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<4>

 夏ちゃんが、この二人には付き合ってられない…とばかりに早々と厨房へ姿を隠すと、海老尾が小声でボソッと蛸山に()くでなく(たず)ねた。

「アメリカの製薬会社メラコがモラスピラニアを出すそうですねっ!」

「ああ、らしいな…。予防ワクチンから、やっと治療薬だ。我々もこうしちゃおれんぞっ! そうでなくとも、国産ワクチンが作れんのかっ! と小五月蝿いメディアの連中が(つっつ)くからなっ!」

「ですよねっ! しかし、今回、治験中のモレヌグッピーは先生、なんかやれそうな…そんな気しませんかっ!」

「ああ…。だが、口外は絶対ダメだぜ、海老尾君っ! 君は口が軽いからなぁ~」

「馬鹿、言っちゃいけませんよっ! 僕だって言っていいことと悪いことの見境(みさかい)はつきますから…」

「大丈夫かいっ? 君の大丈夫は、どうも信用できんからな」

「信用してくださいよっ!」

 海老尾が声を大きくしたとき、夏ちゃんが肉野菜定食とニラレバ定食をトレーに乗せて厨房から現れた。

「お待たせしました…」

 夏ちゃんは珍しく田舎訛(いなかなま)りがない愛想いい声で定食を置いた。二人は空腹だったのか、豚や牛が餌を(むさぼ)り食うように食らい始めた。

「ここのは、ほんとに美味(うま)いなっ!」

「ですよねっ! この香ばしい味はハートに沁みる一品ですっ!」

「鴨屋以外の店には入る気がしないんだから大した腕ですよねっ!」

『ありがとさんでっ!!』

 その声が厨房に届いたのか、厨房の奥から店主の大きな声が返ってきた。

「奥まで聞こえてるんですねっ! 大きな声は出せないな…」

「ああ…出せない、出せないっ! さっきの話、大丈夫かなっ?」

『ああ、熱帯魚のお話でしたなっ! 研究所で飼ってられるんですかっ!?』

「えっ!? ああ、まあ…」

 蛸山は危うく(ぼか)した。


                  続

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