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4章 第4話 新たなる力! ハードカバー・ライト・ノベル

 パワードスーツも完成したことで、今日から正式に参加の拠点開発作業を手伝うことになったライトは、ワクワクしながら作業場へと向かった。

 最終調整を終えたパワードスーツを受け取るためだ。


 だが、作業場にはあのパワードスーツは見当たらなかった。

 2メートル程のサイズなのだから、近くにあればすぐに分かるはずなのだが。



 「あ~。ライト君~、おはよ~」


 寝ぼけたような声でおはようと言うエルメスTになんとなく笑ってしまいそうになりながら、ライトはパワードスーツについて質問してみた。


 「パワードスーツの調整が終わったって聞いたんだけど、どこにあるの?」


 「うふふ~、そこの作業台にあるのがそうよ~」



 エルメスTが指差した場所にあったのは……ベルトであった。

 ゴテゴテ飾りがついていて、少しオモチャっぽいデザインだ。



 「え、でもこれってベルト……だよね?」 


 「ほら~、一人で着たり脱いだりが大変だったでしょ~? だからそんな形にしてみたの~。ほらほら、ライト君~。ちょっと着けてみて~」


 「う、うん」



 言われた通り、ライトはベルトを装着してみた。

 少しダサいのは気になるが、サイズはピッタリだ。


 

 「……着けたけど……これからどうすれば?」


 「じゃあ~……はい、コレ」


 エルメスT何かを差し出した。

 反射的に受け取ったライトが手の中を確認すると、それは金属のカードのようなものだった。


 「これは?」


 「しおり(ブックマーク)よ~、ほら~、読みかけの本に挟むやつ~。

 それをベルトに差し込んで~『ブクマ登録!』って言ったら~、一瞬で変身できるのよ~。 便利でしょ~?」


 「掛け声おかしくない!? いや、便利なのは便利だけどさ!」


 「おかしいかしら~? ごめんなさいね~、次に調整するときに変えておくから~、とりあえず今はこのまま使ってくれないかしら~?」


 「あー……うん。じゃあやってみるよ」



 ツッコミを入れたライトではあるが、自分のために用意してくれた物に対してこれ以上の文句を言うつもりは無い。

 内心でダサいと思っている部分もあるが、まずは言われた通りにしてみた。


 「ベルトに差し込んで……こうかな? で……えっと、ブクマ登録!」



 ライトがその言葉を口にした直後、部屋の上部に設置されているスピーカーから謎の男性の声が響いた。


 《説明しよう! 普通の少年、ライト・ノベルは、変身ベルトの力でパワードスーツを身にまとい、雑用戦士・ハードカバー・ライト・ノベルに変身するのである!》


 「今のナレーションは何!? あと雑用戦士・ハードカバー・ライト・ノベル!? 何そのネーミング!」

 

 「今のは私も知らないわ~、でも、さっきエリザベスXがコンピューターをいじってたから~、多分あの子が何かしたんだと思うわ~」


 「ああ、やっぱり」



 色々と思うところはあるが、とりあえず変身は上手く行ったようだ。

 ナレーションに気を取られている内に、ライトはすでにパワードスーツ姿になっていた。



 「大丈夫~? 違和感とかは無いかしら~? 大丈夫なら~、外に行って一緒に作業をしましょうか~。外のみんなはもう作業をしてるわよ~」


 

 そう言われてライトは軽く体を動かしてみたが、問題は無さそうだったのでエルメスTと共に研究所の外へと向かった。



 

 ーーーー


 

 外へと出ると、まずスティーブン舞倉とエリザベスXの姿が見えた。

 スティーブン舞倉はシャベルで地面を綺麗な平面になるように整地しているのだが、彼は放っておくとなんでも四角い形にしてしまう癖があるため、エリザベスXがついて歩いて指示を出しているようだ。


 スティーブン舞倉がシャベルを一振りする度に、デコボコな地面がどんどん綺麗な平面になってゆく。


 (これは俺が手伝うことは無いなぁ……あんなに綺麗に地ならしをしろって言われても無理だし、指示を出すのは、エリザベスX一人で充分だろうし。 他に手伝う事は……あれ? 他のメンバーはどこだろう?)



 エリザベスXに聞いてみようか? と考えて彼女の方を見ると、丁度向こうからライトに声をかけて来た。


 「あら、そこにいるのは雑用戦士・ハードカバー・ライト・ノベルではありませんか。雑用戦士・ハードカバー・ライト・ノベルは、作業の手伝いに来たのですか? それはなかなか感心ですわね、雑用戦士・ハードカバー・ライト・ノベル」


 「その名前を連呼するのはやめて!? っていうか、その名前って、呼ぶ方も長くて呼びにくいよね?」


 「確かに長いですわね……省略して『雑用』と呼ぶことにしましょうか」


 「なんで本名の方を省いちゃったの!? 普通に名前で呼ぼうよ!」



 ライトのツッコミを聞いて、エリザベスXは楽しそうにニヤリと笑った。


 (良かった。昨日は拗ねていたけど、いつものエリザベスXだな)


 拗ねる姿はちょっと可愛いと思ったが、変に機嫌が悪いままだったら困ると思っていたライトは、エリザベスXのいつも通りの態度にホッとした。


 ……実は彼女は、拗ねた姿を見せてしまった事を後で思い返し、恥ずかしくなったために、忘れた振りをして意識的にいつもの態度を装っているのだが、ライトはそんな乙女心には気づいていなかった。

 


 「それで、貴方は予定通り拠点開発作業を手伝いに来た、ということでよろしいのですか?」


 「あ、うん。そうなんだけど、ここは俺が手伝う事は無さそうだと思ってさ。

 他のみんなの手伝いはできないかと思ったんだけど、姿が見えないね?」



 「ああ、まずシェフとミリィちゃんについては、初めからここに来ていません。いつも通り食堂に居ますわ」


 二人は拠点を作るのに適した特殊能力を持っていない。

 もちろん身体能力そのものは高いので、やろうと思えば土木・建築のような作業もできるが、二人の本来の仕事とはかけ離れているために長時間やらせると人工知能にストレス負荷がかかってしまうのだ。

 緊急でもなければ無理に作業をさせる必要は無いだろう。



 「ノジャロリーナSも来ていません。彼女は研究所のレーダーで周囲の情報や仲間たちの現在状況などをリアルタイムでチェックしてもらっています」


 彼女はこの研究所の機能を扱う事に特化したアンドロイドだ。役割分担するなら、施設の管理やレーダーのチェックなどを任せておくのが最適である。

 それに個人としてのスペックは北斗七星(グローセ・ベーア)で最も低いため、無理に力仕事をさせてもあまり活躍は出来ないだろう。



 「クッコローネRと五所川原Jは、少し離れたところまで資源の回収に行っていますわ」


 レーダーでチェックしているとはいえ、拠点から離れての作業には危険が伴う。

 純粋に身体能力が高いクッコローネRと、転生システムのお陰で一度は大破しても平気な五所川原Jに任せてあるのは適材適所と言えるだろう。



 「あと、ここに居るメンバーの作業は、エルメスTが生産、スティーブン舞倉が地面の拡張・補強・整地……私は全体の指揮と、どこかの手が足りなくなった時の補助でしょうか?」


 「うーん……どれも俺が手伝う余地が無い気がする」


 せっかくパワードスーツのお陰で手伝う能力を手に入れたと思ったライトだが、現状を見ると自分の手伝いなど要らなそうに思える。

 資源の回収に関しては人手が多いほうが良いだろうが、拠点から離れての作業などライトに任せてはくれないだろう。

 アンドロイドが一番危険な作業を人間にやらせるなど、まずあり得ない。

 

 何をすれば良いだろうか? と考えていた時、クッコローネRと五所川原Jの二人が戻って来た。

 二人は成人男性が余裕で入れそうなサイズのコンテナを二つずつ、計四つに鉱石や金属片などをぎっしりと詰めて持って帰って来たようだ。



 「おお、ライト卿! 来ていたのか」

 「ライトきゅん、良いね! パワードスーツが似合っているよー!」


 「いや、顔や体格が分からないくらいに全身をすっぽり包んでいるんだから、似合うも似合わないもないと思うけど……でも、一応褒められたと思っておくよ」


 「一応じゃなくて本気で褒めてるんだけどにゃあ? ところでライトきゅんも何か作業をしていたのかな?」


 「うーん、そのつもりなんだけど何をやれば良いのか……」


 「そうか、私たちはもう一度資源になりそうな物を探しに行くつもりなのだが、良ければ……いや、やはりダメだな」



 一緒の作業をやろう! っと反射的に言いたくなったクッコローネRだったが、流石に安全性が確保されていない作業にライトを誘うのはあり得ないと思い直し、誘うのは自重した。


 その時、二人が持って来たコンテナを指差しながらエリザベスXが提案する。



 「ライト・ノベルには、その資源を分別してもらいましょうか。

 今、エルメスTがインゴットを作っているので、金属片は彼女へ渡して、鉱石は作業場にあるコンテナにしまっておいてください。判断しにくい物は後で確認するので、どこか邪魔にならない所によけておいてください。 ……できますか?」


 「うん、それならできそうだね。任せてよ」


 すぐにそう答えたライトに、エリザベスXは少し意外そうな視線を向けた。


 「こんな雑用のような作業では不満かとも思ったのですが、案外素直に受け入れましたわね?」


 そう言われたライトは、フルフェイスのヘルメットの中で苦笑いを浮かべた。


 「まあ、知識も技術も足りない自覚はあるしね……。 無理に難しい作業をやって足を引っ張るより、地味な雑用でもみんなの役に立つほうが良いしさ」


 「あら、悪くない心がけですわね。流石は雑用戦士を名乗るだけの事はありますわ」


 「その称号を自分で名乗ったこと無いよ!?」



 雑用戦士の称号を受け取るかどうかは別として、ライトは言われた仕事をこなすことにした。

 それはやりがいのある作業というわけではないが、どうしても今までゲストとして世話をされているという感覚だったライトは、自分の仕事を与えられた事で、やっと皆と対等の仲間になったような気分になり、なんとも言えない嬉しさを感じていた。


 

 規格外の生産系アンドロイドであるエルメスTの技術を使って改良されたパワードスーツを装着してまで行う作業が、回収した漂流物の分別というのはどうなのだろうか? などという疑問を感じる事もなく、コツコツと分別作業を繰り返して30分以上経った頃……


 「そう言えばライト君~。エネルギー残量は大丈夫~? 余裕はあるはずだけど~、たまに確認する癖はつけておいたほうが良いわよ~」


 そばで釜をグルグルとかき混ぜていたエルメスTにそう言われて、ライトは初めて気がついた。



 「あっ、それもそうだよね。 えっと……どうすれば確認できるの?」


 「う~んとね~、『ステータスオープン!』って言ったら表示されるわ~」


 「……それ、本当に言わなきゃだめ?」


 「うん。 うふふ、言わなきゃだめよ~」


 「うっ……わかったよ。 じゃあ、ス……ステータスオープン!」



 ライトがその言葉を口に出すと、目の前に文字が表示された。



 「……総合ポイント316……? 総合ポイントってなに?」


 「それがエネルギー残量よ~。 OKね~、まだしばらくもつわ~」


 「あと、職業が『巻き込まれた一般人』ってなってるのが微妙に的確で気になるんだけど……」


 「それは本人の特性を読み取って~、それっぽい事を表示してるだけだから気にしなくて良いわ~」


 「つまり俺の特性は『巻き込まれた一般人』っぽいのか……うーん、否定できない気がする……」



 なんだか微妙な気分になったライトだが、とりあえずエネルギー残量に問題が無いことがわかったからいいか……っと作業を再開しようとしたが、そこで今度はエリザベスXが話しかけてきた。


 「たった今、ノジャロリーナSから手に入れた情報を判断してほしいという要請がありましたので、ちょっと行ってきますわ。

 スティーブン舞倉の整地も一段落したことですし、しばらく離れても大丈夫でしょう。

 では頑張ってくださいね、雑用戦士・ハードカバー・ライト・ノベル」


 「そのネタ、まだ引っ張るの!? 絶対呼びづらいよね!?」


 

 ライトのツッコミを聞いているのかいないのか、エリザベスXは「オホホホホッ」と笑いながら研究所へと戻って行った。


 

 そのあとは少し作業の役割分担が変わった。

 整地を終えたスティーブン舞倉が金属のインゴット化を担当し、エルメスTはさっきまで作っていたインゴットを加工して何かのパーツを作り初めたのだ。

 ……とは言えライトのやる事は、金属を渡す相手がエルメスTからスティーブン舞倉に変わっただけで、やる作業内容に変化は無いのだが。


 ライトはコツコツと分別作業を続けている。

 彼は地味な単純作業が性に合うのか、次第に楽しくなって来たようで、エリザベスXが研究所へと戻ってから、一時間ほど無言で一心不乱に分別作業をしていた。

 

 多分ライトは梱包材のプチプチを潰し始めたら止まらないタイプの人間だろう。




 「おお……。ライト卿、なかなか素晴らしい集中力だな。 ……だが、気づいてもらえないのも悲しい気がするが」


 「えっ?」


 声をかけられたライトが顔を上げると、すぐそばにクッコローネRと五所川原Jが立っていた。

 二人は、またコンテナを持っている。 どうやら二度目の資源回収を終えて戻って来たところのようだ。



 「二人とも戻ってたんだね。気づかなくてゴメン、なんか分別して運ぶだけの繰り返しに変に夢中になっちゃってたみたいだよ」


 「ライトきゅん、そういう仕事が好きなのかい? さてはゲームだと攻略よりレベル上げが好きなタイプだね?

 夢中になるのもいいけど、そろそろお昼ご飯の時間だから一緒に食べようよ。 あ、ちなみにわっちはゲームだと攻略やレベル上げよりも、お気に入りのキャラのコスチュームの着せ替えとモデル観賞モードを楽しむタイプだよ」


 「うん、最後の情報はどうでもいいけど、昼食は一緒に食べようか。

 あっ、他のみんなも一緒に食堂に行かない? みんな食事は必要では無いんだろうけど、せっかくだしさ」



 ライトが誘うと、クッコローネR、エルメスT、そしてスティーブン舞倉も同意したので、みんなで食堂へと向かう事になった。


 だが、途中の廊下でライトは自分がパワードスーツを脱いでいない事を思い出した。


 「ねえ、エルメスT、これって着るときは手軽にできたけど、脱ぐときもそういう方法あるの? それとも普通に脱げばいいのかな?」

 

 「あ~、脱ぐときは~、ベルトに差し込んだしおり(ブックマーク)を抜き取って、『ブクマ解除!』って言えば自動で脱げるわ~。

 あ、でもブクマ解除をすると総合ポイントが2ポイント減っちゃうから残量には気をつけてね~」



 そう、ブクマ解除すると2ポイント減ってしまうのだ。

 たかが2ポイントと思う人もいるかも知れないが、大切なポイントなのだ。

 なので気軽にブクマ解除をすると、悲しむ人もいるのだ。だからそう簡単にブクマ解除するのは良くないのである!

 そう、ブクマ解除は良くないのだ!

 大事なことだから二回言いました!



 「うーん、ポイントが減るのはなんか気分が良くないけど、食事するのに脱がないわけにはいかないよね。

 えーっと……じゃあ、ブクマ解除!」



 ピカッと光を放ちながらパワードスーツは解除され、次の瞬間にはライトは普段着に戻っていた。



 「ブクマ解除か……なんだろう、凄くやっちゃいけない事をした気がする……」


 「大丈夫よ~、ブクマ登録をすればまた2ポイント増えるから~」


 「そっか、それなら安心だね」



 ライトはホッとしたように微笑みながら、食堂へと入っていった。

 うん、ブクマ登録は大切なのだ。




 ーーーー



 「いらっしゃいませ!」

 「いらっしゃいませー♪」



 

 食堂に入ると、シェフとミリィちゃんが元気よく迎えてくれる。

 皆と共に席についたライトは食堂を見渡してから、わずかに微笑んだ。


 (そう言えば、大勢で食事って珍しいよね。俺以外は食事が必要無いんだから当然と言えば当然なんだけどさ。

 ……でも、こういうのって、なんか良いよね)



 食事など必要無いのにそれぞれ好物があるのか、ライトと同じ物を食べたいと言ったクッコローネR以外のメンバーは違う物を注文していた。

 こういう個性も、ナーロウ博士がこだわった部分なのだろう。



 ライトとクッコローネRはハンバーガーとポテトにジュースがついたセットを注文した。


 エルメスTはパイを注文した。

 錬金術師はパイを食べる決まりがあるそうだ。 理由は不明だが。


 スティーブン舞倉は焼いた羊肉だ。 牛や鳥や魚も好きらしい。

 木炭を使ってかまどで焼いたものが特に好物だそうだ。


 五所川原Jはケチャップでアニメキャラを描いたオムライスを注文した。

 おでんの缶詰めも好きらしいが、食堂に缶詰めは無いようだ。



 注文の品が来て、食事を始めてしばらくしたあたりで、エリザベスXとノジャロリーナSも入って来た。



 「皆、食事中のようですわね。話したい事があるのですが、まあ緊急ではありませんから食事の後でいいでしょう。

 ……せっかくですから私たちも食事にしましょうか」


 「のじゃ! ご飯にするのじゃー!」



 (ここまでメンバー揃った食事風景は初めてだなあ)


 ライトはなんだか温かい気分になって、無意識に笑顔になった。

 

 ……もっとも、「今日こそ油揚げ以外を食べるのじゃー」と言ってパスタを頼んだノジャロリーナSの正面の席で稲荷寿司を食べながら、

 「油揚げは美味しいですわねぇ。あら? 貴女は今日は油揚げではないんでしたわね、失礼しましたわ、オーッホッホ!」

 とか言っているエリザベスXを見て、ライトの笑顔は苦笑いに変わってしまったが。


 ちなみにノジャロリーナSは涙目だった。



 そんなエリザベスXの性格の悪さも含めて色んな意味で楽しい食事が終わり、ミリィちゃんが食器を片付けている時に、エリザベスXが話を始めた。


 「さて、全員の食事も終わったようですし、少し話したい事がありますわ」


 「それって、さっきノジャロリーナSに呼ばれたのに関係ある話?」


 「ええ、彼女はこの研究所の機能を使って、近くにある例のコロニーのコンピューターに侵入して、周辺の監視カメラのデータや、コロニー内の音声データなどから情報収集をしていたのです」


 「いや、それってサイバー犯罪じゃあ……」

 「情報収集ですわ」

 「あっ、ハイ」


 「話を戻します。 その情報収集の結果、あのコロニーが『グレーカラー』の商業コロニーだと判明しました。危険もありますが、ある意味では好都合ですわ」



 グレーカラーとは、宇宙連邦の法律は適用されていないが、独自の法律で一定の秩序は守られているエリアである。

 そのグレーカラーの商業コロニーということは、言ってみれば、合法ではないが暗黙の了解でギリギリ罰せられないブラックマーケットのようなものだ。



 「治安は悪そうだけど、素性を隠して取引したりするには都合が良い場所って事か……」


 「ええ、つまり法的な身分を持たない私たちが、まとまった現金を手に入れるには非常に都合が良い場所ですわ」


 

 そう言ってエリザベスXはにっこりと笑った。

 その顔は、思わぬ幸運に素直に喜んでいる笑顔にも、悪事を企む邪悪な笑みにも見えた。

次回も金曜日の投稿予定です。

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