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第167話 社畜、社長の本性を知る

「お主の力で……ワシを異世界に連れて行ってはくれまいか」


「…………」



 ソティを異世界に連れて行く、か。


 彼女が異世界人であることが判明した時点でそうくるかもしれないな、とは思っていた。


 これは彼女からの『要求』だ。


 もちろん彼女が先にアンリ様への諸々の支援を承諾した以上、交換条件とまではいかないだろうが……断るのはあまりよろしくないだろう。



 とはいえ、さすがに二つ返事で『ハイ』とも言えなかった。



 ……確かに、このままこの会社に勤務しつつ異世界とこちら側を行き来していれば、いずれ知り合いか関係者の誰かには知られることになったはずだ。


 それは間違いない。


 だから今回の件は、そのタイミングが少々早まっただけにすぎない。


 それに、今後もアンリ様の件のように一人では解決できないことが必ず出てくるだろうから、ある程度理解のある人間と事情を共有した方がいいという打算もあった。


 以前のソティならば、その第一の候補とはお世辞にも言えなかったのだが……元異世界人ということならば話は変わってくる。



 とはいえ『向こう』での境遇については彼女の自己申告なので、少々不安ではある。


 まあ、さすがにここで真っ赤な嘘を()いている可能性は低いだろうが。


 そんなことをして万が一にでも俺の信用を失えば、異世界行きは当然白紙になることくらい、ソティが分からないはずもない。


 もちろん、異世界に着いた瞬間いきなり態度を豹変させる可能性はゼロではないが……今の俺ならば、ある程度、彼女を牽制できる力を持っていると考えている。


 問題ない。



 ……もちろん諸々の条件については、あらかじめ言質を取っておく必要があるだろうが。



 ということで。



「……分かりました」



 俺は首を縦に振った。



「おお……!」



 俺の返答を緊張の面持ちで見守っていたソティ表情が明るくなる。



「とはいえ、今すぐとは行きません。まずはアンリ様の身の回りが片付いてからです。それに、向こうは現在彼女の件もあって普段より治安が悪化しているようです。社長はそれなりにお強いでしょうから問題ないとは思いますが……人間だけでなく、妖魔に当たる『魔物』も跋扈しているうえ、怪人クラスの『魔族』も存在する世界です。それでも構いませんか?」


「もちろんじゃ! もっとも戦闘の方は腕が(なま)っておるでな、できればお主に護って欲しいところじゃのう。のう、我が騎士様?」



 ソティは異世界行きが決まったせいか、調子が戻ったようだ。


 いつもの飄々とした態度でそんな冗談を言ってくる。


 はあ……


 老獪というよりは、そもそもが現金な性格なんだろうなこの人。


 まあ、ずっとウジウジされているよりはマシだけどさ。



「危険手当は出してもらいますよ……? あと私は騎士の身分はありません」


「なんじゃ? 異世界ならば騎士や貴族の位なんぞホイホイ授与されるものじゃろう?」


「なんですかその雑過ぎる異世界観は」



 ホントにこの人、元異世界人なんだろうか……?


 いやまあ冗談で言っているのはわかるけどさ。



「さて、冗談はここまでにしておくのじゃ。あまりお主の機嫌を損ねても仕方あるまいからのう」



 彼女も空気を読んだのか、肩を竦めつつではあったが真面目な表情になった。



「これでもワシは一国一城の主じゃ。人からの信用は決して金では買えぬことは、骨身に沁みておる。口約束であろうが、約束は約束。違えるつもりは毛頭ない」



 そう言って胸を張るソティ。


 その割には胡散臭い言動ばかり繰り返しているんですがそれは。


 ……とはさすがにツッコまなかったが、どこまで信用していいものやら。


 まあ、この調子ならば大丈夫だろうとは思うが。



「では、さっそく最初の約束を果たしてもらえるとありがたいのですが」


「おお、そうじゃった。あの娘には長い間待たせてしまったのう。寮の部屋については、すぐに調整するから待っておれ」



 彼女はそう言うと、大人姿に変身(・・)してから執務机の電話を取り、総務へ連絡を取り始めた。



「……うむ、私だ。女子社員寮に空きがあったな? ……うむ、一名だ。……、……分かった、506号室だな。……うむ、うむ……では、よろしく頼む」



 ……こうやって真面目に仕事しているときはちゃんと社長してるんだけどなこの人。


 魔法少女姿のときとのギャップがすごい。


 まあ、公私がきっちりしているのは社会人として当然(?)のことではあるが。



「……待たせたのう。ひとまず、女子社員寮の空き部屋に今日から入居できるよう段取りはつけておいたのじゃ。ワシのアテンドは必要かのう?」


「いえ、手筈さえ整えて頂ければ私とアンリ様で向かいます。……諸々のお手配、ありがとうございます」


「なに、このくらい大したことではない。さぁさぁ、お主の姫が待っておるぞ」


「…………」



 ということで、ソティに寮の場所だけ聞いてから社長室を辞した。


 というか段々彼女の性格が分かってきた。


 この人……機嫌が良くなると余計な一言を付け加えなければ気が済まなくなるタイプだ……



 ……異世界に連れて行くときは気を付けよう。

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