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数日後の研究所である。
「治療してくれたらしいね? 有り難う」
「僕が治療した訳じゃないですから、所長…」
「ああ、赤鯛君だったね。まあ、君の根回しのお蔭でもあるんだから、礼は言っておかんとな…」
「その後、どうですか?」
「ああ、少しよくなったそうだよ。まだ、ぴっこを引いてるそうだが、歩けることは歩けるそうだ」
「ははは…それにしても、飼い主じゃなく犬が捻挫とは…」
「ははは…世の中ってのは、そうしたもんだよ、海老尾君!」
「瓢箪から駒・・って言いますからねっ!」
「そうそう! 瓢箪から駒・・これが発明、発見の元ということさ。既成概念にとらわれちゃいかん!」
「AIにお伺いを立てる時代ですからねっ!」
「よく考えてごらん。AIをプログラムしたのは人、AIにデータを集積させたのも人なんだ。そのデータがもし、ごく僅かでも間違っていたら、どうなる?」
「AIは無限大に先を読みますから、誤差極限に達しますよね」
「そうだっ! で、間違ったAIが出した結果を、人が鵜呑みして信じる」
「参考にするだけならいいですが、信じて、その通りにしますよね…」
「そうっ! 世の中はとんでもない間違った方向へ進むってことさ」
「人が機械を作ったんですからねっ!」
「私達は生存しようと強かに変異するウイルスに学ばねばならんのだよ」
「人間自身で試行錯誤するってことですねっ?」
「そうそう! 君も分かるようになってきたな…」
蛸山に褒められた海老尾は、少し自慢げな顔をした。
続




