4章 第6話 ブラックマーケットで買うものと言えば?
周囲の景色は次第にサイバーパンク映画の裏通りのような光景に変わっていた。
地面から飛び出したパイプからは蒸気が吹き出し、壁には何を表しているかも不明な謎のメーターが、たくさん付いている。
「……なんか一気に別の世界に来たみたいだなあ、さっきの場所よりも治安が悪そう。
……でも、確かにこれはジャンク屋がありそうな雰囲気だよね」
「フフッ、同感ですわ。その辺りの物陰でよろしくないクスリや違法改造銃なども売っていそうですわね。
まあ、どちらもエルメスTなら作れますから、わざわざ買う必要はありませんが」
(あ、やっぱり作れちゃうんだ)
予想はしていたが、エルメスTはかなりヤバいものも作れるようだ。
だが、今、ライトの横で散歩でも楽しむかのようにニコニコ笑顔に軽やかな足取りで歩いている姿を見ると、そんなヤバいアンドロイドには見えない。
まあ、でかい釜を背負ってニコニコしている姿はある意味ヤバいが。
「あ~、見~つけた~。あのお店でしょ~?」
ピョンピョンしながらエルメスTが指差した先には、ジャンク品の並ぶ薄暗い店がある。
合法と非合法の間で反復横飛びしていそうなアングラ感が漂うその店の入口にある看板には、手書きの雑な文字で、
『ジャンク以外の買い取り・物々交換にも応じます』と書いてあった。
「ああ、きっとここだね。入ってみよう」
足を踏み入れてみると、奥にはタバコをくわえながらダルそうに椅子に座っているの男性がいた。 このジャンク屋の店主であろう。
接客態度は悪いが、このコロニーではこれくらいの態度はザラだろう。
ライトと目が合うと、男は「ああ、らっしゃい」と言って店内に招き入れる。
店内に並ぶ機械のパーツを見てもライトには価値が分からなかったが、エルメスTは、「まあ~っ!」っと口を大きく開けて驚きの表情を浮かべた。
「エルメスTがそんなに驚くって事は、なんか凄いお宝でもあったの? ……俺にはよく分からないんだけど」
「お宝っていうのとは少し違うけど~、私たちにとっては~、価値があるわね~」
最初はエリザベスXもエルメスTの興奮の理由が分からなかったようだったが、改めて商品を確認して何かに気づいたらしく、「ああ」と声を出して頷いた。
「そこの棚に並んでいる物は、研究所に使われている物と同世代の物ですね。
この型式のパーツならば、多少のメンテナンスをするだけですぐに研究所の予備パーツとして流用できますわ」
今まで、海賊船・マエザーの船・ライブゲート社の船などの積み荷から手に入れたパーツは、研究所の機械とは規格が合っていなかったため、パーツ交換する場合は形やサイズを調整しなくてはいけなかったのだ。
もちろんエルメスTやスティーブン舞倉ならパーツの形を調整するくらいは簡単な事ではあるが、それでもパーツ交換の度に形をいじるよりは、すぐに使えるパーツがある方が手間が省けるのは確かである。
とりあえずは買うかどうか保留にして商品をざっと見て回ったが、結局それ以上に欲しいものがなかったため、パーツ……とくにサイズの調整が面倒な精密部品を中心に、いくつか買うことに決めた。
あくまでこの店はジャンク屋のため、まだ動くものも完全に壊れたものも雑に混ざっているのだが、エリザベスXとエルメスTにとってはパーツの状態を見分ける事は簡単なことだ。
うまく質の良い物だけを選び、支払いも現金ではなくエメラルドでの物々交換で済ませたため、手元にそれなりの現金を残す事もできた。
ライトたちにとっては良い取引だったと言えるだろう。
「さて、じゃあ一度シェフとミリィちゃんの屋台に戻ろうか」
店から出ようとライトたちが出入口に近づいたその時、入れ違うようなタイミングで店に入って来た男がいた。
上下共に白のスーツの所々に金の糸で刺繍をし、ボタンの一つ一つに宝石をあしらった成金趣味のファッションをした中年だ。
ライトは横にズレて男に道を譲ったが、男は礼を言うどころかライトの方を見ようともしなかった。
男の態度は悪いが、ライトは別に大して気にもしなかった。
……だが、その直後にその男に付き従って店へと入って来た人物を見て、ライトの顔色が目に見えて変わることになった。
男に付き従って店へと入って来たのは、犬系の獣人少女型のアンドロイドであった。
……だがその右腕は不自然にダラリと下がり、関節パーツが壊れていることが一目で分かる。
ぎこちない歩き方と歩く度にやけに大きく響く駆動音を考えると、おそらく足も故障しているのであろう。
そして、犬系獣人型である事を示すその犬耳も、片方がちぎれていて左耳しか残っていない。
男はそのアンドロイドをグイッと引き寄せると、ジャンク屋の店主の前へと連れて行く。
「おい、店主。コイツを買い取ってくれ」
「そりゃ売ると言うなら買い取るけど、見たところまだ修理はできそうだぜ?」
「かまわん。新しいのを買うつもりだからコイツはもういらん。
分解しても良いから、使えるパーツだけでも買い取ってくれや。……ああ、分解するにしろそのまま売るにしろ、記憶は消去しといてくれよ」
「っ……!?」
その会話を聞いていたライトは自分の胸に、怒り・悲しみ・困惑をごちゃ混ぜにしたような感情がグルグルと渦巻くのを感じた。
「ライト君~、大丈夫~?」
ライトの顔色が悪い事を心配してか、その顔を覗き込むエルメスTに、ライトは「……大丈夫」と言ったあと、言葉を続けた。
「……ねえ、エルメスT。君ならあの子を治してあげられる?」
「んー、あの子~? ……うん、道具があれば~、難しくはないと思うわ~」
その答えを聞くとライトは、すがるような目でエリザベスXを見つめる。
「あの子を……買い取ったりできないかな?」
「ライト・ノベル、貴方は…………いえ、なんでもありませんわ」
エリザベスXは珍しく何かを言い淀んでから、一瞬だけ微笑みとも悲しみともつかない曖昧な表情を浮かべた。
だが次の瞬間にはいつもと同じく、他人を小馬鹿にしたような表情に戻る。
「やれやれ……ブラックマーケットで傷だらけの犬耳少女を買いたがるなんて、貴方は異世界ハーレム主人公を目指しているのですか?
……まあ、貴方が本気で望むなら反対はしませんわ。では交渉は私に任せて貴方は外でお待ちくださいね、このスケベが」
エリザベスXはそう言って店内に戻り、レジから近過ぎず遠過ぎずの位置で、棚のジャンク品を見ている振りをしながら様子を伺い始めた。
やがて男と店主の商談が終わり、アンドロイドの少女を引き渡して代金を受け取った男がレジから離れたのを確認してから、何気ない仕草でレジへと近づいた。
そして商品棚から適当に持って来た、壊れたポケットラジオをレジに置いた。
別に欲しいわけではない。自然に店主に話しかけるための切っ掛けだ。
「らっしゃい……なんだ、さっきパーツを沢山買っていってくれた嬢ちゃんか。買い忘れか?」
「ええ、うっかりしていまして。……あら? これは随分とオンボロなアンドロイドですわね? 先程まで無かったような気がしたのですが?」
エリザベスXは、アンドロイドが買い取られた経緯など知らない振りをしながら、あくまで世間話のように話題を振る。
あからさまに欲しがって見せると吹っ掛けられるかもしれないと考えて、『たまたま目についたからついでに買う』という演技することにしたのだ。
「ああ、今さっき買い取ったばかりのものだ。後で状態をチェックしてから、修理してから売るか分解して部品だけ売るかを決めようかと思っていてな。
正直な話、面倒だが仕事だからなぁ。ははっ」
「ああ、それなら丁度良いですわね、それを売っていただけませんか?」
「あん? そりゃあうちも商売だから買ってくれるなら喜んで売るが、丁度良いってのはどういう事だ?」
「私は最近、機械いじりの趣味を始めまして、一度アンドロイドの分解と修理をしてみたかったのですが、なにぶん初めてですから多分失敗してしまうと思いますわ。 ですから壊れても惜しくないオンボロを探していたのです。
後で中古アンドロイド店に行こうと思っていたのですが、手間が省けますわ」
「ほう、機械いじりが趣味かい。 ああ、さっき古いパーツを沢山買っていったのもそのためか。
まっ、それならコイツみたいな壊れかけが丁度良いわな。
いいぜ、嬢ちゃんに売ろう。値段は……こんなもんだな」
中古アンドロイドには、前の持ち主の個人情報が残っている可能性があり、また暴走した場合の危険度も高いため、買い取った業者は転売する前にアンドロイドを点検する義務があるのだが、この店主は客の安全を徹底しようと思うほどのプロ意識は持っていなかった。
ジャンク屋をやっているのも、ジャンク品として扱っているものなら状態が悪くても動作不良があってもクレームを受け付けなくて良いから、という自分本意な理由からなのだ。
そんな店主が、今のエリザベスXのように自分から『どうせ分解するために買うのだし、それで壊れてもかまわない』と公言する客に売る商品を、わざわざ手間をかけて点検などするはずもない。
店主はさっさとアンドロイドをエリザベスXに売ることにしたようだ。
金額は多少ぼったくっていたが許容範囲内ではあったし、エリザベスXとしても今は値切る事より確実に購入する事を重視したため、変に交渉せず即決で買い取った。
「それではご機嫌よう」
そう言ってエリザベスXはアンドロイドの少女に手を伸ばし、一瞬何かを考えた。
最初は手を引いて歩かせようと考えていたのだが、そのアンドロイドの足のダメージが深刻そうに見えたのだ。
結局は予定を変え、木材を運ぶ大工のように肩に担いで外へと連れ出した。
『負傷者を気遣ってお姫様だっこする』というのはサービスし過ぎで悪役令嬢としてはアウトだと思い、『負傷者を荷物のように荒っぽく担ぐ』という手段を選んだようだ。
……無理矢理歩かせない部分には、一応は思いやりがあるとも言える。
外に出ると、入り口の前で待っていたライトがエリザベスXに駆け寄る。
彼はアンドロイドの少女のボロボロの姿を見て、痛ましそうに顔をしかめた。
「うっ……改めて見ても酷い傷だね。お願いエルメスT、早く治療してあげて」
返事をしようとしたエルメスTの言葉を遮るように、エリザベスXが「ダメですわ」と却下した。
「なんで!? その傷を見てよ! 一刻も早く治してあげないとっ……」
「忘れましたか? 彼女はアンドロイドです。確かにダメージは大きいですが、人間よりはずっと頑丈ですから、まだある程度の余裕はあります」
「で、でもっ……」
「いいですか? ライト・ノベル。ここは人目が多く、しかも中には犯罪者も居るはずです。我々の能力を知られれば、悪党に目をつけられかねませんわ。
ましてやエルメスTの製作能力は、使い方によっては莫大な金を得ることができるものですから、こんな人前で使うのはトラブルの元となりますわよ」
「……ごめん、確かに君の言う通りだった」
「分かれば良いのです。 では、まず船に戻ります。船の中なら他人に見られることはありませんから、そこで修理を始めましょう。
シェフとミリィちゃんには歩きながら通信で事情を説明しておきましょう」
そう言って歩き出した彼女は、早速ミリィちゃんに通信を繋ぐ。
「ミリィちゃん、聞こえますか? そちらへ向かうつもりでしたが予定変更です。私たちは先に船に戻ります」
《わかったよ♪ ……でも予定変更するって事は、何かあったの?》
「ええ、ライト・ノベルが女を買いました」
ライトが「ぶっ!?」と吹き出すのと、通信装置の向こうでミリィちゃんがガシャンと何かを落とす音か響くのは同時であった。
そしてエリザベスXは、用事は済んだとばかりに通信を切った。
「さあ、先を急ぎましょう」
「先を急ぐのには同意だけどっ……あーっ、くそっ! ツッコミをしてる状況じゃないから、文句は後だ!」
言いたいことはあるが、まずは壊れかけのアンドロイドの修理が先決だと思い、ライトはツッコミを一時封印し、船へと急ぐのであった。
ーーーー
船へ帰ると、エリザベスXは担いでいた犬獣人アンドロイドの少女をベッドに寝かせた。
そのそばではエルメスTは船にある予備パーツや先程買ったパーツなどから、修理に使えそうな物をかき集めている。
「ね、ねえ、俺にもできる事は無いかな? 指示をくれればできるだけのことは……」
「あらあら~、ダメよ~。ライト君は~、隣の部屋にいてくれる~?」
何か力になりたいと考えたライトだが、すぐにエルメスTに笑顔で止められた。
せめて様子だけでも……っと食い下がろうとした所にエリザベスXが冷たい視線を飛ばしながら言う。
「修理が必要な部分は全身に及んでいます。当然服を脱がす訳ですが……その様子をそばで見ていると?
それはそれは素敵な提案ですこと。まさに女の敵ですわね」
「えっ!? い、いや、そんなつもりじゃ……。えっと、ごめん! 外で待っているよ!」
言っている意味を理解したライトは、顔を赤くしてドタバタと足をもつれさせながら部屋から出て行った。
「うふふ、ライト君は本当にアンドロイドを人間の女性として意識しているのね~。かわいいわ~」
「からかっていて面白いですわね。……ですがあれでは……。
……いえ、まずはこのアンドロイドの修理が最優先ですわね」
「わかってるわ~、私に任せて~」
壊れかけたアンドロイドを、早送り映像のようなハイスピードで修理していくエルメスT。
その表情はいつもの柔らかい笑顔ではなく、冷静な技術者の顔をしていて、のんびりほわほわした普段の彼女とはまるで印象が違うものだった。
外れていた関節パーツも含め、破損や劣化の酷い部分はどんどん修理・交換をしていき、ちぎれた耳の復元まで終わらせた。
専門の設備の無い状況で、しかもこの短時間でやった処置とは思えない仕上がりだ。
だが、外見的には修理を終えたように見えても、まだエルメスTは真剣な表情を崩していない。
「体の応急処置は済んだけど~、コンピューターの調子も良くないわ~。
このままだと人工知能にまで不具合が生じるかも~……」
「それは少々厄介ですわね……、ではアレを使いますか?」
「ええ、使うわ~。『賢者の石』起動~!」
賢者の石……それはエルメスTに搭載されたプログラムであり、製作系のアンドロイドの限界を突破するために作られたものである。
通常、ロボットやアンドロイドは人工知能を生み出す事はおろか、手を加えることも許されていない。
機械が自らの手で人工知能の分野に干渉できた場合、それは機械が人間の手を離れることとなり、最終的には人間への反逆も可能になりかねないからだ。
だが、『賢者の石』を起動したエルメスTは、その制限を無視し、他者の人工知能に手を加えることができるのだ。
ナーロウ博士もそれが禁忌である事は理解していたが、自分の作品の人工知能に不具合が起きたときに対処できるのが自分しかいないという状況を危惧し、あえて禁忌を破り、緊急時には自分の代わりを務めることができる者としてエルメスTの生み出したのである。
つまり、全力を出したエルメスTは、製作系の技術や知識においてはナーロウ博士に準ずるレベルだと言うことだ。
設備・人手・パーツの全てが足りないとはいえ、アンドロイド一体の修理に失敗などするはずもなかった。
「は~い、修理完了よ~。ライト君も入って来ていいわよ~」
エルメスTは一仕事終えた、とばかりに満足そうに微笑み、ふうっ、と一息ついて賢者の石を解除した。
アンドロイドのタブーを無視するほどの能力なのだから負担も大きく、使っていられる制限時間はそう長くはないのだ。
ちなみに、どうでもいい話だがナーロウ博士は『賢者の石』を起動していられる制限時間の事を『賢者タイム』と呼んでいたらしい。
「……じゃあ入るよ」
ライトは部屋に入ると、まずは横になっているアンドロイドの少女の様子を見て、それからエルメスTの顔を見る。
エルメスTが「もう大丈夫よ~」と言って微笑むと、ライトも安心したように表情をゆるめた。
「良かった……。エルメスT、それにエリザベスXも、お疲れさま。助かったよ」
「うふふ~、作ったり修理したりは~、私の仕事だもの~。気にしないで頼ってね~」
ニコニコするエルメスTとは対照的に、エリザベスXは少し難しい顔をしていた。
その様子に気づいたライトが不思議そうに尋ねた。
「あ、あれ? その子、助かったんだよね? じゃあなんでエリザベスXはそんな顔をしてるの?」
「……いえ、少し考え事をしていただけです。そのアンドロイドの修理は無事に終わったので、そちらについては気にする必要はありませんわ」
「そう? ならいいんだけど……」
「それより、せっかく修理が完了したのですから、彼女を再起動させてみましょうか。エルメスT、頼みますわよ」
まだライトはエリザベスXの様子に違和感を感じていたが、エリザベスXは話す気は無いらしく、すぐに話題を変えた。
話を振られたエルメスTは特に疑問は感じなかったようで、すぐに言われた通りに彼女を再起動させた。
「それじゃあ~、ポチッとな~」
気の抜ける掛け声と共に、エルメスTがアンドロイドの少女を再起動させると、少し間をおいて彼女がゆっくりと瞼を開いた。
そして状況を確認するように周りを見渡し、やがてライトたちに視線を止めた。
「……あの……すみません。ここはどこです?」
少女が不安そうな声で尋ねる。
「ここは~、私たちの宇宙船よ~」
「貴女は、今の状況をどの程度理解できていますか?」
少女の言葉にエルメスTが答え、エリザベスXは彼女が状況を把握しているかを問いかけた。
すると少女は「えっ……」と小さく呟いたあと、しばらく考えこんだあと、何かを思い出したように目を見開いた。
「私は、トラックにはねられそうになったご主人様をお助けして、代わりにはねられたです。
そしてボロボロになって……」
そこまで言ったあと、悲しそうに俯いた。
「それで……ご主人様が、『修理すると高くつくから処分する』って言って……。
……私は……ご主人様に捨てられたです?」
その言葉や仕草からは、悲しみの感情が伝わって来る。
彼女の話す言葉は、少しだけ抑揚に違和感があるものの聞き取り易くなめらかだ。
もちろん人間とまるで変わらない発音で会話をするナーロウ博士のアンドロイドたちには劣るが、どうやら彼女の会話能力は一般のアンドロイドとしてはかなり高いようだ。
「……つらかったわね~、でももう大丈夫よ~。そこにいるライト君が~、あなたを買い取って修理してくれたから~。
ライト君は優しい人だから~、安心して~」
「えっ?」
エルメスTの言葉に驚きの声を上げたのは少女ではなくライトだ。
彼女を買った金は皆の共有の資金から出したものでライトのポケットマネーではないし、修理したのはエルメスTだ。
その困惑に気づいたエリザベスXがライトに説明する。
「私たちは貴方が彼女を助けたいと望んだからそう動いただけですわ。
そしてアンドロイドというのは所詮は人間の道具。つまり貴方が『私たち』という道具を利用して彼女を助けたという事です。
アンドロイドの行動は所有者の行動。貴方の感情はどうあれ、常識や法律ではそうなるのですよ」
「……っ!?」
エリザベスXが自分の事を道具と呼び、ライトの事を所有者と呼んだ。
その事に大きな悲しみを覚えたライトが何かを言い返そうとしたが、その言葉は中断させられた。
ライトより先に、少女が感極まったように声を上げたからだ。
「ありがとうございますです! 私のような壊れかけを買い取って修理までしてくださるなんてっ!
ライト様……いいえ、ご主人様! 私はこれから奴隷としてご主人様にお仕えするです! お世話をするです!」
「ええっ!? 奴隷とか言われても、俺はそういうつもりじゃあ……」
いきなりのことに驚いたライトは、さて、どうしようか? などと考えながらキョロキョロと視線を動かす。
すると、あるものに気がつき、ライトの視線はそこで止まった。
「ひいっ!?」
天井付近に取り付けられたモニター。
船の外の様子を映しているそのモニターに……無表情でジッとこちらを見つめるミリィちゃんが映っていた。
今回は一度お休みしましたが、次回はいつも通り来週の金曜に投稿する予定です。




