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始動
世界の融合から千八百年。
世界の始まりから三千年。
年老いた一匹の竜が息絶えようとしていた。
艶はあっても輝きを無くした青い鱗。
片方が折れた角。
重そうに震わせる巨大な翼。
地に伏せ、浅い呼吸を繰り返している。
傍らに、一人の少年が立っている。
幼さの残る顔に、永久の年月さえ宿していて。
老竜と同色の鱗に覆われた尾。
艶めき輝く翼と角。
折れた老竜の角を、腰の剣の鞘にしている。
「何故僕を置いていくんだ」
少年は訊く。
「私は確かに長命だ。しかし不死身ではない」
老竜は答える。
「だが我が魂は不滅。会いたいと願うならば、魂継ぐ者を探し求めよ」
そして老竜は息絶える。
少年は泣いた。
幾昼夜か泣き続け、やがて少年は飛び立った。
こうして一つの、まるでRPGのような物語が幕を開く。
武器と魔法と運命の物語。