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episode:02 『Shaun of the Dead』


5月2日 午後4時30分


「大矢、準備は良いか?」


「おうよ!あ、間違っても俺撃つなよ?」


「銃は最終手段に取っとけ。ま、そんな状況になったら形振り構わずぶっ放すから」


「当たったらどうすんだよ!」


「避けろ。ガン=カタで」






大手デパートまで、凡そ500m。

トラックにより駆除されたゾンビ共だったが、装備を身に付けている間に増殖していた。

その数、約50匹以上……ちなみに、人として数えるのはなんとなく嫌だから匹として数える。


「さて、滝本サン。気が付いたらゾンビが増殖してるんですけど、どうしましょう?」


「マズイことに、俺達ゃ血生臭い迷彩服着てるしな。奴等、めっちゃ嗅ぎ付けてきやがった……外にうようよ集まってきてるぞ」


現在位置は防犯カメラのモニターが置いてある事務室の中。

カメラを分割表示にして店内の様子を見てみるが、見事にゾンビの巣窟と化してやがる。


「侵入してないのはバックヤードとここだけか?」


「いや、後は休憩室が無事だ」


このゲーセン、オープン前だった為に休憩室を漁っても食料品は何も出てこなかった。

勿論、店内の自販機も稼動しておらず、飲料水は水道から出てくる水のみ。

しかし、残念な事に容器が無い為に持ち運びは不可能だった。


「流石に腹が減ってきたぜ、滝本さんよぉ」


「俺もだよ、相棒。さて、奴さん達もバックヤードに気が付いたみたいだしな。そろそろ、お暇するとしますか」


「おう、トイレも済ませたしな。さっさと行こうぜ」


安全装置を解除した拳銃を片手に、事務所の扉を開く。


「一夜漬けとは言え、軍事訓練を受けてんだ。俺が先頭を行く。大矢は後ろを頼むぞ?」


「おう、背中は任せろ!――事務所、鍵かけるぞ?」


「あぁ。こんな所に放置しておくのは気が引けるが――ゾンビに喰い散らかされるよりはマシだろ」


「そうだな――じゃ、行きますか、"神谷 一等陸曹"」


「あぁ、しっかり付いて来いよ?"近藤 一等陸士"」


そう、それが俺達を救ってくれた自衛官達の名前。

そして、これから俺達が名乗る名前だ。





「よし、それじゃぁ行くぞ、大矢――アァァァァァァァー」


「プッ……ヤベ、笑いが込み上げてきた」


「我慢しろ。ほら、ゾンビの真似しろって。ウボァァァァァァァ」


「へいへい――ヴァァァァァァァ~」


俺達は今、ゾンビの真似をしながらゆっくりと足を進めている。

なんせ、こちとら武器と言ったら撃った事も無い拳銃しかねぇんだ。

弾だって、9発しか無い。まともにゾンビと殺り合えば即終了。ゲーム・オーバー!

と、言う訳で。俺達は映画"ショーン・オブ・ザ・デット"から"ゾンビの真似をして突破する"という素晴らしい作戦を真似してる訳だ。


「アァァァアァ~……なぁ、大矢。ゾンビの皆さん、こっち見てないか?」


「ヴァァァァァ~……見てるな。思いっきり」


「「…………」」


何、この沈黙。途轍もなく痛いんですけど。


『アアァァァァァァァァァ!』


「「ノォォォォォォォォォ!!」」


俺達の存在にバッチリと気が付いたゾンビの皆さんは、戸惑う事無く全力疾走。

畜生!この作戦は失敗かよ!


「駄目じゃねぇか滝本ぉ!!!」


「やっぱ、映画の通りにはいかんわ。しゃーねぇ、走るぞ!」


「またこのパターンかよ!明日は絶対に筋肉痛だこんちくしょぉぉぉぉ!!」


「明後日の間違いじゃねぇのか――退けオラァ!」


駐車してあった軽自動車屋根に駆け上り、邪魔なゾンビの頭目掛けて蹴りをブチかます。

すると、なんということでしょう。どう言う原理か知らんが、俺程度の蹴りでゾンビの頭部が吹き飛ぶ。

そりゃぁ、もう、グチャっと。


「大矢ぁ!何でこいつ等こんなに脆いのに、力だけは強いんだよ!」


「知るかっ!そんなに気になるならお偉い教授か誰かに聞きやがれ!――ゴォォォォォドフィィィンンガァァァ!」


大矢が叫びながら繰り出したパンチ(ゴッドフィンガー)は、目の前にいたゾンビの腹に食い込む。


「って、何やってんだこの馬鹿!」


「ヤベェ!のめり込んだ!腕が抜けねぇ!……ハハハ、挟まっちまったぜぇ。いや、マジで助けて」


いきなりやって来た絶体絶命の大ピンチ。

腹に大矢の腕をのめり込ませたゾンビは、大矢を喰おうとしてるし、他のゾンビも集結し始めてやがる。

しかたねぇなぁ、畜生。


「こちとら、ガキの頃からハリウッド映画見てんだ!映画ヲタ兼ミリヲタを無礼るなゾンビ共!」


色々な映画で、何度も見た特殊部隊や軍人の発砲シーンを思い出せ。

弥彦にだって見よう見まねで竜追閃をブチかましてたんだ。俺にだって出来るはず!多分。


「当んねぇように伏せてろぉ、大矢ぁ!」


両手で拳銃を構え、照準をゾンビの頭に当て、引き金を引く。

パン、という案外ショボイ音と反動の後、ゾンビの頭部は吹っ飛んだ。


「案外、ちゃちいもんだな、これ」


「助かったぜ、滝本!」


「さっさと腕を引き抜け!逃げるぞ!」


大矢が腕を引き抜く時間を稼ぐべく、俺は再び拳銃を構えた。



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