決着
「あら、向こうも随分と盛り上がっていますわね」
「なら混ざってきたら?」
早苗と綾女は軽く会話をしているが、既に幾度も攻防を繰り返していた。
「帝さんはあの鏡は出さないんですの? 今回の切り札でしょう」
そう言いながら綾女に向けて真横に一振りを放つ。
それを彼女は防ぐでも、かわすでもなく、いなすという行動に出た。
飛んでくる刃に対し、右手の甲を下に潜らせ上へ持ち上げる。綾女が右手を頭上に掲げる頃には、刃は彼女の頭のはるか上を通過していた。
「相も変わらず器用な事をしますのね」
「私にあの鏡は必要ないの。変に余裕を見せてると怪我するわよ?」
今度は自分の番だと言わんばかりに綾女は走る。早苗を攻撃圏内に捉えると同時に左ジャブからの右ストレートを打つ。
しかし、早苗は柄でジャブを弾き、刀身でストレートを防ぐ。
互いにエンジンが掛って来たのか段々と手数が増え始め、綾女は多彩な角度と緩急で拳を打ちこみ、早苗は物理的な斬撃と草薙の一振りを織り交ぜて敵を討ち取ろうとしていた。
委員長と呼ばれるに相応しい、他の委員とは次元の違う戦闘を見せていた。
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その光景を横目にとらえつつ、灯也もまた奮闘していた。
右手に持つ鏡は、先日入手した本の解読が終わって使えるようになった能力。
本の内容は、蛇について民俗学的な見地から蛇への信仰と異怖について書かれていた。
蛇の瞳は鏡に例えられることが有る。そして鏡には、魔除け等の効力が有ると信じられていて、その一つには吸収がある。吸収があるなら放出がある。
本来の草薙の剣なら『魔』ではないのだろうが、あくまで『疑似』。草薙の剣に近いというだけで本物ではない。
灯也は草薙の一振りの斬撃を鏡で吸収し、相手に向けて放出した。
「人数で押していくぞ。ああいうのは大抵物理攻撃に弱いか、吸収の許容量を超えると壊れるもんと相場が決まってる」
緑化委員会には当然攻略法はわからないはずだが予測は当たっていた。鏡に収めることのできる量は無限ではないし、鏡面が曇ったりひび割れたら使えない。
(どうやって切り抜ける? 鏡を庇うような行動を見せれば、予測が確信に変わるだろうしな)
灯也は内心で必死に打開策を考えるが思いつかない。
硬直状態が続いていた灯也に斬撃の一つが飛んでくる。
それは綾女がいなした早苗の攻撃。それを灯也は鏡へ吸収させる。灯也にとっては攻撃手段が増えた事になり、緑化委員会にとっては不利になる可能性もある。
その様子を見た緑化委員は声をそろえて叫ぶ。
「「「「「「「「何やってんだ委員長ッッ!」」」」」」」」
何故叫ばれたのか解らず、そちらに気を取られた時に油断が生まれた。
「しまっ」
「遅い!」
綾女の右掌低が決まり、崩れ落ちる早苗。
灯也もここが勝負所だと判断し、接近戦に持ち込むために鏡を仕舞って打撃に切り替える。
綾女と唯一対等に渡り合える重要な戦力を失った。
バランスが決定的に崩れたこの状況になってしまえば、図書委員会に勝てない理由は無かった。
綾女と灯也は残りの緑化委員会を相手にしていく。
綾女に挑んだものは悉く敗れていき、灯也の方も余裕が出て、無難に戦えるようになっていた。
三人四人と緑化委員会の人数を減らす。相手も懸命に状態を立て直そうとするが、倒されていくスピードの方が早かった。
そして最後の一人を灯也が倒す。
一時間半の激闘が終わった事を生徒会の川内健が宣言する。
「緑化委員会の戦闘続行は不可能と判断し、図書委員会の勝利を宣言します」




