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<83>

 昼前になり、二人は腹が空いていることに、どちらからともなく気づいた。いつもの研究所なら、二人の片方がどちらからともなく声をかけ、昼食にするのだが、戒厳令下の今は、少し事情が違っていた、だが、やはり腹は空くのである。

「所長、昼ですが…」

「ああ、そうだね。食糧は政府が先に空輸してくれたそうだから、()(ごの)みしなければ、ここ当分は困ることはないだろう」

「なんだ、そうなんですか!? そりゃ、有り難いっ!」

 食べるだけが楽しみの海老尾としては、最高内容の話である。思わず嬉しい本音が出た。

「ははは…君は食べることに関しては敏感だからね」

「はい、それはまあ…」

 海老尾は()えて否定しなかった。二度目の思わぬ衝突は避けたい…という意識が瞬間、働いたのである。

「空輸されたのはレトルトものばかりだそうが、君、管理室へ取りに行ってくれ」

「誰かいるんですか?」

「そりゃ、誰かいるだろう。私達二人だけ、ということはないはずだ」

「はい、分かりました…」

 海老尾は席を立つと研究室のドアから出ていった。蛸山がテレビのリモコンを押すと、政府の緊急記者会見場面が映った。蛸山がよく知っている官房副長官の蟹岡が、記者のインタビューに対し、四苦八苦しながら何やら話している。

『いえ、戒厳令をいつまで・・という期限につきましては現在、考えておりません。と、いいますか、現段階では考えられない状況下にある・・とお考え下さい』

「おっ! 蟹岡君じゃないか…。あいつ、テレビ映りがいいなっ!」

 蛸山はよく合う相手の蟹岡にヨイショした。蟹岡は、蛸山の声が聞こえる訳もなく、一生懸命に自分の地位を守るため、言葉には気を付けながら流暢(りゅうちょう)に質問に答えている。

『と言われると、今のところ、打つ手はないんですねっ!』

『はい、努力は致しておりますが、今のところは…』

 蟹岡は記者の追及を避けようと曖昧(あいまい)(ぼか)した。


                  続

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