ラブコメの理想を語る三人
舞台である場所は漫画研究会の部室。ここで一世一代の議論が始まろうとしていた。
「最近のラブコメはテンプレの話が多すぎる!安易に流行の設定を取り入れて、主人公やヒロインのキャラの深堀や心情をないものとしている!」
そんなラブコメ狂の俺の、心からの叫びにこたえるのは半年前に転校してきた俺の親友であるトオルだ。
「そんなこといったって、こんだけラブコメの作品数が多い中で人の目に留まるには、どうやったて流行に乗っかったほうが目立ちやすいからねー。まぁ、僕も設定よりはキャラの魅力の引き出しを増やしたほうがいい気もするね」
「やっぱそうだろ!作品はキャラの魅力が大部分を占めていると思う。カオルもそうおもうだろ」
小学校からの付き合いである、ほとんど家族のようなものであるカオルもうなずく。
「私もそう思うよー。ただねーどんだけ魅力があっても没個性だと駄目なんだよ。手っ取り早く好感度を上げようとして優しい性格にしたり、賢い、運動ができることにしたって、そんな超人なんかありふれてるもん。創作上ではね」
「そうなんだよ。僕もそう思う。プロフィール上で頭脳明晰、運動神経抜群、才色兼備!なんて並べてもいまいちピンとこないもんね」
「うーん、難しい問題だな。俺的には舞台のとがった設定や登場人物のステータスは控えめにして、長い時間をかけてお互いがお互いをすきになる描写をふんだんに入れてほしいな。勿論一対一の関係でな。ハーレム、逆ハーレムは不幸になる人が出てくる人が出るからいやだな。二人はどう思う?」
「私もー大体同意見かな。ただの平凡な二人が素敵な恋愛をするのがすきかなー」
「僕はちょっと違う意見かな」
「何でだ?」
「ラブコメだと、人気がでるのは基本相手役だからね。主人公が人気投票で一位になる作品なんてなかなかないと思うんだ。だからハーレムだよ。人気が出やすい相手役を複数出せば作品の人気が保たれるってわけさ。だからハーレムとか、逆ハーレムものを一概に否定できないな」
「なるほど、一理ある。だけどそれは商業的な目線だろ?トオル自身はどういう作品が見たいんだ?」
「そうだね・・・・うーん・・・。」
トオルが長考に入ってしまった。これは待つしかないな。しかたない、答えが出るまでカオルと話すか。
「カオルはどういう設定が好みだ?」
「私はー断然、幼馴染で両片思いものですね」
「ほぉ、いいセンスをしている。なんで両片思いものだ?片思いものは違うのか?」
「両片思いものはねー安心できます。絶対最後はくっつくだろうと!答えが分かり切っている告白ほど楽しい物はりませんよ。心の安寧が保てます」
「確かにそうかもしれないが、両片思いだとしてもその恋が実るものとは限らないぞ。例えば極道の跡継ぎが主人公のー「あの結末は納得してないです」
すごい真顔で威圧されてしまった。そうか、カオルは金髪のあの子を選んだことを許せないのか。
まぁそういう人もいるか。
そこまで話したところでトオルが考えるポーズをやめて、話し出した。
「あの作品の結末、僕は納得しているけどね。やっぱり過ごした時間のながさより密度だよ、密度。
それと僕が好きな作品のシチェーションは、転校してきてクラスになじめない子に優しくして、一緒に過ごす中で恋心が芽生えるパターンかな。複数ヒロインでも構わないよ。勿論、増やしたところで負けヒロインが増えるだけだけど」
なるほど、そういうのもありだな。だけど魅力的な人が負けってレッテルを張られるのは嫌な気持ちもある。
「なるほどー。そういう状況が好きなんですねー」
「あぁ、幼馴染ものも確かに人気だし、とてもいい作品も多いと思う。だけど0からの関係じゃない。作者が恋の始まりをダイジェストにしやすいし、過ごした時間の長さで恋心を持った理由付けもしやすい。だから一番 ”非現実的” でも受け入れやすいコンテンツになってる感があるね」
「幼馴染ものが非現実的かー。うーんそれはどうだろ?」
「へっ?」
俺の反論に少し上ずった声でトオルが変な声を出す。そんな動揺する反論か?
「だって目の前に俺とカオルって幼馴染がいるだろ。しかも異性同士で。別に俺たちは彼女彼氏の関係ではないけど、近くに俺たちっていう幼馴染の例があるんだし、付き合ってるところがいても不思議じゃないしな。」
そこまで言い切るとカオルがすごいうれしそうな顔をしていた。
「そうですよ!実際に近くで小学校から今まで何年かも付き合ってるカップルも知っていますし、別に非現実的な話ではありませんよ!」
「そ・・・そうか。で、でも二人は付き合ってないだろ?それじゃ一つの例とはいえないだろ。」
「まさか・・・好きあっているわけではないだろうに?」
む、意地悪な質問だな。何と答えてもカオルを傷つけてしまうかもしれないな。これは注意しないと
「トオル、その言い方はちょっとよくなー「あら、それはどうでしょう」
「人の心なんてそう簡単に推し量れるものじゃないですよ。もしかしたら―なんてこともありますし」
「は?」
やばい、なぜか悪い空気になってる。この話題を早く変えないと
「おい、変に含みもたせること言うなって。別の話題話そうぜ?ファンタジーラブコメものはどうだ?俺は好きな状況は」
スルッ
トオルが俺の後ろに回り込んできて、俺の首に手をまわしてきた。いわゆるバックハグの状態になってる。
「おい!急になんだよトオル?」
「ねぇ、私のことどう思ってる?」
耳元にささやかれてこそばゆい。美人に抱き着かれているのに、恥ずかしい気持ちやうれしい気持ちより圧倒的に気まずい。カオルのこちらを見つめる視線が痛い。
「どうって、お前は親友だよ。なぁ、もういいだろ?離してくれよ」
手をどけようとするが、トオルの力が強くうまく離れない。
「その答えはずるいな。私のことが異性として好きかどうか、私と付き合ってイチャイチャしたいと思ってるかどうかが聞きたいな」
トオルがさらに密着してくる。
やばい、何も考えられない。頭が全く回らない。これまで親友として仲良くやってきたのに、俺の一言で楽しかった時間がすべて終わってしまう予感がする。なんて答えればいいんだ?素直にいう?まず素直ってなんだよ。自分の本当に気持ちなんて俺にもわかってないのに。
「トオルさん。ちょっと性急すぎませんか?もっとゆっくり話を進めてもよかったのに。かわいそうですよ。ほら、こんなに顔を赤くしてますよ」
カオルが俺のほほを触る。それも顔を思いっきり俺に近づけている。今にも唇が触れかねない位置だ。もともと混乱で赤かった顔がさらに赤くなってしまう。男として情けないことだと思うが、まるで草食獣のような立ち位置になってしまっている。
さっきまでただ楽しくしゃべってただけなのに、なんでこんなに苦しいんだよ。
「か、カオル。」
「なぁに?」
「顔がちょっと近くない?あ、危ないよ。」
「危ないって何がですか?別にラブコメ大好きなあなたならこのぐらいの状況なんて、文字でも、絵でもたくさん見てきたでしょう。創作だとこれくらいの距離は当たり前ですよ」
何を言ってるんだ?これは現実だ。付き合ってない男女がこんな近づくのが普通なわけがない。やめてほしい。このままだと本当に頭がおかしくなりそうになる。
「それで、返事を教えてくれないか?もちろん、僕のこと友達として好きだなんて言うのは許さないからね?私と彼氏彼女の関係になりたいのか、なりたくないのかで答えてね」
「・・・まったく、トオルさんがそこまで先に進めたいなら、わたしだってそうしちゃいますよ。私とはどうですか?異性として好きか、嫌いかでお答えください。もしくはトオルさんと私どっちのほうが好きかで」
恋愛系の創作物にたくさん触れて過ごしてきた。二人の女性に迫られる作品なんていくらでもある。それを見るたびにもどかしくなって、優柔不断な主人公にイラついていた。女性がかわいそうだからさっさとどっちかに選べよ!どっちつかずな態度をとるな!と。自分が同じ立場だったらこうすると決めていたはずなのに・・・・・・・・
今自分のことをとてつもなく嫌いになっている。
たくさんの人に読んでもらったら続きかきます




