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第105話 社畜と夜シフト 下

「マキナさん、そっちをお願いします!」


「りょ、了解っ」



 ゴシックセイラとミラクルマキナを追いかけて寺の敷地までやってくると、彼女たちはすでに戦闘の真っ最中だった。


 お寺の敷地はすでにマスコットたちの『遮音結界』により隔離されており、隣接する墓地にはすでに大量の妖魔……スケルトンがあふれかえっていた。


 今夜出現した妖魔は土着というよりファンタジー側のやつららしい。


 剣や盾を持ち、中には兜や胸甲を身に着けたものもいる。


 数は……今のところ百体以上はいそうだ。



 大鎌に切り刻まれ、巨大な戦槌(バトルハンマー)に粉砕され飛び交う墓石に卒塔婆。


 それらに混じってスケルトンの骨片が飛び散っては魔力の粒子と化し、三日月の浮かぶ夜空に溶け消えてゆく。


 その壮絶な様子は一種の美しささえ感じさせるものだった。


 まあ本人たちは必死だと思うが。



「はあ、はあ……さすがに変身しないで現役の子たちに追いつくのは骨ですね」


「まあ、こっちは道なりに走ってきましたからね」



 そうはいっても、全力で走ってきたのでタイムラグは十数秒程度。


 目の前の戦闘は、まだまだ始まったばかりである。



「ちょっと、マキナさん!? いきなり目の前に出てこないでください! 武器が当たっちゃいますよ!?」


「はぁ!? あんたの死角から襲ってきたやつを排除しただけだし!」


「っ、それは感謝しますけど……その前の妖魔は絶対横取りしようとしてましたよね?」


「……ち、違うしっ!」



 二人の奮闘もあって、スケルトンは徐々にではあるが数を減らしつつある。


 だが、いまのところ連携と言える行動は見られず、てんでバラバラだった。


 もっとも二人とも戦闘能力自体は高いので、そこでどうにかギリギリの均衡を保てている、といった具合だろうか。


 というか、ゴシックセイラの持ち場にミラクルマキナが入り込んでお互いぶつかりそうになったり、ゴシックセイラが戦っていた妖魔をミラクルマキナが横取りする形になったりとかなり危なっかしい戦いぶりだ。


 しかもスケルトンは倒したそばからどんどん地面から湧き出てくるので、今のペースではジリ貧である。



「状況は……芳しくないですね。特に蒔菜さんの方が」


「ですねぇ」



 ……予想していたが、ゴシックセイラはともかくとして、ミラクルマキナの立ち回りはまあ酷いものだ。


 もちろん強化しまくったおかげで単騎の戦闘力自体はかなり高い。


 ハンマーを思い切り振り回すだけで、十体近くのスケルトンを一気に粉砕している。



 だが、自分の獲物以外があまり見えていない。


 端的に言って視野が狭いのだ。


 おそらく他の魔法少女と協力して戦った経験がないのだろう。


 さっきはゴシックセイラをフォローしたような動きをしていたが、なんだかんだで自分の獲物と見定めた妖魔を追いかけていった結果、たまたまそういう形になっただけのようだ。



 一方ゴシックセイラは先日の戦いの経験が生きているのか、比較的周りが見えているように思える。


 それにこれまでに何度か他の魔法少女と連携して戦った経験があるのか、立ち回りに多少のぎこちなさがあるものの、ミラクルマキナへの目配りも欠かしていない。


 ただ、ゴシックセイラはゴシックセイラで火力不足が否めない。


 なんたって武器が大鎌だからな。


 スケルトンのようにちょっと切り刻んだだけでは滅びない敵との相性はかなり悪い。



 ここは彼女が一歩引き、ミラクルマキナに指示を出すのが正解に思えるが……その相手が好き勝手動いているので、自分も目の前の妖魔を排除するだけで手一杯になっている。


 スケルトンは無限湧きとはいえ波があるうえ密集した場所とそうでない場所があるので、状況を俯瞰して見て的確に撃破していけば、もっと効率よく戦えるのだが……



「それにしても、これは少々二人の初研修には荷が重すぎるかもしれませんね。『スケルトンの軍勢』は、魔法少女になって数ヵ月の二人にとってはおそらく初見の敵です」


「そうなんですか?」


「ええ」



 魔法少女二人の戦いぶりから目を離さず、桐井課長が頷いた。



「ここ最近なんですよ、この手のファンタジーっぽい妖魔が増えだしたのは。以前もいなくはなかったんですが、ここ数ヵ月は顕著な増加傾向にあります。もっとも大半は強さも倒し方も『土着』の妖魔とたいして変わらないのですが……以前の妖魔大量発生事案のように、怪人クラスの妖魔が複数体同時に出現することもありますからね。要警戒対象ではあります」


「なるほど……」



 妖魔は大きく分類して『土着型』と『ファンタジー型』が存在することは、別室に配属された後に渡されたマニュアルで確認済みだ。


 そして後者は、どうやらこの世界ではない場所……異世界からやってくることも示唆されていた。


 異世界のダンジョンへと通じる扉が存在することと、『転移魔法陣』を設置する魔法が存在することを思えば、それはほぼ正解に近いのではなかろうか。


 それはさておき、目の前の戦況だ。



「くっ……こいつら無限に湧いてくるっ!」


「ポイントは稼げるけど……キリがないっ!」



 撃破数は二人合わせて百を超えているだろう。


 だが、おそらくいくら倒しても無限にスケルトンが湧いて襲ってくると思われる。


 俺はこいつらを見たことがあるから分かる。


 どこかでスケルトンを召喚し使役している死霊術師を倒さない限り、この状況は終わらない。



 ……というか、いた。



「あの、廣井さん。あそこに術者の妖魔がいますよね」


「ですね」



 桐井課長もすでに気づいていたらしく、墓地の外側……お寺の本堂付近を指さした。


 そこには魔術杖を持つローブの人物が柱の陰に隠れるようにして佇んでいる。


 間違いない。


 アイツがスケルトン無限召喚の原因だ。



「二人が気づくよう声をかけましょうか?」


「いえ、彼女たちが連携して事態に対処できなければ、今回の研修の意味がありません。術者がいることは伝えるべきでしょうが、その後は二人で協力して術者を発見・撃破するようにうまく誘導していきましょう」


「了解です」



 さすがは課長職。


 よく状況を俯瞰して見ていらっしゃる。


 まあ、俺もそのつもりだったが。


 ということで、二人の立ち回りを改善する方向で声をかけていくことにする。



「二人とも、このスケルトン無限湧き状態には原因がある! 術者がどこかに潜んでいるから、そいつを探し出して撃破するんだ!」


「そ、そう言われても……!」


「こいつらどんどん湧いてくるしっ……! 術者なんてどうやって探せば……!」



 もっとも、二人は体力と魔力が限界に近いのか動きにキレがなくなってきている。


 そのせいで、目の前の敵を処理するのに手いっぱいになっているようだ。



 だがここで直接介入してしまっては元も子もない。


 俺は心を鬼にして二人に指示を出す。



「もっと二人とも、自分の適性を自覚しろ! 妖魔に対してより有効打を与えているのは誰だ! 状況をより俯瞰できるのはどっちだ!」


「…………っ! マキナさん、お願いがありますっ」



 先に反応したのはゴシックセイラの方だ。


 彼女は群がるスケルトンを切り刻みつつ、ミラクルマキナに近づいていく。



「私はマキナさんほど強力な攻撃手段を持っていません。だからしばらくの間、私を護ってください。その間にどうにかして術者を探し出します」


「……30秒だけ! それ以上は無理だから!」


「それだけあれば十分ですっ!」



 一方、ミラクルマキナの方も現状を打破するためゴシックセイラを援護する必要があると考えたようだ。


 彼女の提案に渋々ながら頷いている。



「じゃあ行くわよ! ……はあぁっ!」



 ミラクルマキナが気合の声とともに炎に包まれた。


 先日、模擬戦のときに使った『カグツチ』とかいう力だ。


 ゴウゴウと彼女の武器を中心に業火が巻き起こり、周囲にいたスケルトンを片っ端から焼き尽くしていく。


 あっというまに骨の軍勢が数を減らしてゆき、半分ほどになった。



「……すごい。……見つけたっ、あれが本体ですね!」



 周囲のスケルトンが一掃され業火により周囲が明るくなったおかげで、ゴシックセイラの視界も一気にひらけたようだ。


 彼女は素早く周囲を見回すと、本堂の近くにいた死霊術師を発見した。


 素早くその場から跳躍。



「これで終わりですっ!」



 一瞬のうちに距離を詰め、銀の弧を一閃。



『ギィッ――――』



 死霊術師が断末魔を上げ消滅した。


 それと同時にその場にいたスケルトンがすべて崩れ落ち、淡い粒子と化して虚空に溶け消えていった。

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