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episode:03 『Monroeville Mall』

5月2日 午後5時05分


――アァァァァァァァァァ


「あぁ、もう、しつこ過ぎるぞこいつ等!大矢、何とかしろ!」


「無茶言うな!しかし、あれだな。ゾンビ共、どんどん合流して数増やしてるな」


「勘弁してくれよ……俺達はロッキー・バルボアじゃねぇんだぞ!」


「チャ~ンチャチャチャチャァ~ンチャ~ンってか?」


「そりゃ、炎のランナーだ」


「走るのには変わりねぇよ」









乗り捨てられた自動車を乗り越え、邪魔になるゾンビをゴミ箱で蹴散らし、人生始まって初の命を賭けた全力疾走で漸く俺達はスーパーへとたどり着いた。

……後ろには数百に迫る勢いで増え続けるゾンビを引き連れながら。


「よし、見えたぞ大矢ぁ!」


「おう、ついでに周りを埋め尽くすゾンビも見えるけどな!どうすんだよ、これ!」


「前も後ろもゾンビだらけ。これ、なんて"Left 4 Dead"だよ!」


「俺達の場合はLeft 2 Deadだけどな――っ!滝本、連絡橋にはゾンビいねぇぞ!」


大矢の言葉(と言うよりも、絶叫に近い)を聴き、駐車場から本館へと繋がっている連絡橋を見る。

凡そ1.5Mから上はガラス張りとなっており、パッと見た感じではゾンビが居るようには見えない。


「でかしたぞ大矢ぁ!」


「だが、どうするよ滝本?入り口は柵で封鎖されてるし、その前にはゾンビが群がってるぞ?」


「ゾンビは蹴散らす!鍵はぶっ壊す!拳銃で!」


「弾は残ってんのか!?」


「残り3発だ!無くなったら、寄こせ」


「なんだよ、そのジャイアニズムは!――喰らいな、バァァァンナックゥゥゥゥル!」


ゴッドフィンガーとの違いがイマイチ俺には分からないが。

まぁ、とにかく大矢の繰り出したパンチは柵に群がっていたゾンビの頭部を吹っ飛ばす。


「やるねぇ……それじゃ、俺は見よう見まねガン=カタだ!」


拳銃の底部で周りに居るゾンビを見境無く片っ端から殴りまくる。


「一丁しか無いのにガン=カタとは……どうなのよ?」


「なら大矢、お前の寄こせ」


「なんだよ、そのジャイアニズムは!――って、これさっき言ったよね?」


「天丼は基本です。さ、下がってろ。ぶっ放すぞ!」


「跳弾で俺を殺すなよ?」


「俺はオセロットじゃないから、兆弾まではコントロール出来ん。死んだら許せ」


「……最悪なセンスだ」


いかん、コイツと漫才を繰り広げてる場合じゃなかった。

既に俺達に気が付いたゾンビ共が全力疾走でこっちに向かってきてやがる。

俺は焦りを感じながらも、両手で確りと拳銃を握り締め、引き金を引いた。


――パン


――ガァィィィン


「……開いたのか?」


「映画とかじゃ、派手にぶっ飛ぶんだけどな?――あ、駄目だ。鍵は壊れてるみたいだけど引っかかってるぜ?」


「マジか!?って、すぐ傍まで来てやがるぞ大矢ぁ!」


「ちょ、どうすんだよ滝本ぉ!」


「あぁ、もうこうなりゃ一か八かだ!蹴破るぞ!」


「おう!」


「「3,2,1、――インパクトオォォォォォォ!!」」


俺達が同時に繰り出したヤクザ・キックにより、扉は勢い良く開いた。


「ヨャシャァァ!俺達は運が良い!行くぞ、大矢!駆け上れ!」


手が届く寸前まで近づいてきたゾンビから逃げるべく、俺達は停止しているエスカレーターを駆け上る。


「どうやら、こいつ等は階段が苦手みたいだな」


「だなぁ、転んで自滅してる奴も何匹か居るぜ?スペランカーかよ」


「って、事はだ。エスカレーターが動けば昇って来られないんじゃね?」


「天才だな、滝本――それじゃ、ポチっとな」


大矢がエスカレーターの起動ボタンを押す。


「「…………」」


――アァァァァァァァァ!!


「しまった、こっちは昇りだった」


「この馬鹿野郎!早く止めろ、早く!おびき寄せてどうすんだ!」


「ヘイヘイ、そう慌てなさんな――ポチっとな」


急停止したエスカレーターからは、バランスを崩したゾンビ共がドンドンと落ちていく。

もしかして、知っててやってないか?コヤツ。


「大矢、お前知っててやったろ」


「まぁなぁ。お前にばっか良いカッコされちゃ、たまんねぇからよ。じゃっこっちもポチっとな」


下りのエスカレーターが動き始め、昇ってきていたゾンビが強制送還されていくのを尻目に、俺達は走り――


「走る必要なくね?」


「……流石に疲れたしな。歩くか、大矢」


走るのにも疲れたので、歩いて入り口へと向かった。



「……誰か居るみてぇだな」


ガラスの自動ドアの前には、ベッドや机が積み重なってバリケードが築かれている。


「やっぱ、考えるのは皆一緒って訳だ。いいか、大矢?お前は今から"近藤"、俺は"神谷"だ」


「了解、所で、本職の警官や自衛官が居たら如何するよ?」


「狂ってたら撃ち殺す、正常だったら逃げる」


「何故逃げる!?」


「考えても見ろ、マトモな自衛官だったら一人でも多くを救おうとするだろうが」


「そりゃぁ、当然だろ?」


「だがな、こんな状況下で大人数が一箇所に集結してみろ。マトモな自衛官なら、食料や衣料品を女子供を優先にするだろ?」


「俺でもそうするな」


「そうすると、足りないとか卑怯だ!とか騒ぎ出す馬鹿が出てくる訳だ。少人数なら自衛官が抑えられるだろうが、大人数だと無理だ」


「一気に暴動が広がるってか?だけどよ、自衛官の数が多けりゃ大丈夫じゃねぇか?」


「アホか、そんな大勢の自衛官が集まってたら、ここまで来るのに苦労してねぇだろうが」


「な~るほど、東――「古いぞ」……うっせいやい」


二人で他愛も無い戯言をほざいていると、バリケードが除けられ、一人分の隙間が出来た。

――チッ、やっぱり防犯カメラで監視してやがったか。


「なんだよ、気づいてたのかよ。だったら、助けてくれても良いだろうに」


「だが、これで自衛官や警官の線は消えたな」


「だなぁ、滝――じゃなかった、神谷」


「間違えるなよ、近藤。さ、出迎えが来たようだ」


ゆっくりと開く自動ドアからは、生真面目そうな中年の男が姿を現した。



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