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悪役令嬢型アンドロイド・エリザベスX ~ ティータイムは宇宙要塞で ~  作者: 鷹山 涼
5章 進撃の社長 ~ アタック・オブ・マエザー ~
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5章 第9話 悪役令嬢VS宇宙海賊3 ~ ラスト・オブ・モヒカン ~

やっと完成した……。

予定を2日オーバーしちゃいましたね。遅れてすみませんでした。

 「ふーむ……船の方もモヒカン男の方も狙い通りにここへ向かって来ているのじゃ。

 ふっふっふっ、この様子ならきっと妾たちがわざとおびき寄せたなんて考えてもいないのじゃー」


 モニターで戦況を確認していたノジャロリーナSは、ライト達が乗った船を追うマエザー、そして逃げたフリをしたエリザベスXを追うモヒートの動きを見てニンマリと笑った。



 「……いや、敵もそこまでバカではないだろう。だが奴らの狙いはこの研究所を奪取する事だ。罠を疑っていたとしても、それでも中に入らない訳には行かないのだろう。……あるいは罠があっても突破する自信があるのか」


 そう言いながら一つの人影が部屋に入って来る。

 それは多くのドローンやロボットを破壊して、つい先程帰ってきたばかりのクッコローネRであった。


 「のじゃ? クッコローネR、さっき戻って来てメンテナンスルームに行ったばかりなのに、もう大丈夫なのじゃ?」


 「ああ、問題無い。先程の出撃ではエネルギーこそ多目に消耗したが、肉体的な傷は受けていなかったからな。補給もしたし、もう戦える。

 ……さて、私はこのまま防衛に回るつもりなのだが、どこを守れば良いだろうか?」


 尋ねられたノジャロリーナSは、一度モニターを見て、戦力の配置状況を確認した後、クッコローネRに指示を出す。


 「うーむ……スティーブン舞倉がいる東エリアとシェフがいる北エリアは多分なんとかなるのじゃ。それに比べるとゴブリンロボットしかいない西が手薄じゃから、そっちへ向かってほしいのじゃ」


 「西側か、承知した。では早速向かおう」


 そう言って部屋から出ていくクッコローネRの背中を見送ってから、ノジャロリーナRは再びモニターで敵の位置を確認する。

 


 「エリザベスXはあのモヒカン男を北側に誘導したのじゃな。あっちにはシェフがいるから、合流すれば戦力としては万全なのじゃ。

 ……というかそもそもエリザベスXだけでも荒くれ者の一人や二人に負けるとは思えないのじゃ。となると現状で一番戦力が不安なのは……どう考えても妾の所なのじゃ」


 ノジャロリーナSは、自分以外誰も居ない部屋をくるりと見渡した後で小さく呟いた。


 「幸いこの部屋は研究所でも特に頑丈な部屋の一つじゃから引きこもっていれば安全なのじゃが……うう……適材適所だというのはわかっているのじゃが、我ながら情けないのじゃ~」


 ノジャロリーナSは施設のレーダーや防衛装置などを誰よりも上手く扱う事ができる。

 そのため無理に苦手な戦闘をするよりも安全圏から仲間をバックアップする事が主な役割となり、それは前衛に劣らない立派な仕事なのだが、やはり皆が戦うときに自分だけ部屋にこもっている事を申し訳なく感じていた。



 「うむむ……妾にできる事は少ないが、せめて、皆の無事を祈るのじゃ……」



 ーーーー


 

 研究所内部にはすでに二機のドローンが侵入していた。

 本隊が突入する前の偵察という役割を与えられたこの二機は、その任を果たすため周囲の索敵を開始する。

 

 ピピッ!


 一機のセンサーが何者かの反応を捉え、そちらにカメラを向ける。

 ……そこに居たのは、真っ白な服に身を包んだ料理人。シェフことマスター・アジヤであった。


 「いらっしゃいませ」


 シェフはドローンに対して一礼した後、一気に駆け寄り、拳骨のように上から下へと拳を降りおろす。


 回避が間に合わず、直撃を受けたそのドローンは、勢いよく床に叩きつけられた。

 その時点ではまだ機能停止していなかったが、シェフが更に二度・三度と拳を降りおろすと、やがてそのドローンは破壊され、完全に機能を停止した。


 「……こちらは『侵入者のたたき』になります」


 呟いたシェフに、もう一機のドローンが銃口を向け、発砲する。


 「店内ではお静かにお願いいたします」


 シェフはフライパンでその銃弾を防ぎながら接近し、グッと拳を握る。

 

 「そちらのお客様は『季節の正拳突き・三種盛り』ですね?」


 そしてドローンに三連撃を叩き込んで破壊した。



 「……ご注文はお揃いでしょうか? ごゆっくりどうぞ」


 シェフは破壊されて床に転がるドローンの残骸に、再び一礼した。


 「……む?」


 新たな反応をキャッチしたシェフが後ろを振り返ると、そこにはバイクに跨がりながらブレードを構えるロボットがいた。


 その姿を見たシェフは、気を引き締める。

 その戦闘ロボットはクッコローネRにとっては何てことのない相手であったが、シェフにとってはそうではないのだ。


 シェフは高性能ではあるが、本来は戦闘アンドロイドではない。対する相手は、量産機とはいえ純粋な戦闘ロボットだ。

 勝てないとは言わないが、無傷とはいかないだろう。


 (見たところ近接戦闘タイプだな。遠距離で戦うべきか。……あまり得意ではないんだが)


 シェフは懐のハンドガンに手を伸ばす。

 シェフは武器の使い方は一応インプットされてはいるが、射撃能力は低い。

 だが、苦手であっても大きなブレードを構えている相手に接近するよりはましだろう。


 シェフが覚悟を決めて銃を構える。

 だがその直後に閃光が走ったかと思うと目の前のロボットは煙を吹いて動きを止め、ゆっくりと傾いてゆき、床に倒れた。


 そして残骸と化したそのロボットの後から、フルーレを手に持つエリザベスXが姿を現した。


 「無事でしたか? シェフ」


 「エリザベスXか。助かったよ、今の相手は少し面倒そうだった」


 「お気になさらず。……そんなことより、あのモヒカン男を誘導致しました。もうすぐここにやって来るでしょう。

 あの男は私が片付けますので下がっていてくださいますか?」


 「わかった。じゃあ奥の部屋で待機させてもらうが……その前に何かやっておくことはあるか?」



 そう尋ねるシェフに、エリザベスXは、「ふむ……そうですわね」と一瞬考えた後、口を開いた。



 「それでは紅茶を一杯用意していただけますか? 大至急です」


 「あ、ああ。かまわないが……このタイミングで紅茶?」



 予想外の答えを不思議に思ったシェフであったが、飲食物を用意するのは彼の本業だ。

 言われた通りに大至急で紅茶を用意して、それをエリザベスXに手渡すと「ごゆっくりどうぞ」と一礼してから奥の部屋へと下がって行った。



 ーーーー

 

 

 モヒートは釘バットを構えながら辺りを見回した。


 「ドリル女を追っているうちに建物の中まで来ちまったな……。それにしてもあのドリル女、どこへ行きやがった? あまり離れてはいねぇはずなんだが……」



 「私ならここにいますわよ?」



 ハッ、と声がした方を振り向くモヒート。

 そこにはソファーに座ってティーカップを口元に運ぶエリザベスXの姿があった。

 戦闘中だというのに優雅に紅茶を飲む姿には、妙な大物オーラが漂っていた。


 ……ちなみにその紅茶は先ほどシェフに急いで用意させたものだ。

 どうやらエリザベスXは、この登場シーンの演出のためにわざわざシェフに紅茶を用意させたらしい。



 「居やがったかドリル女ぁー! やっと追いついたぜぇ、ヒャッハー! 覚悟しやがれ、バラバラにブッ壊してやるぜぇ!」


 「あら……あのマエザーという男は私達を手に入れるのが目的なのですから、バラバラに壊しては任務失敗になると思いますわよ?

 フフッ……ですが、その心配は必要ありませんわね。そもそも貴方に私を破壊する事はできませんから」


 「ああん? オレにケツを向けて逃げ回ってたクセに、何を言ってやがる。笑わせてくれるぜぇ、ヒャッハー!

 しかもこうしてオレに追いつかれてんだから、所詮テメエはその程度って事だぜぇ!」


 挑発するようにそう言ったモヒートに対し、エリザベスXは小馬鹿にしたように笑った。


 「オホホホホッ! まだ気づいていないのですか? 貴方が追いついたのではなく、私が追いつかれて差し上げたのですわよ?

 手を抜かれている事にも気がつかないとは、所詮貴方はその程度という事ですわ」


 「んだとぉ? 負け惜しみ言いやがって! 上等だぁ! 二度と生意気な口を叩けなくしてやらぁ! ヒャッハー!」


 モヒートは愛用のヒート釘バットを振り上げ、エリザベスXに飛びかかる。


 「あらあら、それは困りますわね。生意気を言えなくなってしまっては、悪役令嬢の沽券に関わりますわ。

 ……ですから抵抗させていただきますわね?」


 不敵に笑い、エリザベスXは敵を迎え撃つためにソファーから立ち上がった。

 襲いかかるモヒートのスピードはかなりのものだったが、それでもエリザベスXにとって脅威になるレベルではない。


 「食らいやがれぇ!」


 「お断りいたしますわ」


 彼女は激しく振り下ろされる釘バットを一撃、二撃と回避した後、持っていたティーカップをモヒートの顔面に投げつけた。

 モヒートはフルフェイスのヘルメットを被っているため、ティーカップをぶつけられてもダメージにもならないはずなのだが、つい反射的に腕で庇おうとしてしまった。


 「迂闊ですわね」


 その隙を見て、エリザベスXはいつの間にやら握っていたフルーレをモヒートの脇腹に押しつけてスイッチを入れた。


 バチィッ、と青白い閃光が走り、並みの人間ならすぐに気絶するほどの電流が流れた。

 だがモヒートは怯むこともなく釘バットを振り回す。


 「効かねぇぜ! ヒャッハー!」


 エリザベスXはバックステップでそれを回避しながら距離を取る。


 「……おや。これに耐えるとは、そのパワードスーツは以前着ていた宇宙服よりも頑丈なようですわね」


 「おうよ、コイツはマエザーの旦那が用意してくれた最新モデルだぜ! そう簡単に倒せると思うなよ!」


 以前に自分を気絶させた電流をまともに食らってもダメージが無かった。

 そのことで自信を持ったモヒートは、ドヤ顔をしながら更にアグレッシブな攻撃を仕掛けてくる。


 エリザベスXはモヒートの猛攻を避け続けながら考える。


 (ふむ……やはり電流対策をしていましたか。一度私の武器を見ているのですから当然と言えば当然ですわね。それに動きも以前よりずっと速いですし、なかなか良い装備をしているようです)



 過剰な攻撃をせずに人間を無力化するには電流で気絶させるのが手っ取り早いが、パワードスーツの装甲のせいで電流が肉体まで届かない。

 

 相手の肉体に電流を届かせるには装甲を破壊すれば良いが、頑丈な装甲を破壊するには相応の威力が必要である。

 だが、あまり強力過ぎる攻撃をしては中の人間が無事では済まない。

 

 このせいで以前の戦いではマエザーに思わぬ苦戦をする事となったのだ。


 (ですが……一度苦戦したからこそ、キチンと対策は用意してありますわ)



 エリザベスXは攻撃を避けながら、少しずつ移動してモヒートを誘導し、立ち位置を調整してゆく。

 自分が有利だと思い込んでいるモヒートは、エリザベスXのそんな動きに疑問を感じることもなく、ただ相手を追いかけ続ける。


 「ヒャッハー! 追いかけっこは終わりだぜぇ!」


 「……ええ。終わりにいたしましょう」


 パチンとエリザベスXが指を鳴らすと天井のスプリンクラーが作動し、その真下にいたモヒートに、勢いよく液体が噴射された。


 「うおっ!? なんだこりゃ!? 体にまとわりついて……」


 ねっとりしたその液体はモヒートの全身を包み込み、時間と共に更に粘性を増してゆく。

 内緒はもがいていたモヒートだったが、すぐに完全に動けなくなってしまった。



 「オホホホホッ、お気に召しましたか? それはエロイム……衣服のみを溶かす特別製のスライムですわ。あまり数が残っていなかったのですが、今回の戦いのためにエルメスTに量産してもらいました」


 「衣服を溶かすだと!? だ、だがこのパワードスーツが簡単に溶かされるはずが……」

 

 モヒートのその言葉が終わる前に、エロイムに包まれていたパワードスーツがシュウシュウと音を立て始めた。

 ナーロウ博士の技術と知識と性癖の結晶であるこのエロイムは生物を傷つけることはないが、衣服であればそれが頑丈なパワードスーツであっても溶かすのだ。



 「うおおっ!? マジかよ! 畜生っ!! 動けっ! 動きやがれー!」


 不味い状況だと察したモヒートは、咄嗟にパワードスーツの出力を限界まで高めてエロイムから脱出を試みる。

 パワーを振り絞ったモヒートは少しずつエロイムを引き剥がし、脱出まであと一息という所まで行くが……。


 「足掻きますわねぇ。元気なのはよろしいですが、諦めが悪すぎるのは見苦しいですわよ?」


 エリザベスXは冷く嘲笑うように言い放ち、パチンと指を鳴らす。

 すると、床や壁から触手のようなものがズルリと顔を出し、エロイムから抜け出しかけていたモヒートの手足に絡みついた。


 「五所川原J監修・エルメスT制作のコラボ発明品、メタルワームですわ。これは抜け出せないでしょう?」


 「うっ……うおおぉ! は、離せぇ!!」


 なんだか卑猥な動きで絡みついてくるメタルワームに必死に抵抗するモヒート。

 だが、エロイムに溶かされながらフルパワーを出していたことで負担がかかっていたせいか、徐々にパワードスーツの出力が落ちてゆき、やがて抵抗らしい抵抗もできなくなって、ついには宙吊りにされたまま動けなくなってしまった。


 そしてそのままエロイムにパワードスーツを溶かされてゆく。



 ……絡みつく触手のようなモノに宙吊りにされ、ドロドロの液体に衣服を溶かされて悶えるモヒカンの大男……一体誰が得するのだろうか。




 2~3分ほど後、パンツ一丁の男が床に転がっていた。



 「あら、下着は残ったようですわね。……まあ、全裸になられても困りますから丁度良かったですわ」


 「ぐっ……畜生がぁ……」


 「ですがパワードスーツ無しでは、もう戦えませんわよね? 諦めて大人しく投降することをオススメいたしますわ。

 生身の人間では私に一撃当てることも不可能でしょう」


 「ふざけるんじゃ……ふざけるんじゃねえ! こんなふざけた決着が認められるかよおぉ!」


 モヒートは床に落ちた釘バットを拾い上げ、再びエリザベスXに殴りかかる。

 彼の身体能力は人間としてはかなり高い。トップアスリート並みと言っても良いレベルだ。


 だが、所詮は生身の人間。エリザベスXから見れば当たる筈もないスローな動き……そのはずであった。


 「でりゃあああ! 燃えろ! オレのモヒカン魂ぃぃぃ!」


 「……っ!」


 モヒートの渾身の一撃は、浅くではあるがエリザベスXの左肩に当たったのだ。 

 エリザベスXはすぐにフルーレをモヒートの首筋に押し当て、電流を流した。

 

 「へへへっ……当てるのは不可能とか言ってやがったよなあ? 当ててやったぜ……ヒャッ……ハー……」


 モヒートは気を失い、倒れた。

 戦いはエリザベスXの勝ちであったが、彼女の表情は晴れない。


 「まさか一撃食らうとは思いませんでしたわ……」


 もちろん彼女は全力で動いていた訳ではない。とはいえ生身の人間が理論的に出せる最速の攻撃でも避けられるスピードでは動いていた。

 ……だが、そのスピードでも避けられなかった。



 「……最後の一瞬、人間の限界を突破したということですか。……お見事でしたわ」



 エリザベスXは、自分に人間の可能性という物を見せたモヒートに、心からの称賛を送った。

 意識を失っているモヒートも、どこか誇らしげな顔をしているように見える。


 「本当に、本当にお見事でしたわ。ですが、それはそれとして……」


 エリザベスXはゴソゴソと懐から何かを取り出しながら、倒れたモヒートに近づいた。


 「よくも私の体に傷をつけましたわね。……なんですかそのドヤ顔は? まったく気に入りませんわね。……こうしてやりますわ」


 エリザベスXは油性マジックでモヒートの額に『肉』と書いた。

 そしてついでとばかりに鼻の下にナマズヒゲも付け足した。

 アンドロイドは人間に過剰な攻撃はできないが、イタズラくらいはできるのだ。


 エリザベスXは、『アンドロイド』としては生身の人間が自分に攻撃を当てたということを心から称賛しているが、『悪役令嬢』としては自分に攻撃を当てるという無礼な行為を不快に思っていたのだった。



 「……ふう、これで少しはスッキリしましたわ」


 エリザベスXはモヒートの目に『心眼』と書いた布を巻き付けたところで満足したようだ。



 「戦いが長引いていたようだが加勢が必要か?…… ……む……これはどういう状況だ?」


 様子を確認しに来たシェフは、気絶したパンツ一丁のモヒカン大男がマジックで落書きされている惨状を見て困惑するのだった。

最近はどうにも筆が遅いです……。

すでに2日オーバーしてしまっている状態なので、次回は多分今週の金曜日には間に合わないと思います。

なので一週休ませてもらって、次回は31日の金曜日の投稿にさせてもらいますね。

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