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ウォーデン・グランマティカ  作者: 二楷堂禅志郎
第二章 それはささやかな一歩
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第十五話 装備は『装備』しないと意味がない


 さて、苛烈極まりないボスとの死闘(当社比)を乗り越えた後、物語や他のゲームであればトントン拍子に次の町へと辿り着いても不思議では無いのだが、そうは問屋が卸さぬらしい。


 未だに聳え立つ摩訶不思議な扉は、されど落ち着いた黒一色の拵えへとその装いを変えていた。

 恐らく自分がルーンを獲得したことで、見える光景が変わっているのだろう。その証拠に先程まで居た面々は、特にその事に触れる様子もなかったのだから。


 問題はだ、ここからどちらへ向かえば良いのかさっぱり分からないと言う点だろう。悲しいかな戻る道すらも朧気な記憶の彼方へと赴き、何処から来たのかも判らぬ始末。方向音痴では無い筈なのだが、こうも変わらぬ緑一色の景色の中では方角の判別程度でしか判断できない。

 仕方がないからこの場でリザルト確認に移るとしよう、だだっ広い草原なのだから誰かが近付いてくれば嫌でも判る筈だ。


 開いたステータス画面に映るのは新規獲得の『称号』と『ルーン』の文字、称号の方は大方ボスの初討伐とかその辺りなのだろうし、ここは先にルーンの確認から行こうではないか。

 

 ステータス欄の最下層、ルーンの欄に記載される『表』のルーンと並ぶNewの文字、待望の新ルーンの習得である。されどここで見て頂きたい表記がもう一つ。


 


────────────────────


 Title:森の巧者 New

 Name:アスラ

 Class:冒険者

 Level:3

 

 Status▼


 ルーン

 ・『(サイト)』 熟練度:02

 ・『表』 New 熟練度 00


 固有魔法

 ・『魔眼』

 ・――

 


 さて、この追加された表記は何だろう。熟練度なる文面を見るに、恐らくはボス戦闘での考察は中々にいい線行っているのではなかろうか。そうは思うがこの数値が高いのか低いのかも判らなければ、軽々な判断は下せないのだが。表記を見るに二桁は有るのかもしれないが、それが百手前までなのか十数で終わるのか、内容次第ではあるが想像以上にこの世界の仕組みは奥が深そうで楽しみである。


 それはそれとして新しい固有魔法を作成できるようなのだが、正直な所ここからの成長方針をどうした物か悩みどころだ。

 何せ新しく手に入れたのは『表』のルーン、様々な物を『表』示するためのルーンなのだろうが、自前で持っているのが『見』のルーンとなっているのだ。ハッキリ言って方向性だだ被りである。


 無論悪くは無いのだろう。方向性が被っているとは言え二つの要素は別種の代物、相乗効果を発揮させることも出来ると考えれば決して相性としては悪くない筈。問題は今そこまでの能力を要求されるようなことがあるかどうかだ。


 とは言え折角の新しい力、活用せぬのは勿体ない、と言ったところで新しく組んだ魔法が此方だ。

 

 

 『郷愁の魔眼』視認した対象物の来歴を確認できる、遡ることが出来る時間は魔法の行使者の能力と対象物の耐干渉力によって異なる。


 とまあ簡単に言えば情報を抜き取るための魔法になる訳だ、あくまで現在の情報ではなく過去の情報である点がミソである。正直な所現在の情報も見たかったのだがその場合のコストが予想以上に嵩んだ為断念したのだ。

 詠唱などの代償行為を挟めば幾分かは手の届く範囲に収まっただろうが、自分が求めているのは秘匿性の方であり馬鹿正直に相手の目の前で堂々使う気は無いが故、今回は用途を狭めた結果こうなった訳だ。


 ……恐らく、単純にステータスの看破、表示の方向性に特化させていれば終盤まで使い減りのしない、潰しの利く看破魔法が習得出来た気がしないでもないがまあ良い事にして置こう。今からでも『魔眼』の分の魔法枠にねじ込む事も出来ないでもないが、そこまでして魔眼の秘匿性と即応性のアドバンテージを捨て去るだけの理由も無いのだ。入れ替えたくなってからでも構うまい。



 ルーンの確認と新しい魔法の用意は整ったので、お次は称号の方を見に行こうか。


 新規で追加された称号は『強者に打ち勝てし者』と『傲岸な勝利者』そして『真理の足跡』の三つである。始めの称号はボスの初討伐を示す称号であり、特段特殊な効果などは存在してはいないようだ。最後の称号も二つ目のルーンを獲得した際に取得できる記念称号の類いであり、目新しさは欠片も無い。では、『傲岸な勝利者』はと言うと、これは少しばかり趣が異なる代物の様だ。

 ボス戦闘をノーダメージで勝利すると獲得可能なこの称号、追加効果としてボスを含む『自身よりもレベルが上の相手に対してダメージボーナスを得る』効果が付随している。効果量自体はそれほど大きな数値ではないが、格上相手に有利を潰せるのは大きかろう。正直使い処に恵まれるかどうかも判らぬ点は『森の巧者』と同じだが、場所を問わないのははっきりとした利点と言える。ここで付け替えてしまっても構わないだろう。


 取り敢えずはステータスの更新、確認作業も終わった所で、さてここから先はどうした物だろうか。

 このまま素直に町へと戻りながら残りの兎を討伐し、依頼完了の報告をしてから改めて次の町を探しても良いが、ほっぽり出して当所なく気の向くままに彷徨っても別に良い。


 要はどちらがより楽しくなれるかに在るのだが、それはそれとして一目見てみたい事もあるのだ。別段いくら時間が掛かったとしても気にはしないが、しこりの様に胸の奥に蟠るこの違和感を、長々放置しているのもそれはそれで不愉快な事。


 そうは言っても本当に宛ては無いのでどうした物かと、悩みに悩んでいる所なのだ。


「ま、ケセラセラ(何とかなるさ)。今は風の吹くまま進もうか」


 足元の小枝を勢いよく頭上目掛けて放り投げる。風に攫われ揺れながら落ちたその枝の向かう先は……


「あっ、どっちが先端だろ。……ま、良いや、あっちに向かってレッツラゴーっと」


 何、どう転んでも死にはしないのだ、少しくらいは好きなようにしても良いだろう。心地よい風に背を押されながら一歩一歩を踏みしめ進む。しがらみも、わだかまりも、使命も無い只の道。どこをどう進もうと、誰からも何も言われない、ある種当たり前でいて実のところはそうでない路。このまま進めば一体どこに辿り着けるのか、その先に自分の見たい光景は広がっているのだろうか興味関心は尽きないが、たまさか腹が減って来た。


「……そう言えば、空腹システムがあるんだっけか」


 さて、開いてみたインベントリ内に有るのは初心者装備一式と、使い古した盗賊のお下がりが幾つかそれとお情け程度の回復剤。清々しいまでの空欄の数が、まるで今の胃の中身を暗示しているようで感覚など無い筈のそれが、殊更に自己主張を発しているように感じてやまない。というかこれを見る限り、今の今まで自分は装備の類いを身に着けてはいなかったのでは無いか、今さらながらの羞恥心が沸き上がる。


 周囲を確認、人気が無いのを見計らってから徐に『装備』のボタンを押下した、その瞬間。ズシリと全身に掛かる重さと違和感、下を見ればそこにはしっかりとした鎧を纏う自分の姿が。


「……Oh,no」


 あの人たちは何も思わなかったのだろうか、否、だからこそあそこまで興味を引いてしまったのだろう。自分とて、裸一貫に鉄剣一つぶら下げて冒険に出るような輩が居れば、奇特(危篤)な者を見る目を向けてしまうに違いない。

 あからさまに頼りなさげな鎧であるが、それでもあるとないでは大違いだろう。少なくとも、なくても良いと高を括って狩場に出ては、けちょんけちょんにされて死に戻る輩の一人二人は居るに違いない。それと同列にならなくて良かったと安堵するべきか、知らず知らずの内に同列になっていたかもしれない可能性に慄くべきか、次からはちゃんと気を付けなければなるまい。


 盛り下がった気分のままでは旅に出るのも億劫だ、という事にして一度町に戻るとしよう。

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