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「ややこしい話だな…」
赤鯛は鬱陶しそうに、少し赤い顔になった。
「その親戚の犬が散歩の途中で捻挫したそうだ…」
「ははは…犬が捻挫したのか?」
赤鯛は鬱陶しそうな顔をした。
「ああ、人じゃなく犬が、だっ」
「それで?」
「ここまで言えば、お前にも分かるだろうが!」
「俺に治療依頼か…」
「まあ、そういうところだ」
「近くに動物病院があるだろうがっ!?」
「そりゃ、あるんだろうが、そこがお隣の奥さんの浅はかなところだ。どういう訳か、お隣りの所長が浮かんだんだろう…」
「所長は国立微生物感染症化学研究所だぜ。犬の捻挫が治せるとっ!?」
「浅はかだから、早口言葉のように覚えていたのが、ふと浮かんだんだろう」
「なるほどっ! で、希望日はいつだ?」
「出来れば数日以内って言っておられた…」
「よしっ! なんとかしよう」
赤鯛は獣医師の厳かな声で、格好よく頷いた。
続




