さっきまで馬車の中で寝てたから全然把握してないんだけど」

「さぁ、僕にもさっぱり」

 プリスとファイはコドルさんに聞こえないよう小声で話をしている。

 場の空気を戻すようにウォリアが口を開く。

「村長さん。今、この村で起こっていることについて教えてくれないか?」

 それは彼女がこの村で何かが起きていることを確信している強い口調だった。

 コドルさんが深い溜息を吐いた。


「今、この村はゴブリンの集団に襲われているんです」

読んでくださりありがとうございました。

面白いと思って頂けましたら評価とブックマークをよろしくお願いします。



この話からゴブリン編の始まりです。

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