第14話 幼馴染がベッドに入ってきた件について
竜二に異性として見てもらえることを知った美優が猛攻勢をかけてきます。竜二君はもう陥落寸前。
5月7日火曜日。ミユの一件も一段落ついたし、今日は午前中は講義がないしで、朝から惰眠をむさぼっていた。今日みたいに、暑くもなく寒くもない時間は惰眠を貪るのに最適だ。あー、ずっと布団にくるまっていたい。そんなことを思っていると、もぞもぞと布団に何者かが入ってくる。って。
「ミユ。なんで、布団に入ってきてるんだ」
家の合鍵を持っているのなんてミユしかいないわけで。
「私も一緒に寝たくなって」
ぎゅーっと俺の身体を抱きしめてくる彼女。せっかくの眠気が全て吹っ飛んでしまった。しかもこいつ、Tシャツ一枚に短パンという格好で、体格の割に大きな胸の感触とか匂いとか色々伝わってきてまずい。
「理由になってないんだが」
なんとか冷静さを装ってみる。装えているだろうか。
「リュウ君と一緒に居たいのは理由にならない?」
「いや、そうじゃないが」
くりくりとした瞳で見つめられる。一体どうすれば離れてくれるのか。
「ねえ。リュウ君は私とこうするのは嫌?嫌ならやめるけど」
少し真剣な表情で問いかけるミユ。
「別に、いやじゃない。落ち着かないだけで」
そう。こいつは可愛いしふわふわだし、昔から一緒に育って来た幼馴染でもあり……。何より異性としても魅力的だと思ってる。嫌なわけがない。ただ、結論を中途半端にしてるのに
こういうイチャイチャなことをするのに罪悪感があるのだ。
「ね。リュウ君が真面目で、結論を保留にしてるのに、こうするのに抵抗があるのはわかるよ」
驚くほど、今の俺の心情を的確にミユは言い当てて来た。
「でも、私はもっとこうやってリュウ君に甘えたい。だから、気にしないで、ね?」
耳元で囁いてくる。確かに、ミユがそうしたいと言ってくれてるのに、俺が拒否する道理もない。
「その。いいのか?」
「いいよ」
その言葉で、結論を保留してるから、とかなんだか理屈を付けてたのがどうでもよくなった。相変わらずふわふわな髪を撫でながら、俺も抱きしめ返す。
「ん♪」
目を細めるミユ。なんだかとても嬉しそうだ。なんだか、このまま、突き進んでもいい気が…って。
「って。ちょっと待った!」
「ど、どうしたの?」
大きな声にミユはびっくりしたようだ。
「この先はまだ止めよう」
危ない、危ない。勢いのまま一線を超えてしまいそうになっていた。頭に冷静さが戻っていく。
「えー、しようよ」
ミユは不満そうだ。
「しない。ちゃんと気持ちを固めてから、な」
「むうー」
ふくれっ面になるが、そこは譲れない。
「はあ。わかった。リュウ君がその気になるのを待つよ」
「助かる」
自分でも驚くほどその気になっていたので、ミユが同意してくれなかったらどうなっていたことか。
「でも、良かった。リュウ君が私をちゃんと意識してくれて」
「え?」
顔を赤らめながらも、嬉しそうにそんなことを語るミユ。嬉しそうにされるとなんだか色々困る。
「そ、それは……まあ、俺も男だし」
「ぎゅっとするのはいいよね?」
「もちろん」
というわけで、午前中はお互いベッドの中でお互いの身体を抱きしめ合ったり、髪をなでたり、頬に触れたりして過ごしたのだった。