表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/140

第8話 幼馴染とらんらんに行く件について

学生の間で有名な丼もの屋「らんらん」に連れ立って行くお話です。

 4月24日の水曜日。大学に入ってもうすぐ1か月が経とうとしている。ミユの問題はあるものの、大学生活にも慣れてきたところだ。そんなある日のByte編集部室にて。


「夕飯はらんらんに行くぞ」


 唐突に、俊さんが呼びかけた。


「らんらんって、丼ものの店でしたっけ」


 確か、入学のときに読んだByteに書いてあった気がする。


「カツ丼とか親子丼とかそういうんじゃないんだな。あえていうなら、らんらんはらんらんだ」


 わけのわからない宗教染みたことを俊さんがのたまう。何を言っているのか、この人は。


「それ、何か面白そうですね!」


 見ろ。あまりにわけのわからないことを言うからミユが……目を輝かせている?


「らんらんの深淵はな。実際に行ってみないとわからないぞ?」


 ずいっと俺たちに顔を近づけて、そんなことをつぶやく俊さん。ナニコレ。


「私は行きたいです!」

「じゃあ、俺も」


 俊さんは悪い人じゃないと思うが、ミユ一人でついていかせるのは心配だ。それにしても、Byteに入ってからのミユはずいぶん積極的だ。


「なら決定だな」


 ということで、らんらん行きが決定。大学から離れたところにあるので、俊さんが車を出してくれることになった。助手席に俺、後部座席にミユが乗ることに。


「俊さん、運転免許持ってたんですね。少し意外です」


 初めて会ったときからどこか得体の知れない、浮世離れした印象があったので、車なんてものを持っているとは思わなかった。


「つくなみ市は田舎だから、車がないと色々不便だぞ」


 ミドリやAmazunで生活可能なものはそろえられるから、自転車だけで大丈夫かと思ってた。ミユも色々連れて行ってやりたいし、免許を取ることを考えた方がいいのかもしれない。


「ミユは免許取るか?」

「うん。取りたいな」

「じゃ、一緒に取りに行くか」

「うん!」

「仲がいいのは結構だな……」


 車に揺られること約20分。俺たちは無事、らんらんにたどり着いたのだった。


「とんでもない店かと思いましたけど、普通ですね」


 遠くに見えるらんらんは、簡単な外装がある一軒家風の建物で、2階の前に【らんらん】という看板がかかっている。外装だけでは何の店かさっぱりわからないのが少し変わっている。


「リュウ君、リュウ君。凄い行列ができてるよ」


 言われて目をこらすと、入り口から駐車場の近くまで行列ができている。同じ学生客のようだ。


「人気店なんですか?」

「筑派生でらんらんを知らない奴が居たらモグリだ」


 行列に並ぶのはあまり好きではないのだが、仕方ない。


「言っておくのを忘れてたが、最初は小盛りをお勧めしておく」

「というと?」


 その言葉にそこはかとなく不安を感じる。


「並盛りでも量がかなり多くてな。小盛りで、普通の店の大盛といったところだ」

「不安になってきました」

「私も、そんなに食べないかな」


 ミユも完食できるか不安になっているようだ。


「小盛でも不安ならミニというのもあるから、大丈夫だ」

「それなら安心です。でも、小盛の下があるのも珍しいですね」

「それがらんらんクオリティというやつだ」


 雑談しながら待っていると、次第に行列が前に進んでいき、俺たちが列の先頭になった。


「ちなみに、メニューはBIG丼ただ一つだ」

「「えええ?」」


 俺とミユの声がハモった。


「不安になるのはわかるが、味は保証する」


 こうなっては腹をくくるしかない。入り口を近くの券売機でBIG丼小盛の食券を買って、店員さんに渡す。俊さんはBIG丼並盛、ミユはBIG丼ミニだ。 テーブル席で待つこと約10分。「それ」が俺たちの前に運ばれてきた。


「これ、丼ものといって良いんですかね」

「洗面器じゃないかな」


 俺たちは絶句していた。それもそのはず。BIG丼は洗面器のような大きな器に入れられていたのだ。炒めた野菜やもやし、肉、唐揚げが所狭しと並べられていて、ご飯の部分がほとんど見えていない。美味しそうだけど、これを丼ものなのだろうか。


 「いただきます」を言ってから、スプーンで食べ始めた。


「……美味しい」


 一口食べたミユがつぶやく。


「ほんとだ。何故かわからないけど、食が進みそう」


 何故かわからないが、美味しい。


「いつものらんらんだな」


 三者三様の感想。気が付くと、あっという間に完食してしまった。店の外で待っている人がいるので、さっさと席を立つことにした。


 帰りの車中にて。


「一度らんらんで食べたら、多くの人は病みつきになると言われている。その理由がわかったか?」

「はい!わかった気がします」

「まあ、美味しいですけど」


 そんな会話を交わしたのだった。

 そういえば、免許の事、そのうち考えておかないとな。

次の投稿は、日曜日中の予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ