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1章 第2話 悪役令嬢VS宇宙海賊 ~ 襲来! スペースヒャッハー

 どんなに科学が進歩しようとも、生活の場を宇宙に移そうとも、犯罪者というものは無くならない。

 それは人類が生まれもった業であり、運命である。


 そして、こういう状況で現れる犯罪者集団が、ハイテンションで奇声をあげるモヒカンの大男ばかりだというのも、また神が定めた運命というものであろう。


 宇宙海賊・スペースヒャッハー……

 その名前からは想像もできないかも知れないが、意外な事に彼らもまた、ハイテンションなモヒカン集団であった。




 「ヒャッハー! 仔猫ちゃんがケツを振りながら逃げ回ってるぜぇ!

 オラオラ! もっと速く逃げないと捕まえちまうぜぇー!?」


 「ほーれ、ほーれ。上手く避けないと当たっちまうぜぇ? ヒャッハー!」


 モヒカンたちは、逃げ回る小型船を追い回し、スタンウェーブを撃ちまくっている。


 このスタンウェーブという武装は、機械の機能を一時的に停止させる事を目的としたもので、殺傷能力は無い。

 だが狙われている者にとって、殺傷能力が無いという事は何の救いにはならないだろう。

 命に別状が無かったとしても、宇宙海賊に捕獲されてしまえば、その先に待っているのは不幸な末路だけなのだから。



 「おっ! 命中したぜ! 見ろよ、ヨロヨロと落ちていくぜ! ヒャッハー!」


 「おう、あのデカい瓦礫の塊に不時着するみてえだぜ! おい、オレたちも降りるぞ!! あの船も、乗ってる人間も全部頂いちまおうぜ」


 「行くぜ! 野郎どもっ! 合言葉はっ!?」


 「「「レッツ・モヒカン! ヒャッハーッ!!」」」




 ーーーー




 「あの小型船、一撃当たりましたね。……ここに不時着するようです」


 そう呟いたエリザベスXは、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


 「……まったく……実に迷惑な事ですわね。

 手の届かない範囲でならどんな目にあってくれても構わないのですが、近くで危機にさらされている人間がいると、アンドロイドの本能として助けたくなってしまいます。

 かといって自分に利の無い人助けをすると、今度は悪役令嬢としての本能で背中がムズムズして不快になるのです」


 そう。彼女は人間を助けるために生まれた『アンドロイド』という存在であるとともに、自分の利益のためにワガママに振る舞う『悪役令嬢』でもあるため、危機に瀕した者がいると、二つの本能がぶつかり合う事になってしまう。


 かなり人間に近い思考ができるエリザベスXであっても、やはりアンドロイドである以上は融通の利かない部分があり、

 『とりあえず襲われてる人がいるから助ける。敵は犯罪者だから倒してOK』

 という、異世界で俺TUEEEする主人公のようなシンプルな思考はできないのだ。


 「……どちらにせよ自衛のためにも海賊は追い払わなくてはいけませんか。

 はあ……仕方がありませんわね。命令です、ライト・ノベル。

 私に『海賊を追い払って小型船を助けろ』と命令しなさい」


 「命令しなさいっていう命令をするのっておかしくない!?」


 条件反射のようにツッコミを入れるライトに、エリザベスXは面倒くさそうな顔をした。


 「今はそういうツッコミはいいので、早くしてくれませんか。

 人間から命令されたという名目があれば、戦闘行為や人助けへの抵抗感も薄れるはずですわ。

 なので、私が気持ちよく戦うためのサポートだと思って、早く命令しなさい」


 「……一つ聞かせて。ここの設備って、まだまだ機能を取り戻してないよね?

 この状態で海賊と戦って……勝てるの?」


 ライトが不安そうに確認すると、エリザベスXが答えを返した。


 「そうですわね……。私以外で今、出撃できるのは下位の小型防衛ロボットくらいですが、まあ可能……というか、楽勝だと思いますわ。

 もちろんあの海賊の戦力がどれくらいの物か知らない以上は油断は出来ませんが、恐らくなんの問題も無いでしょう。

 出撃する時のエネルギー消費量に少々の不安はありますが、まあ許容範囲内ですわ。貴方が戦闘命令を出してくれさえすれば、すぐに無力化してみせます」


 自信ありげなそのエリザベスXの言葉に、ミリィちゃんも続けた。

 

 「エリザベスXは並みの戦闘アンドロイドよりもずっと強いし、私とシェフも戦闘用じゃないけど自衛くらいは出来るんだよ。

 それに、私たちはアラシ・クレームメールのクーデター軍と戦った経験もあるからね。戦いは嫌いだけど、その気になれば海賊くらいはやっつけれると思うよ♪」


 エリザベスXとミリィちゃんの態度は、強がりを言っている様子ではなく、戦えば勝てると確信しているようであった。

 

 

 その態度を見たライトは、小さく頷いて、言葉を口に出す。

 「……じゃあ、お願いするよ。あの小型船を守ってあげて」っと。

 すると、エリザベスXは首を横に振ってライトに言った。


 「そうではありませんわ。もっと強く命令してください。

 ドラマでもアニメでもゲームでも構いません。そこに登場した、強く、威厳のある王や将軍の姿を思いだしてください。

 そして自分がその英雄になったつもりで、自信を持って命令するのです」


 「え……ええっ!? そんな事を言われても……」


 「早くなさい。間に合わなくなりますわよ?」


 ただでさえライトはリーダーシップを取る性格ではない。それを英雄に成りきって強く命令しろと言われても、簡単に出来るものでもないだろう。

 だがエリザベスXに強く言われた事で、ライトは覚悟を決めた。



 今の俺は司令官だ! っと自分に言い聞かせ、キッ! とエリザベスXを見つめ、胸を張り、表情を引き締め、腹の奥から力強く声を出す。


 「め、命令だ! 賊を殲滅し、小型船を救出せよ!」


 それを聞いたエリザベスXは、静かに微笑みながら頷き……

 ハイヒールでライトの足を踏みつけた。


 「ぎゃああぁっ!? イタイ! イタイって! なにやってるの!?」


 「ああ、申し訳ありません。キメ顔で命令する貴方の姿が、あまりにも気色悪かったので、イラッとしてついやってしまいましたわ。

 ……ですがまあ、命令は承りました。戦果は約束いたしますわ」


 そう言って歩き出したエリザベスX。

 彼女の口調はいつも通りだったが、その表情はいつもより柔らかく、魅力的であった。

 ……だが、痛む足をさすっていたライトは彼女のその顔を見ていなかった。




 ーーーー




 不時着した小型船を追って、海賊船も瓦礫の塊に着陸した。

 それは瓦礫に偽装した研究所なのだが、今のところまだ見破られてはいないようだ。


 動きを止めた海賊船からは、筋肉の絵が描かれた宇宙服とモヒカン形のヘルメットに身を包んだ、スペース世紀末ファッションの海賊たちがどんどん降りて来て、獲物をその手にするために小型船へと近づいてゆく。


 「さ~て、観念したか? 俺たちに見つかったのが運のつきだぜぇ!

 その船と金目のモノを大人しくよこせば、命だけは助けてやるぜ?」



 海賊たちは、ヘルメットの下でニヤニヤした笑いを浮かべながら小型船を取り囲んだ。

 その手にはヒート釘バットと宇宙対応型の火炎放射器の二つが握られている。これがスペースヒャッハーの基本装備なのだ。


 「オイ! 開けろ! 開けねえとぶっ壊しちまうぜぇ!?」


 一人の海賊が小型船に近づき、宇宙服についている重力装置をオンにする。

 これをオンにしている間は、宇宙空間でも重力下と同じような動きができるようになり、違和感なく近接戦闘ができるのだ。

 ブンブンとバット素振りして、ちゃんと重力下と同じ動きができる事を確認した後、その海賊はニヤニヤと笑いながら、宇宙船の扉を叩き割るべく釘バットを振り上げた。

 その時……


 「ギャギャ!」


 奇声をあげながら小さな人影が飛び込んで来て、スタンロッドで海賊に殴りかかる。

 それは子供のような体格に、鼻と耳が尖った猿のような顔をしていて、宇宙空間だというのに宇宙服を着ていなかった。


 「なっ!? なんだコイツ! エイリアンか!? ぐおっ!?」


 突如現れた謎の敵に動揺した海賊は、防ぐ事もできずにスタンロッドの一撃を食らい、膝をついた。


 「おい!? ……チッ! このヤロウ!」

 「待てっ! 一匹だけじゃねえぞ! 囲まれるなよ!」


 「ギャギャ」  「ギャアー」 「キーッ」


 その存在は、瓦礫の陰からひょこひょこと顔を出し、数を増やしていく。

 海賊たちは知らない事だが、彼らはエリザベスXが出撃させた防衛戦力、ゴブリンロボットだ。

 個々の性能は低いが、生産コストを徹底的に下げて大量生産に特化したモデルで、研究所からの電力供給ではなく単3電池で動いているため、現状のエネルギー不足を気にせずに稼働させる事ができるのが利点である。



 「オラオラッ! このエイリアンどもが! 汚物は消毒だぁ!!」

 「ギャギャー!」


 火炎放射器で反撃するモヒカン海賊たちと、それから逃げながらも、隙を見てスタンロッドで殴りかかろうとするゴブリンたち。

 戦いは拮抗しているように見えたが……


 「ヒャッハー!」


 一歩離れた所で見ていた海賊のリーダーが、最前線に飛び出すとともに釘バットを振り下ろし、一体のゴブリンの頭を叩き割った。

 生物に見える外見ではあるが、割られた頭からは血の一滴も出る事もなく、飛び散るのは金属の欠片ばかりだ。


 「ああん?……なんだコイツら、ロボットか? なんで戦闘ロボットがこんな瓦礫の上に所にいやがるんだ?」


 そう言って海賊のリーダーは、辺りを見回し、ピクリと表情を動かした。


 「……ここの瓦礫……なんか妙だな? コイツはお宝の匂いがしやがるぜ。

 おい! ヤロウども! この変なロボットをさっさと片付けて、この辺りを捜索するぞ!」


 「「「了解! レッツ・モヒカン! ヒャッハー!」」」



 金目の物があるかもしれない。その思いが海賊たちに活力を与える。

 少しずつ戦況は海賊が有利に傾いてゆき、ゴブリンは一体、また一体と破壊されていった。

 

 このまま海賊が勝利するのかと思われた、その時……



 《オーーーッホッホッホッ!!》



 闇の中から少女の高笑いが響いた。……しかもエコーがかかっている。



 《……成る程。ゴブリンたちを倒す程度の力はあるようですね。

 ですが、ゴブリンは私たちの中では一番の格下。防衛戦力になれたのが不思議なくらいの小物ですわ。あまり良い気にならない事ですわね》


 「なんだぁてめえっ! 何者だ!? 出て来やがれ!」


 《フフッ……良いでしょう。 この地に足を踏み入れた、その蛮勇に敬意を表して、私が自らお相手をして差し上げますわ。光栄に思いなさい》


 少女の言葉が終わるとともに、どこからともなくパイプオルガンの荘厳な演奏が聞こえて来て、闇の中から、サーッ! とレッドカーペットが伸びて来る。

 その直後、目が眩む程の強い光が辺りを照らした。

 

 そしてその光の中、レッドカーペットの上を歩き、何者かの影が海賊たちに近づいて来る。


 宇宙空間で、しかもカーペットの上を歩いているというのに、一歩毎にカツーン! カツーン! っと、硬い床を歩くような足音が、なぜかエコーつきで響く。



 人影は海賊のそばまで来るとそこで立ち止まり、合図を送るかのように片手を軽く上げる。

 するとBGMがストップした後、フッと照明が消え、逆光で影になっていた顔が海賊たちに晒された。

 その人影はツインテールの髪をドリルのように巻いた少女で、宇宙空間だというのに宇宙服を着ておらず、フリルつきの古風なドレスを着ている。


 言うまでも無いが、その少女はエリザベスXである。

 ……何故か、バックに真紅の薔薇の花びらが舞い散った。


 彼女は、右手に持った細い剣のような物をスッと構えた。それはレイピアよりも更に細く、振るとしなる程に柔軟な物で、先端は丸めてあり、刺さらないように加工されている。

 そう。それはフェンシングの競技用フルーレであり、本来は戦場に持ってくるような武器ではない。

 それを見た海賊もニヤリと笑いながら軽口を叩く。


 「ヒャッハー! おいおい嬢ちゃん、スポーツと実戦は違うんだぜ? そんなオモチャで俺たちが倒せると思っているのか?」

 

 「実戦には向かないかもしれませんが、害虫駆除くらいならこれで十分だと思いますわよ? ……試してみましょうか?」


 言うや否やクルリと振り向き、後ろに忍び寄っていた一人の海賊に素早く突きを放つ。

 海賊は反応もできずに、アッサリと胸元を突かれた。

 その剣は、先端を丸めてあるために刺さりはしなかったが、海賊に触れた直後、バチィッ! と弾けるような音が鳴ると共に青い閃光が走り、海賊は膝から崩れ落ちるように倒れた。



 実はこれはフルーレの形をしたスタンガンであった。

 アンドロイドは基本的に殺人ができないので、使える武器は自然と殺傷能力の無いだけとなるのだ。

 殺傷能力が無いとは言え、これもナーロウ博士の特製だ。

 宇宙服を着ている相手を一撃で気絶させるスタンガンなのだから、十分に強力な武器と言えるだろう。



 「……どうやらただのオモチャじゃねぇみてえだな。

 だがなぁ、そんな細くてフニャフニャした剣じゃあこのヒート釘バットは防げねえよなぁ! 食らいやがれ! ヒャッハー!」


 奇声をあげながら釘バットを振り下ろす海賊のリーダー。

 その攻撃は部下の攻撃と比べて力強くて速いが、エリザベスXは滑るようなフットワークで軽々と避けた。


 「ヘッ! いい動きだが……いつまで避けきれるかなぁ!?

 行くぜぇ! 必殺っ! 最卑漢発素流撃(モヒカンハッスルげき)

 ソリャソリャソリャソリャソリャッ! ソリャーッ!」


 動画を早送りしたかのようにスピードを上げ、猛烈な勢いで釘バットを振り回す海賊リーダー。

 数々の戦いの中で編み出した必殺技であり、人間に出せる限界に近いスピードで繰り出されるその猛攻は、武術の達人であっても簡単には見切れない攻撃であろう。

 ……そう。()()()()()()()()()


 だが、エリザベスXはナーロウ博士が生み出した高性能アンドロイドなのだ。

 そもそも生身の人間とは基礎スペックが違いすぎるというのに、更にナーロウ博士のこだわりで、戦闘技術もインストールしてあるのだ。最初から海賊程度が接近戦で勝てる相手ではない。


 リーダーの連続攻撃を、ダンスのような優雅なステップで回避し続けるエリザベスX。

 その顔は、明らかに海賊のリーダーを嘲笑っていた。


 「確か、貴方は『いつまで避けきれるか』などと言っていましたが……

 この程度でしたらいつまででも避け続けられると思いますわよ? それに……」


 突然ステップを踏むのを止め、立ち止まったエリザベスX。

 その脳天に、釘バットが猛スピード向かって行くが……

 エリザベスXは、それを片手で楽々と受け止めた。


 「……避けなくとも、素手で受け止められますわよ?」


 「なっ……クソッ! 化け物かっ!」


 「まあ、淑女に向かって化け物とは失礼ではなくて? 私は化け物などではありません」


 エリザベスXは、右手で受け止めていた釘バットをグッと引っ張った。

 勢いよく引っ張られた事で前のめりになったリーダーの喉元に、左手に持っていたフルーレの先端がトンッ、と当てられる。


 「私は『悪役令嬢』ですわ」


 彼女が冷たい微笑みを浮かべながらそう言った直後、フルーレから高圧電流が流し込まれた。


 「ばばばばっ、ばびぶべっ……ぼーぼぼっ!」


 激しく感電して、その場に倒れる海賊のリーダー。

 周りでその戦いを見ていた部下たちは戦意を喪失し、全速力で自分たちの宇宙船に向けて逃げ出した。

 

 「リ……リーダーがやられた! 無理だっ! 勝てねえ! 逃げろぉー!」

 「ひぃ~! 殺されるぅー!」


 我先にと宇宙船に駆け寄った海賊たち前で、扉が開かれた。

 これで逃げきれる! と安心し、中に転がり込んだ海賊たちが船の中で見たものは……


 「「いらっしゃいませ!」」


 営業スマイルで銃を構えるシェフとミリィちゃんであった。

 更にその周りには十体以上のゴブリンロボットたちもいる。


 当然シェフとミリィちゃんも殺人はできないので、銃の中身は殺傷能力の無いスライム弾なのだが、海賊たちからは弾丸の種類など分からない。

 自分たちの宇宙船が制圧され、銃を突きつけられているという状況に心が折れたらしく、全員が武器を捨てて降伏し、戦いは終わった。



 研究所の中から、カメラで戦いの様子を見守っていたライトは、安堵の息を吐いた。

 戦うまでは不安を拭いきれない気持ちであったが、いざ終わってみれば、損害はゴブリンロボットが数体破壊されてしまった事と、エリザベスXの登場シーンの演出のために無駄遣いしたエネルギーくらいであった。


 「エリザベスXって本当に強かったんだな。……でも、あのアニメやゲームのボスキャラみたいな登場演出って必要ないよね?

 ……あれ? もしかして、出撃する時のエネルギーが足りるかどうか、とか言ってたのは、あの演出に使う分のエネルギー!?」


 ライトは護衛として後ろに立つクッコローネRに問いかけたが、まだ彼女は最低限の戦闘以外の機能は休眠中なので、当然返事が帰ってくることはなかった。




 ーーーー


 

 「約束通り片付けてきましたわ。さあ、ここからは貴方の仕事ですわよ」


 そう言ってエリザベスXは実弾入りのマシンガンをライトに手渡した後、縛って転がしてある海賊たちをビシィ! と指差して、冷たく微笑みながら言った。


 「フフフッ……やっておしまいなさい!」


 「いやいや! やらないよ!?」


 「では照準を彼らに向けたまま、ついうっかり引き金を引いたりする予定はありませんか?」


 「そんな予定ないよ! というか、『ついうっかり』って予定を組んでやる事じゃないよね!?」

 

 ライトは、エリザベスXの悪ふざけだと思いながらツッコミを入れていたが、実は彼女の方は半分以上は本気で言っていた。

 

 もちろん推奨はされている事ではないが、宇宙海賊を殺してしまっても罪に問われることはほぼ無い。

 しかも今回は単に海賊だというだけではなく、自分たちの存在を知っている邪魔者でもある以上、エリザベスX的には、殺す事に躊躇いなど無いのだ。

 むしろ、今後のためには居なくなってくれた方が都合が良いくらいである。


 彼女としては可能ならばさっさと処分してしまいたいのだが、自分は殺人ができないようにプログラムされているので、代わりにライトがやっちゃってくれれば面倒が減ると考えていた。


 「そうですか……。私は具体的な殺人教唆は出来ませんから、これ以上強くは言えませんし……さて、どうしましょうか。

 もう少しエネルギーがあれば他の手段もあるのですが、残念ながら僅かに足りません」


 「ねえ……足りないエネルギーが『僅か』だっていうなら、もしかして君が照明を使ったり声や足音にエコーをかけたりBGMを流したりしなければ足りたんじゃあ……」


 明らかにエネルギーの無駄遣いをしていたエリザベスXに対して、ライトはツッコミを入れたが、彼女は「分かってませんわねぇ」と言ってやれやれと首を振る。


 「あれについては仕方がありませんわ。あれは、所謂(いわゆる)ノブレス・オブリージュ……高貴なる者の義務というものなのです。

 例えエネルギーが不足していても、登場シーンの演出を手抜きする事など許されませんわ」


 「……うん。君と俺の『高貴なる者の義務』の認識が違っている事は理解したよ」



 ライトが何かを諦めたような空虚な微笑みを浮かべた、その時。

 海賊の宇宙船の積み荷を確認していたシェフが、大きな何かを抱えて歩いて来た。



 「良いものを見つけたぞ、エリザベスX。これを見てくれ。……こいつをどう思う?」


 「すごく……大きいですわね」


 それは宇宙船などに使う大型のバッテリーであった。

 そのままでは型が合わないが、少し改造すれば研究所の施設にも流用できるだろう。


 「これで、ある程度の補給はできそうですわね。

 エネルギーに余裕ができれば、穏便で人道的な方法で海賊たちへの対応ができますわよ」


 (うわぁ……なんだろう。エリザベスXの口から『穏便で人道的』とかいうワードが出てくると、凄く胡散臭く感じるなぁ……)



 ライトは微妙な表情になりながらも、とりあえずマシンガンでモヒカン大虐殺をしなくてもよくなったらしいという事には、ひとまず安心するのであった。



 


 


 


 


 


 


 

次回も金曜日の投稿です。

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