であい
キーン!キーン! ザシュッ!
「ぐがぁ!」
金属音と人の叫び声-断末魔に近い声が周りに響く
図書室の中でマナーがなってないな。そう思いながら瞼を挙げると飛び込んできたのは真っ赤な壁と床。
赤、紅、アカ…
「こ、こは…」
かすれた声で呟く。
鼻につく鉄の匂いが私の周りに纏わりつく。これは、血…?
「な、んで…」
鳩尾辺りがぐっと引き縛られ、何かがせり上がって来るような酸っぱさが口に広がる。
いつの間にか周りからは金属音が消え、代わりに誰かのうめき声が聞こえる。震える身体を押さえつけるように肩を抱きかかえへたり込んでしまう。
どれぐらいへたり込んでいたのだろうか。たった数秒かもしれない。
「おい、女」
上から声が聞こえる。顔を上げればそこには赤く染まった人がいた。
「ひっ…」
声が引きつり、無意識に後退がるがすぐ後ろは壁。私は殺されるのか…
死にたくない…死にたくない!
こんなところで…
ぎゅっと目を閉じれば涙が伝っていく
「ちっ…おい、誰か」
男は舌打ちをすると声を上げる。その声に追うようにまた一人現れた。
その人もまたあちらこちらを赤く染めていた
「副長。いかがなされましたか」
「如月か。この女を屯所まで連れて先に戻れ」
「御意」
副長と呼ばれた男は、現れた男に一言告げると背を向け他の人に指示を出し始めた。
「では、私共も行きましょうか」
「え、ちょ…」
男の言葉と共に身体が浮く。咄嗟にしがみつくが手に赤いものが付くのを見て思わず離してしまう。そんな私を一瞥しながら
「しっかり掴まってないと落ちます。あと口は閉じてないと舌、噛みますよ」
と男は私を抱えたまま走り出した。
混乱の中、あの男の背中と昇ってきた朝日だけが嫌に目に付いていた。