入学式
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『浅雨高校には八百万の神々がいる』
インターネットに書かれていた文字を見て菅野灯也は笑う。
「やっぱり、何回見ても不思議でしかないわ」
浅雨高校の入学式が明日に控えた夜、適当に高校の歴史等を眺めているうちに、偶然どこかのサイトに書き込まれていた一文だった。
高校を選ぶ際に、先生にも相談したしインターネットで情報も集めたが、神様がどうのとは無かった。
オープンキャンパスのとき、敷地は異様に広かったのが印象的だったが、校舎の見た目は普通の建物だった事を記憶している。
とうぜん受験でも、試験監督の先生も受験生も普通だった。
「噂話の類って、どの学校にも付いて回るものなんだな」
あの学校はもともと、墓地だったところを取り壊して校舎を建てたらしい、くらいの信憑性の無さを笑いながら、パソコンの電源を落としてベッドに潜り込み眠りについた。
翌日、時間に余裕を持って家を出る。自宅から電車で二十分、最寄駅からさらに十分、町中から少し郊外に出たところに浅雨高校はあった。広大な敷地を歩く新入生は一様に同じ方向に向かっていた。
そして何の問題も無く、浅雨高校の入学式が講堂で行われた。灯也も新品のブレザーに身を包み校長の話を聞いていた。
「皆さんはこれからの三年間、様々な困難や希望に出会うでしょう。そしてその分だけ成長する。そして三年後、私の前にいる全員があらゆる事を糧に成長した姿であることを楽しみにしています」
学校の長らしい、威厳ある台詞で締めくくり講壇を降りる。
その後も長々と式は続き、無事に終了した時には時計の針は正午に近かった。そこから生徒は其々の教室へと向かう。
灯也はA~Eある教室のA組に割り振られた。担任の先生が現れるまでの間で自分の席のまわりと二言三言会話するくらいには打ち解けていたが、当然、八百万の神々が云々と言うのは話題にしなかった。
暫くすると、プリント類を大量に抱えた担任が現れホームルームが始まる。
「皆さん席についてますねぇ、私がこのクラスを担任する山峰薫子です。宜しくお願いしますねぇ」
その若い女性教師は、日本人形のような容姿と穏やかさが具現化した口調である事で、生徒間で人気になるのは明白だった。
そして、プリントが次々と配布され明日以降の予定が告げられていく。
一通りの連絡事項も終わり高校生活一日目が終わる。
徒歩十分、電車で二十分の道のりで帰り、灯也は自室のベッドに倒れこむ。緊張と慣れない通学の疲労でそのまま寝てしまった。
しかし、それが失敗だった。
数時間寝たにも関わらず、身体が重くだるい。
軽く自分の額に手をやると、何となく熱い気がするので念のために体温計で正確な体温を測る。
「……三十八度三分か」
両親は共働き、兄弟はいない。頼れる人が誰も居ない今、自分でできる事をする。
風邪だろうと判断した灯也は、救急箱にあった風邪薬を飲み、そのまま寝ることにする。
「いきなり学校休むなんて、色々と印象悪くなりそうだし明日までに治さないと」
だが、次の日の朝に計った体温計の数字は変わっていなかった。
高校生活二日目にして欠席。灯也は盛大にため息をつくが、どうする事も出来ない。故に風邪を治す事に専念して、栄養のあるものを食べ眠る事を繰り返す。そのおかげもあってか夕方には完全に熱は下がっていた。
翌日、無事に登校出来た灯也は授業についても支障なく午前中の授業が進む。
そして昼休み、仲良くなった数名のグループと一緒に食堂へ行こうかと話していると突如放送が鳴る。
『一年A組 菅野灯也、至急図書館棟の司書室に来るように』
それだけで放送は切れた。しかしそれよりも重要な事は、
「なんで俺が呼ばれたんだ?」
何かの間違いかと首を傾げていると、一人の女子生徒が近づいてくる。
「あの、先生から聞いてない?」
灯也は頷く。
「昨日、菅野君休んだでしょ? その時、各委員会への選出があったの」
詳しく聞けば、昨日はクラスの役職決めがあり、彼女はクラス委員長で生徒会への選出が決まり、最後まで決まらなかったのが図書委員会だった。そこで、取られた方法がくじ引きだった。その結果、欠席の灯也の代理を務めた担任が当たりを引き当てた。
「という事なのね?」
申し訳なさそうに言う彼女に抗議しても意味が無い事はわかっている。
取りあえず呼び出しに応じるべきだろうと考え、委員長に教えてくれた事の礼を言い、昼食を諦め図書館棟へ向かう。
広大な敷地の一角に図書館もある。至る所に校内の案内地図があるので迷う事は無いが遠い。呼び出されてから到着まで十分程かかってしまっていた。
図書館棟の見た目は西洋風のレンガ作りで複数階あり、外見で緊張しながらも恐る恐る中へと入る。




