攻防
5万円では全く足りないのを分かっていて、わざと5万円に姑は決めたのだと妻は思いました。
せめて10万円を貰い、それも食費と限定してもらわねば「子育てが出来ない」と、覚悟を決めた妻は夫に話をしました。
「お金のことだけれど!」
「またぁ~、もう5万円渡したよね。お母さんが…。」
「ええ、受け取ったわ。」
「受け取ったんなら、それでいいじゃないかっ!」
「全く良くないわよ。」
「もう、終わりだ! この話は…。」
「逃げないで! 父親なら!」
「逃げるぅ~ 何をぉ~ 誰が逃げたって言うんだ!」
「貴方よ! 話が終わって無いのに、一方的に終えようとしたでしょ。
それを逃げてる!って言うのよ。」
「逃げてない!」
「じゃあ、話を聞いて! 子どもを育てられるかどうかの瀬戸際なんだから…。」
「子ども?」
「そうよ。お金が無いと育てられないわ。」
「だから! 渡しただろ!」
「全く足りないわよ。5万円で食材を買って、貴方の下着も買って
子どものオムツも買って、医療費も…… 5万円で出来るって言うなら
貴方がすればいいのよ!」
「俺は働いてるんだ。お前は働いていないんだから、お前がするんだよ!」
「出来ないの? 5万円でやりくり!」
「俺がしたら、お前とは違って完璧に出来るぞ!」
「じゃあ、やってよね。そんなに自信があれば!」
「だ・か・ら、無理だ! 働いてるんだから!」
「働いてることを逃げの口実にしてるだけじゃないの。」
「これを見てよ。見てから言って。」
そう言って、妻は家計簿を開き、夫に見せました。
立派なマイナスの…赤字の家計簿でした。
「これっ?! 本当にこんなに使うのか?」
「信じられないなら会社の先輩の奥様に聞いてみてよ。」
「ご近所の4人家族のお宅、食費だけで10万円、ご主人様に貰ってるそうよ。」
「食費だけで10万円……。」
「それすらも、渡せないほど、貴方のお給料、低いのかしら?」
「お母さんは知らなかっただけだよ。今のオムツ代とか……。」
「そうかもしれないけれど、私に何も聞かずに決定したのは誰なの?!」
「…………。」
「食費だけで10万円ください。それがなければ子どもを育てられません。
私が話したいのは、それだけよ。 以上!」
夫は姑と話したようで、なんとか食費だけで10万円を貰えるようになったのです。
これが、姑の怒りを呼びました。
何かにつけて、今まで以上に難癖をつけてくるようになったのです。
信じられないことに「ラップを使って残ったおかずを冷蔵庫に入れる」と、「私に食べさせない気!」と、こんなことまで怒り出すようになったのです。
逃げるために、妻は実家に子ども達を連れて行く回数が増えました。
実家で子ども達へ「何か買ってあげて!」とお金を貰います。
それは、そのまま子ども達の名義の貯金にします。
実家のお陰で、子ども達にための貯金が出来ているのです。