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第59話 俺と幼馴染が帰省することになった件(6)

 帰省2日目の午後。


 昨夜は、ラインでミユとメッセージのやり取りをしながら、のんびりと過ごした。ミユは俺の、俺はミユのことをお互いの両親からさんざん聞かれて辟易したものだが。


 そして、今日はこれから、俺たちの実家である両国(りょうごく)の近くを散歩することになっていた。


「うへえ。外は暑そうだな」


 外の暑さを想像して少しげんなりする。


「はい。熱中症に気を付けてね」


 以前ももらった、熱中症対策スペシャルドリンク(仮)を受け取る。前はほんとに心配をかけたから、注意しないとな。


 というわけで、外に出て、隅田川(すみだがわ)沿いの道を散歩する。ここ、両国は隅田川のすぐそばにあるので、隅田川沿いの道は俺たちの日常風景だった。


「んー。風が気持ちいいね」

「だな。川沿いで良かった」


 幸い、川から風が吹き込むので、日差しでへばるということにはならなくて済みそうだ。


屋形船(やかたぶね)だ。あれ、今度乗りたいな」


 遠くにミユが屋形船を見つけたらしい。隅田川沿いといえば、屋形船はよく見かけるもので、特別珍しいものでもない。


「しかし、今の時期だと混んでないか?」

「うーん。そうかも。残念」

「それに、屋形船ってオッサンたちが乗ってるイメージがな」

「それは偏見だよー」


 そんな言葉を交わしながら、しばらく隅田川沿いを30分くらい歩いたのだが。


「なあ、これ、どこに向かってるんだ?」

「別に決めてないよ」

「おいおい。さすがにずっとはきついぞ」

「冗談だよ。高校の時に、何度か行った和スイーツの店、覚えてない?」

「ああ、そんなのあったな」

「目的地は、そこ」

「あと何分だ?」

「ん-。あと、5分くらいかな」

「ならいいか」


 あと30分とか言われてたら、さすがに回れ右をしていたところだ。


 そして、ミユの言葉通り、5分ほどしたところにその和スイーツ店があった。確かに、ミユに誘われて、何度か来た覚えがある。


 幸い、店は比較的空いていて、すぐに座ることができた。俺は甘さ控えめ抹茶アイスを、ミユは特製抹茶パフェを頼むことにした。


「でも、ほんと、久しぶりだよね」


 懐かしそうにミユがつぶやく。


「よく、おまえが行きたいって連れてきたからなあ」

「だって、美味しいんだもん」


 しかし、その頃といえば、誠司(せいじ)(17話参照)とよくつるんでいたはずだが。


「なあ、あの頃、ここに誠司を誘わなかったのってひょっとして」

「もう、言わなくてもわかるでしょ?」

「デートのつもりだったってことか」

「正解」


 確かに、デートに誘うのに、他の男は連れてこないだろうから納得だ。


「しかし、そうまでされて気づかなかったとは、俺も若かった」

「まだ3年経ってないよ」

「冗談だ」


 そうこうしているうちに、頼んだ抹茶パフェと抹茶ケーキが運ばれてくる。


「ね、リュウ君」

「また、「あーん、しよう」とか言うつもりだろ」

「なんでわかったの?」

「そりゃ、なんかウキウキしてたからな」


 さすがに俺も、最近は時々、そういうことがわかるようになってきた。


「で、あーん、しよう?」

「さんざんやっただろ」

「別に減るものじゃないし」

「減るんだよ。羞恥心(しゅうちしん)が」


 いまだに、ああいうのは少し抵抗がある。が、


「でも、こういうのも思い出だと思わない?」


 少し真面目な顔をしてそう言われては、無下にできない。


「わかった、わかった」

「はい、あーん」


 ミユが、アイスクリームを掬って俺の口に運んでくる。口の中で、アイスクリームを咀嚼する。


「美味しい?」

「ちょっと甘味が強いな」

「そこは、美味しい、って言わないと」

「そんなところでまで、お約束を踏襲するつもりはない」

「ケチ」


 なんていいつつも、機嫌は良さそうなミユ。まったく、こんなことで喜んでくれるなら安いものだ。


「じゃあ、今度はリュウ君の番ね」

「はいはい」


 言っても無駄だと思ったので、素直にケーキをフォークで切って、ミユの口に運ぶ。


「おいひい」

「食べてからしゃべれ」

「美味しいよ。甘さ控えめもいいね」

「だろ?もっと甘さ控えめなのが主流になるべきだって思うぞ」

「それはそれ、これはこれだってば」


 そんな風に食べさせ合いっこをした後、


「ねえ、リュウ君はどうして、いつも、付き合ってくれたの?」

「そりゃまあ、誘ってくれたのを無下にするのも悪いからな」

「義理だったんだ?」


 少し、何かを期待するような眼差し。


「義理ってわけじゃなくて……」


 これを言うのは気恥ずかしいので、躊躇してしまう。


「なになに?」


 興味津々という様子のミユ。


「ああ、もう。そりゃ、可愛い女子に誘われて、断らないだろ」


 その答えに、


「意識、してたんだ」


 ミユは、目を見開いて、心底びっくりしているようだった。


「そりゃな。お前は当時から可愛かったし、気心も知れてたし」

「その割には、私のアプローチに気づかなかったみたいだけど?」

「それとこれとは別だ」


 恋人になれたら、なんて考えたことはなかったが、かといって、近くに居すぎて、異性として見られない、なんて事を思ったことは一度もない。


「じゃあさ、あの時に告白してたら、OKしてくれた?」

「もしもの話をされてもな」

「もしもでいいから」


 問われて、もし、この店の帰りに、夕方の隅田川沿いで告白されたら、と妄想してみる。「好きだよ、リュウ君」とか。だとすると、


「OKしてたかもな」

「そっかあ。じゃあ、別に遠回しにせずに、そのまま告白してれば良かったのかも」

「別に、いいんじゃないか?今、こうしてられるんだし」

「それもそうだな」


 そうして、しばらく、高校の頃の事や、つくなみに帰った後の事などをのんびりと話したのだった。

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