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川べりに薄っすらと屋台の灯りが見える。オデンを頬張りながら蛸山と海老尾が話している。
「医療事情は刻々と変化している。まあ、それはお上のお達しで、だがね」
「僕達には、どうしようもないですよね…」
「ああ、厚労省の指導方針には逆らえんからな…」
「個人で医院を開くしかない訳ですね」
「ああ、まあ、そうなるのかな…。私達はこれでも医療職群級の国家公務員でもある訳だから、荒縄で雁字搦めだよ、海老尾君」
「ですよね…」
二人は同時に深い溜め息を吐いた。
蛸山は所長だからいいとしても、所内には人間関係というものがある。多かれ少なかれ、他の研究員との接触は避けられない・・ということで、でもないが、海老尾は意識してお馬鹿に徹している部分がなくもない。むろん、生まれ持っての粗忽者だとは本人自身も自覚していた。蛸山に突っつかれることで、免疫的な体質が出来ていた。ナチュラル・キラー細胞のような体質である。
「親父さん、ここの月正宗は美味いねぇ~」
コップを傾けながら蛸山が赤く茹った蛸顔で世辞を言う。
「ははは…先生、やめて下さいよぉ~、月正宗が美味いのは当たり前の話なんですから…、今日は気分がいいや、私も飲ませてもらいますっ!」
「ははは…そりゃ、いいっ!」
屋台の親父もコップへ酒を注ぎ、グビリとひと口飲む。ふた口めには、グビリグビリと飲み干した。
「親父さんも結構、いける口なんだ…」
「はい そりゃもう、若い時分には、かなりやりましたから…」
「そうなんですか…」
海老尾が小声で話に加わる。三人の会話は、夕闇のベールが覆う中、大いに盛り上がった。
続




