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悪役令嬢型アンドロイド・エリザベスX ~ ティータイムは宇宙要塞で ~  作者: 鷹山 涼
6章 クラスタウォーズ・エピソード1 ファントム・アラシ
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6章 第1話 開戦、ナーロウの遺産 VS アラシの亡霊

 辺りを包む強い光に、反射的にギュッと目を閉じていたライトであったが、しばらくしてその光が収まった事に気がつくと、ゆっくりと目を開ける。

 そして周囲を見渡し、何も被害を受けていない事を確認すると、ホッと胸を撫で下ろした。



 「驚いた……。でも、何も被害が無かったみたいで良かったよ」


 「いえ、確かに我々には被害はありませんが、おそらく……。

 ……ノジャロリーナS、すぐに状況を確認して報告してください」


 ライトはひとまず安心したようであったが、エリザベスXは険しい表情のまま別室のノジャロリーナSへと指示を飛ばす。

 するとすぐにスピーカーから幼い少女の声が返ってきた。

 


 《ここには被害は無いのじゃ。……で、でもマエザー達の船の反応が消えてしまったのじゃ……。位置から考えて、きっと今の攻撃で……》


 「やはりですか……。おそらくは撃沈されたという事でしょうね」



 「撃沈っ……!? うそ! そんな……」


 二人のそのやり取りを聞いて、ライトは血の気の引いた顔で驚きの声を上げた。


 ライトは戦闘行為を見たことは何度もあり、時には自ら戦うこともあったが、それでも運良く今までは死者はおろか大きな怪我人も見る事が無かった。

 だから戦場というものをリアルに理解してはいなかったのだ。

 そんな彼にとって、ついさっきまで会話していた人間の乗った船が撃沈されたと知って受けたショックは、とても大きなものであった。

 ライトは呆然としたまま力無くその場に立ち尽くしていたが、衝撃的な事態はそれだけではなく更に続いく事となる。

 

 

 《これは……あの正体不明の船から通信が来たのじゃ。 ……の……のじゃ!? なんでなのじゃ!? まだ繋いでいないのに、勝手にっ……!?》


 焦るノジャロリーナSの声を掻き消すようにノイズが走り、そしてそのノイズが収まったかと思うと、今度は男の声が聞こえて来た。



 《聞こえているかな? ナーロウ博士の忘れ形見達よ。

 我はソウゴ・ヒョウカ。アラシ・クレームメールの遺志を継ぐ聖戦士……

 『クラスタ』のリーダーだ》


 

 「クラスタの……リーダー!?」


 ライトは驚きの声を上げ、ミリィちゃんは不安そうな表情を浮かべた。

 他のメンバーは大きな動揺こそ見せなかったが、皆それぞれ瞳に真剣な色を映しており、辺りには緊張感か漂っている。


 クッコローネRは眼光を鋭く細めながら右手で愛用の剣を握り、口を開いた。



 「クラスタ……アラシ・クレームメールの亡霊か……。ならば残念だが会話で平和的に解決とは行かなそうだ。

 ……禍流真W、貴公も行けるな?」


 彼女がそう言って視線を斜め後ろに向けると、その先にいた禍流真Wが皮肉っぽくニヤリと口元を歪めて笑い、言葉を返した。


 「誰に言っているんだ? 面倒だが自分の仕事はこなして見せるさ」


 クッコローネRと禍流真Wは互いに頷き合うと、出撃準備を整えるために足早に部屋から出ていく。

 戦場へと向かう2人の後ろ姿を、ライトは悲しげな表情で見送り、そして呟いた。



 「また戦いになるのかな……。みんなが強いのは理解してるけど、やっぱり心配だよ」


 その横でミリィちゃんも、「うーん、戦わないで済むのが一番なんだけどね……」と言って困った顔をしている。


 エリザベスXはその2人を見て、少し考えてから1つの提案をした。



 「でしたら一度だけ対話を試みてみましょうか? 相手はあのアラシ・クレームメールの後継者で、しかも協力関係であったマエザーの船を沈めるような連中ですから平和的な話し合いができる相手とは思えませんが……。

 まあ、私も好んで戦闘したい訳ではありませんから、試すだけ試してみてもいいかも知れません」


 「う、うん。じゃあ試してみてもらっていいかな?」


 「了解しましたわ。では平和的に話し合いと行きましょうか」



 エリザベスXは軽く自分のこめかみの辺りに触れて通信機のチャンネルを調整し、相手の船に繋がった事を確認すると、にこやかに微笑みながら平和的に挨拶を始める。

 


 「こんにちはゴミムシ未満。聞こえますか? 私はエリザベスX。ご存知の通りナーロウ博士のアンドロイドですわ。

 確かそちらはクラスタのソウゴ・ヒョウカとか仰いましたわね? 残念ながら私達はそのクラスタとかいう負け犬の残党などには用は無いのですが、せっかくですから特別に話くらいは聞いて差し上げましょう。

 さあ、用件があるならどうぞ。……ああ、私は貴方のようにヒマでは無いので手短にお願いしますわね」



 横で聞いていたライトが「あ……あれ? 平和的ってどういう意味だっけ?」などと呟いていると、すぐにソウゴからの通信が届いた。


 《フンッ! いきなり無礼な口を利くものだ、時代遅れの人形は人間への礼儀すら知らぬのか!

 貴様らは偉大なる指導者アラシ・クレームメールの大望を邪魔した憎むべき敵……本来ならば今すぐにでも宇宙の塵に変えてやりたいところだが、我々に従いその力を貸すと誓うのならば配下に加えてやろう。さあ、どうする?》


 「は? これはこれは不思議な事を言いますこと……なぜ私達が貴方のような小悪党に従わなくてはいけないのですか? その提案にはドット1つ分ほどのメリットも感じられませんわ。 

 ……ああ、ですが逆に貴方が私の下僕になると言うなら受け入れてあげてもよろしくてよ? あまり能力は期待できなさそうですが、特別に私の靴磨きくらいはさせてあげますわ。破格の待遇でしょう? 失禁するほど喜んでも良いのですよ?」



 後ろではライトが「もうダメだぁ……」と言って手で顔を覆っている。



 《ぐぬぬっ……なんと傲慢な! ええい、もういいっ! 自分たちには価値があるから破壊されないだろうなどと甘い事を考えているのなら、それは大間違いだと教えてやろう!

 手に入らぬなら壊すまで! ナーロウ博士の遺産を徹底的に踏みにじることで、我らが指導者アラシ・クレームメールの無念を晴らしてくれるわ!》


 その言葉が終わるか終わらないかというタイミングで、けたたましいアラームが研究所内に鳴り響く。



 「っ! ライト・ノベル! 伏せなさい!」


 「えっ……あっ!?」


 エリザベスXは、事態に反応できずに戸惑うライトの体を押し倒し、その上に覆い被さるようにしてかばった。

 その直後に光の波が研究所を襲い、辺りを衝撃音と振動が走る。そしてスピーカーからはノジャロリーナSの半泣きの声が響いた。



 《ビーム兵器を食らったのじゃ! バリアが1層破られてしまったのじゃ! バリア発生装置自体もちょっと損傷しちゃったのじゃー!》



 「交渉は決裂ですか。……それにしてもあの男、せっかく私が交渉のテーブルに着いているというのに、話し合いの最中に攻撃を仕掛けて来るとはマナーがなっていませんわ。まったく小悪党は気が短くて困ります」

 

 「いやいや! 今のは話し合いっていうか挑発してるようにしか聞こえなかったよ!?」

 

 「あら、そこは解釈の違いというものですわ。……ですがそんな細かい事を気にしている余裕があるということは、大した怪我は無さそうですわね」


 「う、うん。怪我とかはしてないみたいだ。エリザベスXがかばってくれたお陰で……あっ!」



 怪我をしていないかを確かめるために体を動かそうとしたライトは、エリザベスXが自分の体に覆い被さって、ピッタリと密着していることに気がつき、そんな場合ではないと思いながらもその感触を意識してしまい、自分の顔が熱くなっていくのを感じた。


 そんなライトの様子を見たエリザベスXは、最初は不思議そうにしていたが、すぐにその理由に気がついて、ニンマリとした笑顔を浮かべる。


 「あらあら、こんな緊急時だというのに、そんなに私の体の感触が気になるのですか? 女性に対して奥手そうな顔をしておきながら、このむっつり性犯罪者が」


 「ちょっ……! むっつり性犯罪者ってなに!? 百歩譲ってむっつりスケベと言われるならまだしも、性犯罪者扱いは不名誉過ぎる!」


 「オホホホホッ! それだけ元気にツッコミができるのでしたら怪我は無さそうですわね。でしたら次の攻撃が来る前に移動しますわよ」


 そう言ってエリザベスXは起き上がり、グッとライトの手を引いて立ち上がらせた。



 「さあ、コンピュータールームに向かいましょう。あそこは一番重要な場所ですから安全性も一番高く設計されていますわ」


 「う、うん、わかった」


 そう返事をして歩きだしたライトだったが、シェフとミリィちゃんが遅れている事に気がついて、振り向いて2人の様子を確認した。


 「2人ともどうしたの? 早く行かないと危ないんじゃ……」


 「ゴメーン♪ 念のために保存食を持っていくから、もう少しかかっちゃう!」

 「すぐに支度を終わらせますので、お客様はお気にせずどうぞお先に出発してください」


 そう言って2人は食堂の奥にある倉庫から食べ物を運び出し始める。


 「今はそれどころじゃ……!」

 「頼みましたよ。では先に向かっていますので、あまり遅れないようにしてください」


 2人に避難を促そうとしたライトだったが、エリザベスXは2人を残したままライトの手を引いてさっさと食堂を出ようとする。

 ライトは2人を置いて行こうとするエリザベスXの態度が冷たく見えてしまい、若干の非難の色を含んだ声で尋ねた。



 「ちょっとエリザベスX……2人を早く避難させなくていいの?」


 「貴方の事ですから2人を心配して言っているのでしょうが、シェフもミリィちゃんも高性能のアンドロイドですから万が一何かの拍子に宇宙空間に投げ出されるようなことがあっても大した事はありません。

 それにあの2人にとっては人間に食事を供給することが最優先事項なのですから、食料を持たずに逃げろと言っても簡単には納得しませんわよ」


 「それはそうなんだろうけど……」


 「食料を用意するのがあの2人の仕事、そして貴方は逃げて、隠れて、とにかく自分の身を守ることが仕事だと思いなさい。

 理解しましたか? でしたら歩きなさい。……それとも私が赤子のように抱っこして運んで差し上げましょうか?」


 エリザベスXは前半は真面目な表情で、そして後半はからかうようにニヤニヤと笑いながらそう言った。



 「そ、そんな恥ずかしい事しなくていいよ! 自分で歩くから!」


 「オホホッ、それは良い心がけです。では行きましょうか」



 ライトたちが廊下を駆け足でしばらく進み、コンピュータールームまであと少しの所まで進んだ辺りで、再びアラームが鳴り響いた。


 「っ! このアラームは!」

 「また攻撃が来ましたか! 警戒なさい! ライト・ノベル!」


 衝撃に備えて身構えた2人であったが、閃光だけは先ほどと同様に感じたものの、衝撃らしい衝撃はほとんど感じられなかった。

 ライトは伏せていた頭を恐る恐る上げる。


 「……もしかして当たらなかったのかな?」


 「状況の確認は後ですわ。次の攻撃が来る前に避難してしまいましょう」


 「あ、うん」



 2人は再び走り出しコンピュータールームまでたどり着くと、そのまま足早に中へと駆け込んだ。

 室内では、ずらりと並んだコンピューターや冷却装置などの間からノジャロリーナSがピョコンと顔を覗かせている。


 彼女はライトとエリザベスXの顔を見ると自慢の狐耳をぺたんと伏せながら安心したようにヘニョっと表情を弛め、パタパタとライトに駆け寄るとそのままバフッと抱きついた。


 「のじゃ~、心細かったのじゃ~……」


 「そっか。……よしよし」


 ライトが頭を優しく撫でると、それに反応してか彼女の狐耳がピクピクと動いた。

 その様子を見たエリザベスXは少し呆れたようにため息をつきながら注意する。


 「はぁ……。ノジャロリーナS。安心したのは分かりましたがまだ気を抜いて良い状況ではありませんわよ。しっかりなさい」


 「そ……そうじゃった、まだ戦闘中だったのじゃ! いけないのじゃ、自分の仕事を忘れてしまったらアンドロイド失格なのじゃ~」


 ノジャロリーナSはハッと顔を上げると、少しだけ名残惜しそうにしながらもライトから一歩離れ、コホンと小さく咳払いをした。



 「えーっと、まずは報告なのじゃ! さっき五所川原Jが外に向かったのじゃ。今は研究所の前でバリアを張っているのじゃ」


 「なるほど、先ほどの攻撃のダメージが無かったのは五所川原Jのバリアのお陰でしたか」


 「あれ? でも五所川原Jはマエザー達との戦いで消耗したエネルギーを補給している最中だったよね? 時間的に考えてまだ全快していないんじゃないの?」


 ライトがふと浮かんだ疑問を口にすると、エリザベスXが小さく頷く。


 「そうですわね、まだ万全には遠い状態でしょう。バリアを張っているという事は今の五所川原Jは消耗の大きいTS転生聖女モードになっているはずですし、あまり長時間は持たないと思いますわ。

 今のうちに別の手も打っておくべきですわね。色々とやるべき事はありますが、まずは……」


 エリザベスXは部屋の隅にあるコンテナを指差した。



 「ライト・ノベル。あそこに予備の宇宙服がありますから着替えてください。今の格好では何かあった時に危険ですわ」


 「今の格好って…… あっ」


 指摘されて思い出したが、ライトのパワードスーツはマエザーとの決闘で所々が破れているのだ。

 もしも戦いの中で研究所の壁に穴でも空いたりしたら、こんなボロボロのパワードスーツでは何の役にも立たないだろう。



 「確かにそうだね。うん、わかった。……ブクマ解除!」


 キーワードを言ってパワードスーツを解除したライトは、コンテナから宇宙服を取り出して着替え始める。

 特別な機能が付いた宇宙服の場合、装着の手順が複雑で1人で着るのが難しい物もあるのだが、これは最低限の機能だけが付いたシンプルな物のようで、一般人であるライトでも1人で着られそうだ。


 エリザベスXはライトが問題なく着替えていることを確認してから、こめかみに手を当てて通信機能を使用する。


 ちなみにどうでも良い話だが彼女が通信機能を使うときは特定の動作をする必要は無く、こめかみに触れるのはただの癖だったりする。



 「エルメスT、聞こえますか? 五所川原Jがバリアを張っている間に貴方は……」


 言葉の途中に割り込むように、のんびりした声が帰ってくる。


 《分かってるわ~。最初の攻撃で壊れちゃったバリア装置を修理すればいいのよね~? もう始めてるわよ~。

 スティーブン舞倉にも手伝ってもらってるから~、そんなに時間はかからないと思うわ~》


 「対応が早くて助かりますわ。そのまま作業を続けてください」


 《うふふ~。任せて~》



 エリザベスXは通信を終了すると、次はノジャロリーナSに指示を出す。


 「先ほどクッコローネRと禍流真Wが出撃したはずです。確認したいので、2人のいる辺りの映像を表示してください」


 「のじゃ!」



 返事をしたノジャロリーナSがコンピューターを操作すると、部屋の壁についた大型モニターに2人の姿が映し出される。


 「むむっ……ちょっと見づらいのじゃ? 倍率と解像度を上げるからちょっと待つのじゃ。えーっと、ポチッとな」


 更にいくつかの操作をすると映像がズームされ、2人の様子がより鮮明に確認できるようになった。

 2人は襲いかかるクラスタのロボット達を危なげなく迎撃していた。



 「良かった……。2人とも大丈夫だ」


 着替えを終えてモニターの前に来たライトが、画面の向こうの2人の戦いを見て安堵したようにそう言った。

 戦いの事が分からない一般人であるライトから見ても、明らかに余裕のある戦いに見えたからだ。

 ノジャロリーナSも同じように感じたのか、さっきまでよりも少し安心しているように見える。



 「確かに有利に進んでいるようですわね。今の所は……ですが」


 だがエリザベスXは戦況を楽観視はしていなかった。

 2人の実力を信じていない訳ではない。あの2人の単純な近接戦闘力はエリザベスXよりも上であり、数に差があるとはいえ、並みの相手に負ける事は無いと考えている。


 (……ですが、研究所のレーダーをすり抜けたステルス機能と、一撃で研究所のバリア装置を損傷させた火力の2つを見ても油断ならない技術力を持っている事が分かります。……それに、マエザーが言っていた、クラスタが最近切り札を手に入れた、という情報も気にかかりますわ)



 研究所への攻撃は五所川原Jが防ぎ、受けたダメージはエルメスTとスティーブン舞倉が修復し、クッコローネRと禍流真Wが白兵戦を制している。


 鉄壁の布陣と言える状況であり、不安要素は何も無いように見える。

 だが、このままでは終わらないような悪い予感を覚えたエリザベスXは、情報を見逃すまいと食い入るようにモニターを見つめた。


 


 ーーーー



 無駄にトゲトゲした装甲、暗いグリーン系のカラーリング、いわゆる『モノアイ』と呼ばれる一つ目のカメラ……。

 そんな、見るからに敵組織の量産機っぽいデザインの人型ロボットが、ターゲットを破壊するべく斧を振り下ろす。

 その一撃は対象を真っ二つに切り裂いた……ように見えた。


 「……それは残像だ」


 次の瞬間、鋭い刃がそのモノアイロボットの胴体を、そしてその内部の動力部を貫き、破壊した。



 「ふう……所詮この程度か」


 そう言いながら、機能停止したロボットから刀を引き抜き、無意味にクルリと回転させてから構え直したのは禍流真Wだ。



 「はあっ!」


 その横ではクッコローネRがモノアイロボットを横一文字に切り裂いて破壊していた。

 彼女は次の相手に備えて剣を構え直しつつ、横目でチラリと禍流真Wの方を確認する。

 

 「……そちらも問題は無さそうだな。流石の腕前だ」


 「ふん、この程度の相手を何体倒しても自慢にもならんさ」


 「うむ……確かに思っていたより手応えがないな。だが油断は禁物だぞ、先ほどから何か嫌な予感がするのだ。

 ……貴公もそう感じているからこそ、刀を抜いているのだろう?」



 そう。今の禍流真Wは、刀を抜いているのだ。

 全体が黒くカラーリングされていて、刀身に漢字で『罪』と彫られた中2感溢れる小太刀サイズの日本刀だ。


 デザインがアレだという部分に目が行きがちだが、ここで重要な事は、『ピンチや見せ場でしか実力を発揮できない』という制限がかかっているはずの禍流真Wが武器を持って積極的に戦っているということだ。

 マエザーの船からライトを救い出すときですら素手だったというのにである。



 「ああ。オレの本能が言っているのさ、この戦場にはこのオレが真の『能力(ちから)』を振るわなくてはいけない何かが居る……とな」

 

 「笑えない話だな。……だが同感だ、私の勘も強者の気配を感じ取っている」



 会話をしながらも戦闘は継続し、周囲の敵を破壊し続ける2人。だがそのとき視界の端に強い光が見えた。

 敵船からのビーム攻撃だ。

 それは研究所の前に待機している五所川原Jの展開したバリアによって防がれてはいるが、永遠に防ぎきれるというものでもないだろう。



 「クッコローネR。お前はあの船の砲台を破壊してきてくれ。……ここはオレ1人で充分だ」


 禍流真Wの提案に、クッコローネRは周囲の状況を確認しながら考える。

 今のところ敵のロボットたちに苦戦はしていない。どちらかと言えばロボット達よりも船からの攻撃の方が脅威度は上だ。

 安全を考えると、そちらの対処を優先するべきであろう。



 「うむ、了解した! ここは任せたぞ!」


 「ああ、余計な心配はせずにさっさと……」


 そこまで言って禍流真Wは言葉を止める。

 急速で接近する反応に気がついたからだ。



 「人間……ではないな。アンドロイドか? ……どうやらこいつがオレの感じ取っていた強敵らしい」


 その存在から強烈なプレッシャーを感じ取った禍流真Wは、気を引き締め直して刀をしっかりと握ると、後ろのクッコローネRに言い放つ。



 「クッコローネR! お前は早く砲台へ向かえ!」


 「っ!……分かった!」


 あの敵は強い。

 歴戦の勘でそれを感じ取っていたクッコローネRは、禍流真W1人を残すことを少しだけ躊躇ったが、結局そのまま船へと向かうことを選択した。


 禍流真Wは『1人で充分だ』と言い、自分はそれに納得して『ここは任せた』と言ったのだ。ここですぐに意見を変えれば、それは禍流真Wへの侮辱になると考えたのである。



 「砲台を破壊し終わればすぐに戻る! それまでの間、時間を稼いでいてくれ!」


 そう告げてクッコローネRが飛び去ると、禍流真Wは瞳を閉じて小さく呟く。


 「時間を稼ぐ、か……」


 そして、接近する影に向かって突きつけるように刀を構え、キリッとした決め顔で続ける。



 「だが……別にアレを倒してしまっても、かまわんのだろう?」



 

 ……何かのフラグが立った。




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