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焔の婚約指輪

作者: 桜井正宗
掲載日:2023/04/20

「そうか、フレア。君は僕の秘密を知ってしまったんだね」

「秘密って……これは浮気でしょう! どういうことですか! わたしを愛しているっておっしゃっていたではありませか」


 上級騎士のスカイは、冷徹な表情でわたしを睨みつけた。


「愛なんてとっくに冷めていたさ」

「え……」

「見てごらん、婚約指輪はもう捨てたよ」


 悪魔のような表情でスカイは笑った。

 ……どうして、どうしてそんな顔ができるの。


「スカイ……あなた」

「そうさ、もう君に愛想を尽かしている。僕はね、伯爵令嬢のエリスに興味があるんだ」

「そんな、酷いです」

「もういいだろ。婚約破棄してくれ」


 その言葉が酷く突き刺さった。

 頭が痛い……。

 クラクラする。

 わたしの心が壊れそうだった。

 最近のスカイの行動はどこかおかしいと思っていた。

 けど、それでもわたしは彼を信じていた。なのに。


「…………後悔しますよ」

「それはない。僕は一瞬で君を忘れるよ」


 背を向け、去ろうとするスカイ。

 わたしを捨てたからには彼には天罰が下る。


「馬鹿な人」

「……なんだと?」

「指を確認した方がいいですよ、スカイ」

「指? 婚約指輪なら捨てたと言った――なッ!?」



 指を確認するスカイは驚いていた。

 直後、彼の指から“発火”が起こり、炎が全身に巡っていった。



「それがわたしの愛の証。婚約する時に言ったでしょう?」

「そ、そんな……この魔女が! 熱い、熱い、うああああああああああああ…………」



 メラメラと燃えていくスカイ。

 裏切るということは、そういうこと。


 わたしには特別な力があった。

 愛によって増幅する魔力。

 それを応用した指輪の力。

 婚約指輪に魔力をこめてあった。

 裏切りがトリガーになるように。


 やがて、スカイは燃え尽きてしまった。

 直後、エリスが現れて悲鳴を上げた。



「ス、スカイ様! ウソでしょう!?」

「エリス。よくも、わたしの婚約者を奪いましたね」

「この人殺し!!」

「そのセリフをそっくりそのままお返しします」

「え……?」

「スカイを殺したのは貴女。わたしから彼を奪ったから、こうなった」


 指を鳴らし、わたしは衛兵を呼んだ。


「フレア様、ご用件はなんでしょうか」

「この女、エリスが殺人を犯しました。彼女を捕らえなさい」

「分かりました」


 衛兵は、エリスを捕らえた。


「ふ、ふざけないで!」

「さようなら、エリス。もう二度と会うことはないでしょう」

「ふざけんな、この魔女!!」


 エリスは連れていかれた。

 最後まで醜く叫んでいたけど、もうどうでもいい。


 溜息をつくと、庭から人影が。


「やあ、フレア」

「クロウ」


 城伯にして幼馴染のディン・クロウが姿を現した。

 彼は今回のスカイのことを教えてくれた情報提供者だった。


「スカイは?」

「燃えて灰になりました」

「そうか。それは気の毒に」

「残念でなりません。愛していたのに」

「それほどまでにスカイを」


 そう、わたしは心の底から愛していた。

 でもその結果がこれだった。


「もうどうすればいいのか分かりません」

「フレア、俺の城へ来ないか」


 少し悩んだ。

 クロウのことは嫌いではない。

 昔から優しくて、背が高くて金の髪も美しいし、わたしには遠い存在だった。

 彼は多くの女性からアプローチを受けていたから……わたしなんて相応しくないと感じていた。

 でも、今なら……。


「いいのですか?」

「俺と君の仲じゃないか」

「ありがとうございます、クロウ」


「いや、いいんだ。それに、フレアと一緒にいたいと思っていたんだ」

「え、それってどういう……」


 彼は照れくさそうに背を向けた。


 ……もしかして。


 そっか、そうだったんだ。

 気づかなかったな。

 もう少しがんばってみよう。


 彼に好きになってもらえるように。

以上、短編版です。

連載版も検討中です。

続きが読みたいと思ったらでいいので、ブクマ・評価していただると嬉しいです。

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