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ウォーデン・グランマティカ  作者: 二楷堂禅志郎
第二章 それはささやかな一歩
33/52

第三十三話 脱出行に降り止まぬ喝采を


 さて、苦節五日の時間を掛けて、漸く娑婆の空気を吸う事が出来た訳だが。一体全体ここは何処なのだろうか。

 人っ子一人居ない森の中、振り返れば朽ちかけた柱や吹き抜けとなった屋根の中、ぽつねんと侘し気な風情を漂わせた門柱が二本ばかり建っている。


 周囲にスイッチの類いは見当たらず、繋がれた機器も最低限度のそれである事から鑑みるに、あの装置は一方行へしか人や物を送れないらしい。とんだ欠陥装置だが、それ故に破壊や保護もされず自分たちが使う時まで残っていたのだから、それで良かったのかもしれない。


 取り敢えず外に出られただけ儲け物だ。イベントの参加が出来れば最低限はそれでいいのだから、その後人里を探すのはイベント終了後でも構わない筈。


 それよりも、今は大事なことが在るでは無いか。

 虚空に出現させたステータス画面、開いてみたのは朝方の事だが色々な所が様変わりしている。

 

 

 

 ────────────────────


 Title:勇猛果敢 New

 Name:アスラ

 Class:冒険者

 Level:12


 Status

 ・STR 15

 ・VIT 15

 ・AGI 20

 ・DEX 20

 ・INT 20

 ・MND 15

 

  LAK09

  CHA25


  BP:15


 所有スキル(残り0枠)

 ・剣術

 ・補助魔術

 ・探索

 ・解体

 ・考古学

 ・初級土魔術

 ・初級風魔術 New

 ・初級水魔術 New

 ・魔術知識 New

 ・初級雷撃魔術 New


 控えスキル欄

 ・心眼

 ・魔闘術

 ・錬金術

 

 ルーン

 ・『(サイト)』 熟練度:07

 ・『表』 熟練度 04


 固有魔法

 ・『魔眼』

 ・『郷愁の魔眼』

 



 ずらりと並んだ各種データ、幾らか追加されたスキルが有ったり、控えの方に回されたスキルが有ったりとかなりの変遷が見られると思うが、最大の変更点は称号欄の部分になる。

 忌々しい『模範囚』『脱獄囚』の軛から取り払われ、この度めでたく選ばれたのは『勇猛果敢』の称号。この称号自体は戦闘中の微量な補正を備えるのみだが、一番重要なのは称号が変わった事にある。


 実は今まで付いていた『~囚』の称号にはイベントの参加停止の効果があり、そのままではどうやってもイベントには参加出来ない所だったのだ。

 刑に服している身で遊び惚けるなど言語道断と言われてはそれまでなのだが、やはりこうしてゲームの世界に来ているのだからイベントには積極的に参加して行きたいでは無いか。


 何より、今の今まで地下で強制労働に従事していた為動画を満足に出せていないのだ。そろそろ月末も近付いてきている以上、ここでイベントに託けて大量放出しなければノルマを熟すことすら出来ない。

 流石に初手から獄中生活を垂れ流しにして、色物枠として認定されたら今後立ち直れなくなってしまうと云うのも根っこにあるが。



 まあ、それは置いておこうか。

 取り敢えず新規で取得したスキルは『雷魔術』を取る為に試行錯誤した結果であり、その大半が役に立たなかった事だけは此処に記す事とする。

 万が一にも同じような道を進みたい者が居たならば、この愚か者から言える事は一つだけ。『魔術知識』はクソの役にも立たないぞ、だ。


 それはそれとして各種『初級~魔術』はかなりの収穫と見ていいだろう。少なくとも、ここに羅列するどころか頭の中に呪文の効果を詰め込む事すら覚束無い程、大量の手札が手に入ったのだから十分黒字として見ていい筈。

 レベルも十分上がったし、イベントに参加しても見劣りなんてしないだろう。



 それに何より、今から()()()が手に入るのだから、この位でも十分なのだ。



 インベントリから取り出した二つの玉。薄っすらと光るオーブが手の中でコロコロと転がっている。どこからどう見ても相変わらず『発掘品』とだけ表示されるが、中身が分かったら詰まらないのだから仕方がない。


 勿論、裏技を使わなければ、の話だが。


 矯めつ眇めつ眺めようとも右眼の視界に映るのは、代わり映えしない画面のみ。

 しかしだ、これが『郷愁の魔眼』を通して見たならまた違った光景が見えてくる。


 光り輝く玉の表面、肉眼では白としか見えないその光からも、自分の魔眼は様々な情報を拾い上げてくれたのだ。

 例えばこれがどうやって長期保存を可能としているかの情報であったり、いつ何時に保存された物なのかであったり、果ては()()()()()()()()()であったり。二次情報までは引っ張っては来れないが、一次情報くらいであればかなりの深さまで読み取れるのがこの魔眼。伊達に解析系で食ってきた訳では無いとも。


 木漏れ日に翳した二つの玉が、ゆっくりとその輪郭を崩し中身の姿を顕わとさせる。

 とは言え中身が何なのかは既に判明している為に、期待や逡巡の類いが思考を巡る事は無い。強いて言うなれば好奇心くらいの物だろうか、実際如何にして『ルーン』を封じて見せたのか、その技術自体にはかなりの関心が向かってはいるのだ。


 そんな事を考えている間にも、光り輝くカプセルはその身を崩して小さな光へと変じさせ、何処かへと消え去って行っている。

 魔眼でもその詳細が見えないという事は魔力による変異で無い事は確定なのだが、そうとなれば逆にどのような技術を用いているのだろうか。本当に興味関心が尽きない世界だ。


 そうして残ったのは掌の上でくるりと回る()()のルーン。改めて魔眼含めて詳細を覗くが、しかし幾ら見てみた所で左の視界に何かが映る様子は無い。

 まあ想定できた事ではあるので肉眼で確認できる情報だけでも見返して見ようか。実の所、ルーンである事は始めから分かってはいたのだが、その内容に関してまでは幾ら覗いても見えなかったのだ。その時点で今の魔眼では手に負えない事は感じていたが、実際に見てみるとその隔たりは想像以上に大きいのだと思い知らされてしまった物である。


 とは言え、今大事なのはルーンが手に入った事実一つ。それ以外の些末事は一旦脇に置いておこう。


 虹色に煌めく『付』のルーンと、七色に輝く『擬』のルーン。

 微細な色の違いはあれど、どちらも内包している神秘の多寡に違いはなく、そこに在るだけで周囲を威圧するかの様な存在感は天命のルーンに匹敵する程の物がある。


 前回手に入れた『表』のルーンの時と比べ、取得に時間が掛かっているのもそれだけこれ等のルーンが強力な代物であるからなのだろう。

 或いは、一度に二つのルーンを手に入れる事など運営も想定していなかっただけかも知れないが。


 それなり程度には時間が掛かっていたと思うのだが、周囲の光景には依然何ら変化なく、人影一つと見えはしない。諸々の準備のためには好都合だが、ここから人里を見つけるのは随分と骨が折れそうだ。あわよくばイベント終了時自動的に町や村に移動できたらいいのだが、それが可能かどうかに賭ける為にも、今は土台固めに執心する事としようではないか。


 門柱に背を預け身体をゆったり休めながら、ステータスの項目から一つの画面を目の前に開く。

 瞬間目の前に広がるのは膨大な量のデータの羅列。これで魔眼の効果を受け付けていないと言うのだから驚きだ。微に入り細を穿つが如く多岐に亘る様々な情報は、そのすべてが現在使用可能な『固有魔法』構築の為のパラメーターであり、この膨大な情報の海を掻い潜らなければ求める魔法には手が届かないのだから全く以って面倒な事極まりない。

 感覚的に構築できるようキャンバスのような画面があったり、数式やデータ入力機能を利用してシステマチックに構築する事も可能になっている様なのだが、正直複雑すぎて逆に訳が分からなくなっているような気がしないでもない。


 とは言え、そこまでハイテクなこの機能も悲しいかな今の自分には宝の持ち腐れ、正に見習いに魔法の杖と言った所だろう。

 実際今回作りたいのはそこまで大掛かりでも無ければ、複雑怪奇な代物でも無い。効果を聞けば誰もが理解できる、その程度の簡単な魔法なのでささっと作ることが出来るだろう。

 

 幾つかある魔法の効果の雛型から目当ての物に近しい物をいくつか選び、それらの情報を突き合わせながら不要な部分を削り取る。

 効果は単純に、魔法の文言も単純に。解釈次第で如何様にも取れるように、その上で肝心要の部分は揺らがぬように。

 ああでもないこうでもないと、頭を捻る事暫し。出来上がった『魔法』がコチラになる。

 


 ────────────────────


 Title:勇猛果敢 New

 Name:アスラ

 Class:冒険者

 Level:12


 Status

 ・STR 15

 ・VIT 15

 ・AGI 20

 ・DEX 20

 ・INT 20

 ・MND 15

 

  LAK09

  CHA25


  BP:15


 所有スキル(残り0枠)

 ・剣術

 ・補助魔術

 ・探索

 ・解体

 ・考古学

 ・初級土魔術

 ・初級風魔術 New

 ・初級水魔術 New

 ・初級雷撃魔術 New

 ・錬金術

 

 ルーン

 ・『(サイト)』 熟練度:05

 ・『凝』 熟練度 03


 固有魔法

 ・『見返りの魔眼』

 ・『鈴鳴り具足』


 


 うむ、実に素晴らしい。文句の付けようもない程しっかりと()()()()()()ではないか。


 矯めつ眇めつ一通り様々な所を眺めた後に、取って置いた三つ目の発掘品を復元する。

 実はこれの中身は一切分からなかったのであまり期待はしていなかったのだが、なんと中から出てきたのは低級品には見えるものの一式揃った革の鎧。今一番必要としていた装備であった。

 何となく臭いが気にはなったので一応嗅いでは見たものの、何かしらの臭いが付いているという事も無く、晴れて安全帽に続く装備を手に入れたのである。

 これが無ければ最悪上裸で挑まなければならない所であり、自分の尊厳を守り通したという意味において今までで一番役に立った装備と言えるだろう。


 

 これで取り敢えずの準備は完了、後は安全そうな場所を見つけてログアウトし、イベントに備えて英気を養う事としよう。

 この一面の森の中で、そんな場所が見つかるかどうかが一番の難問の様な気がしないでもないが。

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