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『分かりました。じゃあ、今日はこれで…』
レンちゃんは、スゥ~っと姿を消した。よくよく考えれば、夢の中だから当然と言えば当然である。
レンちゃんが消えると、海老尾はハッ! と目が覚めた。まだ窓サッシに映る外景は薄暗く、枕元の置時計の針は六時前を指していた。
もう起きるか…と海老尾はベッドから出ると寝室のクローゼットで出勤前の軽装に着替えた。
その後はマンネリのように研究所へ通う時間が過ぎていった。
「おはよう! 珍しく早いじゃないかっ!」
いつもは海老尾より早く研究所へ入る蛸山が、訝しげに声をかけた。
「おはようございます! 少し早く目が覚めたもので…」
海老尾は事実を有りのまま口にした。
「そう…。私も目覚めは早くなった…」
蛸山は海老尾に同調した。
「睡眠時間は短いのに、それでも眠くならないのはどういう訳なんでしょう?」
「齢の所為なんじゃないか? 私にはよく分からんが…」
「訊いときましょう」
「誰に…?」
「いや、何でもありません…」
「ははは…面白いことを言うね、君は」
「よく言われます」
海老尾は危うくレンちゃんのことを口にしそうになり、自虐して誤魔化した。
続




