神様と創る国
森の国オノノキスは森の中心に城が建ち、その周囲に城下町が存在する。何故森の中に城や城下町があるのかはこの国の住人の知る由もない。しかし誰がそれを知る必要もない。どうせ神様が創ったものなのだから。
「おはようございますシンバルさん」
「やあギロおはようさん、今日も早いな」
「どうみてもシンバルさんの方が早いでしょ」
ここは城下町、青年ギロは丈のあってなさそうな肩掛けカバンを掛けながら、森へと抜ける門を守るヒトのシンバルとあいさつを交わしていた。
「そりゃまぁ俺は出世したいからな。王には気にいられないと」
「がんばってください」
「おう、ギロはこれから神の洞かい?」
「はい、僕も出世したいんで。神様には気にいられないと」
「死んどけよ罰当たり」
「辛辣」
そんな門番との何気ない会話を後にギロは森の中へと駆け出す。途中でワーボア(猪人間)のバンジョーと出くわす。彼は森でパン屋を営んでいる。
「やあギロ、今日こそパンを買っていっておくれよ」
「あなたのパンはヒトの口には合わないよ。ごめんよバンジョーさん」
「やはり昆虫パンは口に合わないか」
「種族の違いには気を使って欲しいかな」
「ヒトにはどんなパンがオススメかな」
「きっとBLTサンドがいいよ」
この森ではヒトと亜人とが仲良く暮らしていた。神様がそう創ったのだ。ギロがしばらく森の中を駆け抜けると次第にとても大きな大樹が見える。そこが神の住まう大樹の村「神の洞」である。ギロは神の洞で門番をするワーハリセンボンのボロンに出会うが彼の表情は暗い。
「どうしたのボロンさん、浮かない表情だけど」
「何でもないよギロ君、それより皆は洞に集まってるよ」
「落ち込まないで。ワーヤマアラシのササンドさんよりいい女なんて他にも居るさ」
「ちょっギロってばどこまで知ってるの!?」
「昨日ササンドさんがボロンさんのラブレターを見せて回ってたよ」
「SHIT!!」
ギロは大樹の洞まで行くとそこには亜人たちが集まっていた。洞の奥は舞台となっており神様の挨拶が行われる予定だ。村の日時計が予定の10時を指した時、大樹の村のアイドル・ササンドが大樹に向かって呼び鈴を鳴らす。
「うんせっ、うんせっ」
神様は梯子をつたって地上へと降りて来た。梯子から降りる時の神の半ケツはオノノキスの風物詩である。神っぽい衣に身を纏いぼさぼさ天然パーマの神様の姿はさながら浮浪者である。傍らにはアンドロイドのマリベルが付き添う。彼女の素性は森の民らもよく知らないが美人なので誰も気にしなかった。神様が洞の舞台に登壇するなりさっそく野次が飛ぶ。
「神様、今回は何をやらかしたんですかー?」
「いや毎度言うけど別に何もやらかしてないからね。一方的に敵視されてるだけで」
「無自覚!神の力で大量虐殺でもしたに違いないのに!」
「信用ないなー」
神様の報告では今回の敵はパワードスーツを着込んだヒトの歩兵大隊らしい。おなじみの敵である。
「おなじみですが、如何な獣の亜人といえどパワースーツの兵に力で圧倒することはできません。またスーツに身を包んでいるため毒ガスも効きません。なので今回も私が最近創造した岩の亜人に壁を作ってもらってヒット・アンド・アウェイで狩っていこうと思います」
「その岩の亜人さんたちは今どちらに」
「岩の亜人たちは元々が非生物なのでまだ会話ができません。今は森語会話教室に通ってもらっています」
その後、マリベルより一連の作戦を図示したものが白い布の掛かった壁に投影される。OHPとかいうらしい。その後、敵に突撃するメンバーがくじびきによって決められ、翌明朝キックオフと相成った。