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悪役令嬢型アンドロイド・エリザベスX ~ ティータイムは宇宙要塞で ~  作者: 鷹山 涼
5章 進撃の社長 ~ アタック・オブ・マエザー ~
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5章 第10話 マエザー、ラノベ主人公になる?

 研究所の西側でエリザベスXがモヒートと戦っていたその頃、東側にも侵入者が訪れていた。

 2機のドローン、それと人型ロボットが1機だ。


 

 ドローンたちが侵入したとき、研究所からは4機のゴブリンロボットが迎撃に出たのだが、飛び道具を持っていないゴブリンロボットと機銃を装備するドローンでは相性が悪く、なかなか接近できないままどんどんダメージを負っていった。


 不利な戦況に焦ったのか、1機のゴブリンロボットが強引に飛びかかった。だがその1機は人型ロボットの持つブレードで斬られて大破してしまう。

 それを見た残りの3機のゴブリンは諦めたのか、転身して逃げだし、廊下の曲がり角の向こうに姿を消した。


 チャンスと見て、侵入者たちは逃げたゴブリンロボットたちを追いかけて曲がり角を曲がった瞬間、3本の矢が打ち込まれ、回避の遅れたドローン1機が撃墜された。


 廊下の先には紫色に光るクロスボウを握るスティーブン舞倉の姿があった。

 彼はすぐに次の矢を装填し、再び侵入者たちにそれを発射する。

 そのクロスボウは1本しか矢が装填されていないように見えるのに、なぜか同時に3本の矢が発射される不思議なクロスボウで、残りのドローンも回避しきれずに撃墜された。


 元々スティーブン舞倉は普通の弓を使っていたが、以前ドローンたちと戦った時に威力不足を感じたため、今回の戦いに備えて新武器を用意していたのだ。


 だが、ドローン相手には確かに効果的だったそれも、人型ロボットの方を倒すには威力が足りなかったらしく、何度射っても装甲の表面までしかダメージを与えられない。

 

 このまま長期戦になるかと思われたその時、人型ロボットの足元でカチリという音が鳴り、次の瞬間、壁の一部がピストンで押し出されてきてロボットの頭に叩きつけられた。

 実はその廊下には踏むと反応する感圧板タイプのトラップが仕掛けられていたのだ。


 とはいえ相手も戦闘用ロボットだ、それだけのダメージで機能停止はしない。

 だが、そこにクロスボウから剣へと持ち変えたスティーブン舞倉と、先ほど逃げた3機のゴブリンロボットが合流して一斉攻撃をしかけ、一気に撃破した。



 戦いが終わったあとも、しばらく周囲の様子を探っていたスティーブン舞倉だったが、もう敵がいないことを確認すると、カクカクした動きで喜びのダンスを踊り始めるのであった。



 これで東側、そしてモヒートを撃破した北側は戦いが終わった。



 そして研究所の西側……。

 こちらは今、ライトを乗せた船と、それを追うマエザーの船が入ってきたところだった。



 ライトの乗っている船を操縦している乗組員はアンドロイドばかりのため、人間であるマエザーを攻撃することは出来ず、マエザー側も何度か放った攻撃が全て五所川原Jのバリアによって無効化されたため、今は無駄な攻撃はしていない。

 

 互いに攻撃をしていないため、今は敵同士の船が大人しく並んでいるという奇妙な状況になっていた。



 ーーーー



 「ライトく~ん、船から降りたら~、研究所の奥まで逃げるわよ~」


 避難を促すエルメスTの言葉に、ライトは頷きつつも疑問を感じた。


 「う、うん。でも、みんな強いし、俺もみんなには及ばないけどパワードスーツがあるし……逃げなくてもどうにかならないかな?」


 宇宙空間で戦うと相手を殺してしまう確率が高いので、空気のある研究所まで敵を誘き寄せるために一度逃げるのというのは納得できた。


 だが、研究所まで来たならもう逃げる必要は無いのではないか?

 この船には五所川原Jと禍流真Wという北斗七星(グローセ・ベーア)の中で戦闘タイプに属するメンバーが二人いて、更に戦闘タイプではないが高性能のアンドロイドであるエルメスTとミリィちゃんもいる。

 その上でライトも実戦レベルの性能を持つパワードスーツを着ているのだから、このまま戦闘しても負けないのではないか?

 ライトはそう思ったのだ。



 「それはダメ」


 だが、その意見はすぐにミリィちゃんに否定された。

 その表情と声にはいつもの柔らかさは無く、心からの強い否定だとわかった。


 ミリィちゃんの迫力に圧されたライトに対して、禍流真Wが呆れたように溜め息をつきながら説明する。


 「やれやれ……理解していないようだな。確かに戦力的には問題なく勝てるだろう。……だが奴らを撃退したところで、お前が傷つけられた時点でオレたちのミッションは失敗なんだ。

 ここにいるメンバーは、お前を無事に安全圏まで避難させる事を最優先として動いている。大人しく避難してくれないと迷惑だ」


 「う……ゴメン。大人しく従うよ」


 ライトが素直に謝罪すると、禍流真Wは「フン……」と小さく鼻を鳴らし、ミリィちゃんはニコリと笑顔になった。


 「ううん、分かってくれたらいいんだよ♪ あっ、到着したね、じゃあこれから船を降りるから、お客さんはちゃんと逃げてね。

 私とエルメスTが前、五所川原Jと禍流真Wが後ろにつくから」



 「……うん、じゃあみんな、よろしくね」


 ライトがそう言うと同時に、船のドアが開かれた。




 ーーーー




 「社長。目的地に到着いたしました」


 「ああ。それでは我々もすぐに突入するとしよう」



 ライトたちが船から降りようとしている頃、そのすぐ隣に並んでマエザーたちも突入準備をしていた。


 「さあ、気合いの入れ所だな。……ああ、そうだ」


 マエザーは、これから始まるであろう戦いの前に婚約者に向けてメッセージを送っておこうと思い、船のコンピューターのメール機能を使用した。



 「ん? 気がつかなかったが2件のメッセージが届いているな。……きっと彼女からだろう」


 1件目を開いてみると、それは思っていた通り婚約者からのメールであった。

 だが、その内容はマエザーが想像もしていなかったようなものであり、それを信じられなかった彼は一度目を擦ってからもう一度見直した。


 だが、やはりその内容は変わらない。



 『マエザーさん。今、どこにいるのですか? 今日は一緒に結婚式場を選ぶ約束だったのに。

 ……分かっています。きっとあなたは、今日もどこかで無邪気な子供の様に、自分の夢を追っているのでしょうね。

 ……私は、夢とロマンを語るあなたの事が好きでした。

 だけど、わたしはもう、自分の夢ばかりを追い続けるあなたについて行くことに疲れてしまいました。

 ……ごめんなさい。あなたとの婚約は無かった事にしてください』



 「なん……だと?」



 あまりの事にマエザーは顔を青くしたが、動揺で全身をプルプルと震わせながらもコンピューターの操作を続ける。 


 「メ……メッセージはもう1件ある! きっと『今のは冗談でした』とかそういうメッセージが書かれているはずだっ……!

 そうに決まっている! そうであってくれ!」


 震える指を動かして次のメールを開くと、それは婚約者からのものではなく、自分の部下である副社長からのものであった。


 望んでいたものではなかったが、業務の全てを任せている副社長からの連絡ということは重大なものなのだろう。

 婚約者の事で動揺はしていたが、副社長のメールも無視するわけにはいかない。

 マエザーはメールを確認した。


 ……そして、マエザーは更に激しく動揺することとなった。



 『留守の間、貴方は会社の全てを私に任せてくださいましたね?

 なので、以前からあったハードパンクグループのゲフー社からの買収に応じる事に致しました。……非常に良い待遇でしたので。

 マエザー社長。……いえ、元・社長。

 この会社にはもう貴方は必要ありません。

 恨むのなら、会社の経営より個人のロマンを追い求めたご自分を恨むとよろしいでしょう』



 「うおぉぉぉ……」



 唸り声を上げながら両手で顔を覆うマエザーに、オールバックの男は恐る恐る尋ねる。


 「あの……今のは、どういった件でした?」


 「……突然に婚約破棄された上に、信じていた部下から『お前は要らない』と会社を追放された件について……だ」


 「ラノベのタイトルですか?」



 ついこぼれたツッコミも聞こえているのかいないのか。

 マエザーは両手で顔を覆ったまま俯いてしばらくプルプルと震えていたが、その数秒後、顔をバッと上げると大声で叫んだ。



 「うおおお! 全員、突入するぞ! 僕にはもう守るものは無くなった! 栄光を掴むか全てを失うか2つに1つ! 実に分かりやすいじゃないか! アッハッハーッ!」


 マエザーは泣き笑いのような表情でシャウトすると、研究所へと突入を開始した。

 



 ーーーー



 「うわっ……今の笑い声はなに!?」


 「ライトきゅん! 確かにメッチャ気にはなるけど、今は走って! アイツらが追って来てるよー!」



 後ろから聞こえるヤバい笑い声が気になり、つい振り向いてしまったライトに対して五所川原Jが逃げるように促す。

 

 ライトはパワードスーツを使っているため、かなりのスピードで走ることができるが、マエザーたちもパワードスーツを着ているため、条件に大差は無い。

 あまりゆっくりしていては追いつかれてしまうだろう。


 「あ、ゴメン!」


 ライトは再び走りだし、先頭にいるミリィちゃんの後を追い、その先にある部屋へと飛び込んだ。



 「ああ、ライト卿……無事な姿を見ることができて安心したよ」



 その部屋にいたのはクッコローネRだった。

 ライトの顔を見て、本当に安心したように微笑んでいる。

 その表情は穏やかだが、部屋に散乱する残骸の様子から、彼女がついさっきまでドローンたちと戦っていたのがわかる。


 「うん、みんなのお陰で無事だよ。クッコローネRの方は大丈夫? 怪我は無いの?」


 「フフフッ。心配して貰えるのは嬉しいが、私はこの程度の相手に不覚は取らないさ。……さあ、ここは私に任せて、ライト卿は奥へ避難するといい」



 こうして話している時にも後ろから聞こえるマエザーたちの足音は近づいてきている。

 もたもたしていてはみんなに余計な迷惑がかかると分かっているライトは、「ありがとう!」と一言だけ礼を言って奥へと進んで行った。

 


 そして、ライトたちと入れ違うようなタイミングで、今度はマエザー達が部屋に駆け込んで来た。

 

 「この部屋か! ……むっ」


 

 ヤケクソ状態で無警戒に追いかけて来ていたマエザーだが、部屋の中心に立つクッコローネRの姿を見て冷静さを取り戻した。

 マエザーたちを睨み付けるクッコローネRの視線には、それだけの威圧感があったからだ。



 「侵入者たちよ、ここで引き返すのならば追いはしない。だが……」


 スッ、と剣を持ち上げ、それをマエザーの方へと向ける。


 「これ以上進もうとするのならば、この姫騎士型アンドロイド・クッコローネRが相手を務めよう!」


 

 「やれやれ、たった1人で僕らを相手にするつもりとは、勇ましいお嬢さんだな。……とはいえ相手はナーロウ博士のアンドロイド。油断はできん、全員でかかるぞ」

 


 そう言って一歩前に出ようとするマエザー。 だが、それよりも先にオールバックの男が前へと進む。

 そしてそれに続いて彼の部下である4人の傭兵達も前に出る。

 


 「……オレ達がアイツの相手をするんで、社長は先へ進んでください」


 思わぬ言葉に、マエザーは驚いた表情を浮かべた。


 「そんなに頑張っていいのかね? 今の僕はもう大会社の社長では無いんだ。約束の報酬を払うくらいの貯金はあるつもりだが……それ以上のボーナスを出せるかは分からないぞ?」


 肩をすくめながらジョークでも言うような声でそう言ったマエザーに、オールバックの男は片方の口元だけを僅かに上げて小さく笑いながらジョークのように返す。


 「いいえ、なんとしてでも色を付けてたっぷりとボーナスを払ってもらいますよ。……そのためにも社長にはこの研究所を手に入れて、もっとビッグになってもらわなきゃ困ります。

 だから行ってください。……オレ達にボーナスを払うためにね」


 「……そうか。フフッ、ならば頑張らなくてはいけないね。……よし、ここは君たちに任せたぞ!」


 マエザーはそう言って扉に向かって駆け出した。

 


 「進ませる訳にはいかん!」


 クッコローネRは猛スピードで扉の前へと移動し、マエザーの前に立ちはだかった。

 マエザーは完全に道を塞がれたように思われたが……


 「邪魔だよ、嬢さん!」


 クッコローネRに向かってオールバックの男が飛び蹴りを放った。

 

 「むっ!……だが!」


 クッコローネRは上半身を大きく反らしてそれを避けると、右手の剣で反撃を行う。

 もちろん斬り殺すわけにはいかないので、狙いはパワードスーツだ。

 彼女の腕ならば中の人間を傷つけずにパワードスーツだけを破壊することもできる。


 「させるかよ!」


 男は動いた。だがそれは剣を避けるための動きではない。

 なんと、彼は自分に向けて振るわれる剣の方向へと大きく踏み込んだのだ。


 「なっ!? ……くっ!」

 

 そのままなら首を斬り飛ばしてしまうコースだ。確実に殺してしまう。

 クッコローネRは必死に自らの剣の勢いを止める。


 彼女は剣を止めることには成功したものの、無理な体勢でブレーキをかけたため、敵に隙を晒すことになってしまった。


 「今だ!」


 オールバックの男が合図すると、部下の男たちが一塊となって一斉に体当たりをしかけて来た。

 体勢を崩した隙にパワードスーツを装着した4人の男たちが突進してきたのだから、流石のクッコローネRも押されてしまい、扉の前から動かされてしまう。

 そしてその隙にマエザーと、その部下2人が扉を抜けて行ってしまった。


 「不覚っ……!」


 クッコローネRは表情を歪めながらも自分を押さえ込もうとする男たちを振り払い、すぐさま体勢を立て直した。



 「……くっ、してやられた。まさか剣を避けるのではなく、剣に当たりに来るとは思っていなかったぞ」


 クッコローネRのその言葉は悔しそうではあったが、明らかに称賛の色も込められていた。


 「自ら死地に飛び込むその覚悟……敵ながら見事だ。貴公の名を聞かせてもらえないだろうか」


 「……オレの名か……」


 オールバックの男は呟いた。

 彼は傭兵として活動し始めてから、他人に本名を名乗っていない。

 ……だが、なぜか今は、目の前の敵に自分の名を名乗ってみたい気持ちになった。


 (フッ、これもロマン好きな雇い主の影響かね……)


 一瞬だけ口元を緩め、すぐに真顔に戻ると、男は自分の名を名乗る事を決めた。

 他人……ましてや敵に対して名乗るなど、何年ぶりのことだろうか。



 「オレの名はオール。……オール・バックマンだ」



 ……勿体ぶって名乗ったが、その名はほぼ見たまんまであった。

次回も金曜日の投稿予定です。

……ですが遅れたらごめんなさいね。頑張るつもりですけど、なんかまだ執筆ペースが戻らないんです……。

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