表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/15

episode:08 『Don't Stop Me Now』


<<私が突破口を開く!その隙にアンタ達は車両へと向かって!>>


「了解――しかし、どうやって道を作るつもりだ?」


「あそこからガンガン狙撃してるって事は、64式だろ?流石にあの数は――」


大矢の言葉を遮るように、頭上から"ドォン"という音と共に何かが発射され、ゾンビの群れが文字通り"吹っ飛ぶ"。


「……なぁ、大矢。あの女、カール君ぶっ放したぞ?」


「あぁ、間違いなくグスタフ君だ。あ、ぶっ飛んだ車がゾンビの群れに突っ込んだ。なんちゅうコンボだよ……こぇぇよ」





Devastated City Story

episode:07 『Don't Stop Me Now』





<<まだよ!まだ終わっちゃいないわ!>>


泉美のハイテンションな叫び声と共に、今度は腹の底から響くような重低音が炸裂する。

勿論、連射で。


「ちょっと待て!今度は何だ!何が起こるんです!?」


「第三次世界大戦だ――って、滝本!何とかしろ今度はブローニングぶっ放してんぞ!?」


「泉美、聞こえるか!?俺達が前に進めん!射撃を止めろ!」


<<ウォォォォォォォォォォォ!!>>


「――駄目だ、こりゃ。ランボーが憑依しとるわ」


「このままじゃ、一人でゾンビ軍団壊滅させそうな勢いだな。どうするよ?」


「まぁ、泉美がゾンビを引き付けている間に――"ドォン"……またカール君ぶっ放しやがった」


「グスタフだけは止めさせろ!着弾した時にこっちまで破片が飛んで来るんだよ!全身痣だらけだ!?」


「俺もだよ、畜生!泉美め、俺達をも殺す気かぁ!?親父さん、聞いてんだろ?あんたの娘が暴走してる!なんとかしてくれ!」


<<無理>>


「「即答すんなぁぁぁぁぁ!!」」


爆風で吹っ飛んだ鉄帽を被りなおし、89式を両手で構える。


「こうなったら、仕方が無ぇ。壁伝いに進むぞ!」


「デルタの人は壁伝いに進むなって、言ってた!」


「相手は民兵じゃなくてゾンビだ!間違ってもRPGなんて飛んでこねぇよ!」


「滝本、バイオ4と5をプレイした事あるか?」


「「…………」」


俺は大矢の肩を軽く叩き、そのまま駆け出した。


「すまん、俺が悪かった」


「思わず、銃乱射するゾンビを想像しちまったよ。勘弁してくれ、大矢」





5月2日 午後8時06分


「見えたぞ、大矢!」


「おう!俺が運転する、滝本は援護を頼むぜ!」


一番手前に停車していた車両(74式特大型トラック)の周りをうろついていたゾンビを排除し、大矢が転がり込むように運転席へと入り込んだ。

俺も、89式のバースト射撃で助手席側のゾンビを排除し、運転席の大矢を覗き込む。


「大矢、どうだ?」


「鍵は挿しっぱなしだ!いけるぜ!」


キュルル、という音の後にエンジンが動き始める。


「――良し、このまま北側の入り口に停めてくれ。俺はそこの高機動車で付いてくから」


「おう、任せとけ!バックすんぞ!」


――キュッコ、キュッコ、キュッコ


「……なんでバックするのにワイパー動かす必要があんだよ」


「あれ?シフトノブってこれじゃないのか?あ、これか」


――カチ、カチ、カチ


「そりゃウィンカーだ馬鹿野郎っ!つーか、そんな所についてる訳ねぇだろうがボケぇ!!」


「えー親父のキャラバンはここに着いてたぜ?」


「そりゃぁAT車だアホ!お前は免許持ってんのかよ!」


「AT限定で」


「一回ゾンビに喰われて来いクソタワケ!もう良い、俺が運転するからそこを退けぇ!」


大矢を助手席に移動させ、俺は運転席に転がり込んだ。


「いくぞ、大矢ぁ!」


「いや、滝本?俺はすごく不安なんだが。お前が軽以外を運転してる所を見た験しがない」


「お前よかマシだ――うぉぉぉぉぉ、パワァァァァァァァァ!!」


「ジェレミーが憑依してんのかよ!うぉぉ!前!前!ゾンビの群れに突っ込むぞ!」


構うものか、こちとら軍事車両だ!

減速どころか、むしろ加速してゾンビの群れを吹っ飛ばす。

その際、フロントガラスに血飛沫が飛ぶが、ワイパーで拭うから無問題。


「そーりー」


「ダイ・ハードのゲームかよっ!って、ここは制限時速20kmだろ!?どう考えても80以上出てるじゃねーか!」


「安心しろ、大矢。歩行者はゾンビ以外に居ないから」


「そうじゃなくて、急カーブだ!急カーブ!ガードレールを突き破る気なのか!?」


「大丈夫だ!今の俺にはスティッグが憑依している!」


「奴は喋らないだろうがぁぁぁ!イヤダァァァ!!降ろしてくれぇぇぇ!!」


ハンドルを思いっきりぶん回し、ガードレールを潰しながら急カーブをクリアする。

ついでに、ゾンビが何体か巻き込まれたようだが――まぁ、気にしたら負けだ。


「お、北側の入り口が見えてきたぞ?」


「……もう、やだ、こんな人生。やっぱ、MTで免許取っておくべきだった」


「今更遅ぇよ、大矢。なんなら今から車校にでも通うか?」


「ゾンビの教官に教えてもらえってか?間違いなく食われるだろ!」


そうこう言い合ってる間に、出入り口へと到着する。


「バックで停めるから、大矢はそこから後ろ見ててくれ。でか過ぎて一人じゃ無理だ」


「ゾンビが群れてるけど、轢き殺せば良いから大丈夫か。いいぞーそのままバックだ」


「りょーかい」


ハンドルを軽く操作しながら、運転席側から顔を出して後ろを見る。

うん、ゾンビが群れてるな。なんか、この光景にも慣れてきた。


「あー、もうちょい右ー」


「あいよー」


大矢の言葉道理に、ハンドルを右に切る。

――んん?このままだとぶつからないか?主に入り口に。


「おい、本当に大丈夫か?」


「おう、このまま真っ直ぐだ。ゆっくりとなー、そう、そのま――あ」


――バリン


――ガキガキキキ


――ドン。


「当たった!当たったって!」


「当たる前に言えよこの馬鹿!見事にのめり込んじまったじゃねーか!?」


「仕方ないだろうが!ゆっくりだって言ってんのに、スピード緩めねぇから!」


「俺のせいかよ!?ゾンビ殺さなきゃならんからしょうがないだろうが!?」


ギャーギャーと騒ぎながら、二人して助手席側から降りる。

……見事に挟まってんな、このトラック。


<<二人共、大丈夫か!?なにか凄い音がしたんだが?>>


「あ、あぁ、親父さん。大丈夫だ。北側は封鎖した。か、完璧に」


「そりゃ、ここまでのめり込ませればゾンビも入れんわなぁ?」


<<そうか、怪我は無いんだね?>>


「えぇ、大丈夫です。このまま、南と西も封鎖します」


俺達はそう親父さんに告げると、再び走り始めた。


「滝本、今度はそれぞれ別に運転しようぜ?後2回もお前の助手席に乗るのは嫌じゃ!」


「分かった。せいぜい、ゾンビに足を喰われんように気をつけろよ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ