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「さいでしたか…。研究所だと息が詰まるから、(なご)むモンがいるんでしょうなっ!」

「えっ!? ああ、まあ…」

 海老尾も蛸山と同じ言葉を繰り返し、(ぼか)した。

 定食を食べ終えると二人はお愛想を済ませ、隣の喫茶ぺアンへ入った。これもお決まりのコースで、研究所→大衆食堂・鴨屋→喫茶ペアン→研究所なのである。

 喫茶ペアンで気分の傷を止血し、二人は研究所へとUターンした。午前とは違い、午後のこれからが研究所の正念場となる。二人はふたたび、電子顕微鏡のモニターを見ながら、研究を継続させた。改変された研究所の方針は、ウイルスにはウイルスで・・というミクロ[微視的]理論が採用されていた。従来のマクロ[巨視的]理論による抗ウイルス対応[抗生物質]は、すでに限界を迎えていたからである。この方針は、ウイルスだけにとどまらず、キャンサー[悪性細胞]などにも言えた。

「先生っ!」

「なんだい急にっ! 驚くじゃないかっ!」

「そういや最近、急に頭髪が(わび)しくなられましたね…」

「何を言うかと思ったら…。だが、それは事実だな、海老尾君っ!」

 蛸山は、そう言いながら少し肩が()ったのか、肩や首を揺らしながら大きく腕を一回転させた。

「もう、そろそろ五十路(いそじ)(なか)ばですからね…」

「そうそう! だが私などは、まだ有難い方だよ。大学同期の中海(なかみ)なんか、丸禿(まるはげ)だからなっ!」

「N大の中海教授ですか…」

「そうだ…。系統遺伝というやつだなっ! 先祖のいい血統に感謝せずばなるまい…」

「先生の場合は裾野(すその)は大丈夫で、頂上だけですからねっ!」

「海老尾君、そういう言い方はないんじゃないかっ」

 蛸山は柔らかく笑った。

「すみません。おっ! こんな時間か…。先生、コーヒー淹れますねっ! いつものインスタントでいいですかっ!?」

「ああ、砂糖は多めに頼むっ!」

「はい、分かりました…」

 海老尾は洗面台前の棚に置かれたコーヒー瓶を手にした。それを見ながら、蛸山は先祖が糖尿の血統でなかったことに、改めて感謝した。


                  続

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