噂の2
<<だるまさんが転んだの噂>> 主演「浅葱様、おとね様」上映時間「短い」
「浅葱ちゃん、髪洗ったら次は浅葱ちゃんが鬼だよ?」
小学校のトイレ内。トイレから廊下に駆け出していきながら言うのは、同じクラスのおとねって名前の少女。
浅葱は、私の名前で、鬼というのはだるまさんが転んだって遊びの事。
外でやっていたら、私は泥の土の中に転んでしまった。
短い髪は、泥に混じって汚れた。
それで、トイレのお手洗いを利用して、髪を洗っている。
私は、おとねの言葉を聞いて、ある噂を思い出す。
それは、髪を洗っている時に、『だるまさんが転んだ』と頭の中で唱えてはいけないって言う噂、いや、都市伝説だ。
(だるまさんが、転んだ!)
冗談で、そんな事を頭の中で唱えた。だけど、何も起きない。
やっぱり、これはただの噂だったのだ、と私は思いながら、顔を上げた。
私は、恐怖した。なぜなら、目の前の鏡には、絶対に存在しないモノが映り込んでいる……。
それは、鏡の中のもう一人の私だった。
『だるまさんが転んだ……』
鏡の中の私はそう言うと、口元が裂けて、生温い両手が私の顔を掴んだ。
「いやーー!!!……」
叫び声がトイレ内に反響して、消えていく。
そして――。
「浅葱ちゃん!そろそろ出てきてよ〜」
痺れを切らしたおとねは、そう言いながらトイレ内に足を踏み入れる。
鏡の前で、さっき洗っていたはずなのに、完全に髪の乾いた『浅葱』が立っている。
「浅葱ちゃん、早く行こうよ?」
「ええ、わかった」
浅葱は、正面の鏡を見つめながら、不気味な程口元を歪ませながらそう言うと、おとねと一緒にトイレから出て行く。
それから、学校のトイレのある鏡には、毎日映るそうです。
髪が濡れている顔を剥がれた誰かが……。
この噂には、続きがあります。
髪を洗いながら『だるまさんが転んだ』と頭の中で唱えた後、決して『鏡を見てはいけない』もしも、唱えてしまったら、鏡を見ないでそこから立ち去ってください。
なぜなら、唱えた後に見る鏡には、恐ろしいモノが映るからだそうです……
<<だるまさんが転んだの噂 終わり>>