表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
噂作成人  作者: 蒼際
3/11

噂の3

 <<実証のない噂>> 主演「少年様、石様」

 彼岸の川に向かって少年は石を投げる。

 川の水の上を跳ね飛びながら進んでいく石。

 そして、石は批岸の岸辺に流れ着く。

「そっちにその人渡したよー!」

 少年は叫ぶ。

「渡し人のお仕事ご苦労さん」

 批岸の岸辺から返ってくる言葉。

 そうここは、地獄の入り口の岸辺です。




 <<楽したいと思っている人の噂>> 主演「十六夜様、皐月様」

 

『十六夜社長!この始末書全部読んでください♪』

 皐月の声が聞こえると、目の前に始末書の書類の山が落ちてくる。

「俺に楽させるつもりはないのか!?」

 十六夜社長は訴えるように叫ぶ。

 悲痛の叫びにも似ていた。

 頭上から皐月の声が返ってくる。

「ありません♪」

 天使の囁きというよりは、悪魔の微笑みに近い声だった。

 ここで、夢が覚める。

 目の前に山積みにされた書類……正夢だった。

 ため息と軽い願いを呟く。

「一日でもいいから、楽したいな……」

 十六夜社長のただ一つのお願いの言葉。



 <<少女を拾った噂>> 主演「皐月様、十六夜様」


 血溜まりの夜中の路地に佇むのは幼い少女。

 生きていた人間は同じ人間に殺された。

 少女は言う

「どうして、動かないの?お父さんとお母さん」

 今にも泣きそうな声は、路地に転がる肉塊を両親を差す言葉を伝える。

 雨が小降りに降り出した。少女の表情は、雨に濡れた性で、泣いてるようにも見える。

 誰かに、後ろから頭の上に手をポンッ!と置かれる。

 振り返らない少女に通りすがりの男性は言います。

「これは噂だ。お前の両親はお前の小さい頃に死んだんだ。だから、これはお前の両親じゃなく、噂の塊だ」

「噂?」

「この噂は、俺がこの平凡な世の中に噂として伝える。それとも、噂にしないでおくか?」

 年齢不詳の男は淡々とした口調で、少女に訊ねる。

 どこか優しく、淋しさのある声で、少女に訊ねる。

 少女は顔をすこしだけ左右に振る。

 噂にしたほうが、楽になれる。

 両親は殺されたより、死んでいたの方が良い。

 男は夜空を見上げる。季節は5月の皐月だ。

「俺は今、助手が欲しかったんだ。お前の名前は今日から皐月だ」

「さつき?」

「良い名前だろ?」

「うん!」

 5月の季節に、私は皐月と名前を変えた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ