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<13>

 次の日の合同会議は、総務部所属の各部及びセンターの代表二名が一堂に会し、9時過ぎから執り行われた。最初の内は、蛸山が兼務するウイルス第二部は質問されず、平穏無事に終了した。ウイルス第一部に質問は集中したのである。その後、昼食休憩でセンターの食堂に向かう蛸山と海老尾の会話である。

「案ずるより産むが(やす)しか…」

「でしたね…。この分じゃ、午後もスンナリ行きそうですね」

 海老尾が歩きながら笑顔で蛸山の顔を(うかが)う。

「…の、ようだな」

 蛸山も予想外の事態の進行に、少し油断していた。だが、この二人の目論見(もくろみ)は見事に(はず)れ、二人は()う這うの(てい)で浜松城ならぬ自室へ逃げ延びることになったのである。それは(あたか)も、三方ヶ原の戦いに似ていなくもなかった。会議は昼食休憩を挟み、午後一時半から再開されるようプログラムされていた。

 昼食休憩が瞬く間に過ぎ去り、合同会議はふたたび再開された。

「では、今後の方針をウイルス第二部も兼務されておられる蛸山所長よりお願い致します…」

「えっ!!?」

 MC[master of ceremony=進行役]を務める総務部長の波崎(なみざき)のひと言に、蛸山はパニクった。前もって波崎に頼まれていなかったからである。蛸山は思わず()だった赤い蛸顔になり、机上の原稿をしばらくガサゴソと(めく)りながら沈思黙考した。

『所長、P.3の末尾からP.4っ!!』

 海老尾が小声で助け舟を出し、蛸山は喫茶バッカスの打ち合わせを、かろうじて思い出した。

「…では、今後の研究方針の概要の説明を致します。総じますと、もはや、マクロ(巨視)的発想の研究方針は先の希望が持てません」

「所長、それはどういった意味合いでしょう?」

 研究企画調整センター長の貝原(かいはら)が唐突にMCの波崎を通さず、(たず)ねた。

「いや、(まった)く言った通りの意味です。抗生剤で(たた)くという一過性の手法は、もはや将来に希望の光が見い出せないということです。現に、VRE[バンコマイシン耐性腸菌]やVRSA[バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌]が生じていますから…。ウイルスだって、どんどん変異しながら強くなっています」


                  続

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