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「ははは…まあ、こんなもんだよ」

 蛸山はガックリと肩を落とした訳でもない元気な声でそう言った。だが本心は、かなりガックリしていて再起不能状態だった。

「なんと言ったらいいか…」

 海老尾としても受賞を確信していたからか、返す言葉がすぐ見つからない。

「私はどうも、賞に縁遠いようだ…」

「いや、これは…何かの手違いでしょう。世界を救った所長をノーベル賞にしない世の中なんてのはどう考えても妙ですっ! 所長、もうウイルス研究はやめにしましょう!!」

「ははは…馬鹿なことを言うんじゃない。私達は国立微生物感染症化学研究所の職員なんだよ、海老尾君」

 蛸山は、今日は噛まずに上手く言えたな…と思いながら海老尾を(たしな)めた。

「すみません、つい、興奮して…」

「いや、正直なところ、私も少し予想外だったのは確かだ…」

「ですよね。世界を救った研究の第一人者を(はず)すというのは、どう考えても合点がいきません…」

「合点がいかなくても、これが現実なんだから…。私達は研究を続けるしかないんだよ、海老尾君。出世や名声は研究する者にとって無用だと、今回の件は教えてくれたんじゃないか?」

「まあ、所長がそうおっしゃるなら、そうなんでしょうが…」

 今一つ合点がいかない海老尾は、怒りが収まらない声でそう言った。

「海老尾君、今日は残念会だ、一杯やろう!」

「はいっ!」

 笑顔の蛸山に、海老尾は涙を流しながら返した。

 ところが、世の中とは奇妙な世界である。何がそうさせたのかは分からないが、その次の日、事態は急変した。蛸山がノーベル生理学・医学賞の受賞者として追加発表されたのである。

「ぅぅぅ…所長!!」

「海老尾君っ!!」

 感激の大声を上げ、二人は、しっかと抱き合った。

「ははは…今日は、残念会の取り消し会だっ!」

「はいっ!」

 二人は、笑顔でしっかと握手した。


                  続

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