第2話:初心者の壁と小太刀への挑戦
1.初めての練習!ボロボロのスタート
「新入部員、春野紗月! 今日からよろしくお願いします!」
風舞高校スポーツチャンバラ部、記念すべき初練習日。紗月は元気いっぱいに自己紹介を終えた。
体育館の真ん中では、先輩たちが次々と布の剣を振り、打ち合っている。風を切る音と鋭い「パシッ!」という音が体育館に響くたびに、紗月の胸は高鳴った。
(すごい…全員めっちゃ動き速い! これ、まるでバトルアニメの世界じゃん!)
部長の高瀬麗奈が、小太刀を紗月に差し出した。
「じゃあまず、基本の構えから教えるよ。小太刀はスピードが命だからね」
「はいっ!」
紗月は、手渡された柔らかい剣――小太刀を構えようとした。が――
「んぐっ…バランス…ッ!」
カクンッ!
姿勢が崩れ、そのままドテッと床に転んだ。
「ははは! 構えただけで倒れる新人、初めて見たわ!」
横で見ていた同級生の小山浩太が、腹を抱えて笑い出す。
「こら、浩太! 笑ってないで助けなさい!」
麗奈のツッコミに、浩太は手を差し出しながらニヤニヤしている。
「初心者あるあるだな~! 紗月、明日筋肉痛確定!」
「くっそー…! 私だって、ビーハン(ビーストハンター)なら百戦錬磨なのに!」
「ゲームと現実は違うんだよなぁ!」
(悔しい…でも、なんか楽しいかも!)
2.初心者あるある!空振りと筋肉痛
「打って、避ける! これを繰り返す!」
麗奈が見本を見せながら指導する。
紗月も先輩と向かい合い、小太刀を振る練習に挑戦した。
「よし、必殺! ビーハン流・一刀絶技!!」
空振り。
勢い余って、自分の肩に「ベシッ!」とぶつける紗月。
「いてっ! ……でも、これはノーダメージです!」
「何その実況!」
周りの先輩たちが吹き出し、紗月は頬を膨らませた。
「だ、だって…相手、速すぎるんだもん!」
1時間後――
紗月は体育館の隅に座り込み、両腕をプルプルさせていた。
「腕が…腕がもう動かない…」
「だから言ったろ。初心者はこうなるんだって!」
浩太が得意げに言うが、紗月は床に突っ伏しながら叫ぶ。
「ヒーローへの道が、こんなに遠いなんて…!」
3.挫折と観察力の片鱗
練習が終わり、紗月は体育館の床に寝転がった。
天井を見つめながら、ため息をつく。
(ゲームみたいにうまくいかない…。私、やっぱり才能ないのかな…)
その時、部長の麗奈が近づいてきた。
「紗月、最初はみんなそんなもんだよ。でもさ――」
「え?」
「途中で相手の動き、じっと見てただろ?」
「……そう、かな?」
「自分でも気づいてないかもしれないけど、相手の隙を見つけようとしてたんだよ。小太刀はスピードも大事だけど、観察力がモノを言う武器だからね」
紗月はハッとした。
(私、無意識に相手の動きを見てた…?)
「じゃあ、次はちゃんと当ててやる…!」
力の入らない腕を無理やり上げ、紗月は小さく拳を握った。
4.仲間との帰り道
練習後の帰り道、紗月と小山浩太が並んで歩いていた。
「明日、確実に筋肉痛だな!」
「うるさい…! 私はこれから急成長するから!」
浩太が大げさに笑う。
「紗月、マジでヒーロー気取りだな!」
「だってヒーローだって最初はレベル1なんだよ! 努力して強くなるんだから!」
「はいはい。まあ、頑張れよ!」
5.小さな決意
夜、自室の机の上に置かれた小太刀を見つめる紗月。
ふと、姉・彩花が部屋に顔を出した。
「どう、スポチャン部は?」
「めっちゃ難しい。でも…なんか楽しい。」
彩花はニヤリと笑う。
「ふーん。まあ、続けられそうなら良いんじゃない?」
「うん。絶対、うまくなってみせる!」
紗月は小太刀を手に取り、両手でしっかりと握った。
(ヒーローだって、最初は誰でも初心者だ。でも、努力して、戦って、強くなるんだ!)