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第十九話 りなのさんも間に合わない

りなのさんの話は続く。


「このわたしが付き合いたいって言っているのよ。誰のことが好きなのか知らないけど、わたし以上の女の子なんているわけないじゃない。わたしを選ぶべきだと思うわ」


「昔の俺は、糸池さんのことが好きで、付き合いたいと思っていた」


「今でもそうじゃないの?」


「今は違う。いや、最初から違っていたんだ。俺にとって一番好きな子、素敵な子、俺の理想の人は、身近にいた。でも俺は、その子と疎遠になってしまっていた。遠回りをしていたんだ」


幼馴染の恋乃ちゃん。俺は彼女と小学生の時に恋人どうしになることはできなかった。


小学生の時に相思相愛になっていれば、二回も厳しい失恋の苦しみを味あわずにすんだ。


もうこれからは、そのような苦しみは味わいたくない。


「康夢くん、あなたは何を言っているの? 遠回りとかそういうことじゃなくて、あなたの理想の人はここにいるじゃない」


りなのさんは胸を張って言う。


ここまで言われると俺もりなのさんには言わなくてはならない。


もう、りなのさんには気がないことを。


りなのさんは怒るかもしれないが、仕方がない。


「糸池さん」


「わたしにもう一度告白してくれるの? もちろんOKするわよ」


微笑むりなのさん。


この笑顔は今でも素敵だと思う。


しかし、それでも俺は、りなのさんに言わなければならない。


「いや、違う」


「どう違うのよ」


「俺はもう糸池さんには、恋愛としての好きという気持ちは持っていない」


「わたしのこと、嫌いになったの?」


途端に悲しい表情になるりなのさん。


「嫌いになったわけじゃない」


「魅力がもうないって言うの?」


「魅力がないとも言っていない。糸池さんは美少女だと思うし、俺じゃなくったって、好きになる男は一杯いると思う」


「魅力があると思っているなら、わたしを選べばいいじゃない」


「魅力はある。でも俺の好きな人は違うんだ」


「わたしを選んでよ」


「もうそれはできない」


「なんでできないの? わたしのことをもう一度好きになればいいじゃない。わたしのこと、嫌いじゃないんでしょう?」


「好きか嫌いかと言われたら好きだ」


「そういう好きじゃなくて、わたしのこと、恋してほしいの」


だんだん悲壮感が増してくるりなのさん。


それにしても、なぜ今になって、こんなに一生懸命俺に対して言ってくるのだろう。


俺が告白した時にこういう気持ちになってくれたら、と思う。


でも、もし告白して付き合ったとしても、りなのさんとはうまく言っていただろうか。


彼女は、俺が思っていたよりも、自分の意見を押し付けてくるタイプのように思える。


そして、あまり人の気持ちというものを考慮してくれないところもあるようだ。


俺は、りなのさんに振られて傷ついた。


少しでもいいから、そのことを気づかってほしかったんだけど……。


そういうところはないようだ。


こういう性格だと、いずれケンカをする原因になったかもしれない。


そして、ケンカをしている内に、お互い嫌になって、あっけなく別れることになることも、十分可能性としてあると思う。


そう思うと、俺は、りなのさんに振られてよかったんだと思う。


あの時は、とてもつらい思いをした。


しかし、今は、恋乃ちゃんがいる。幼馴染で理想の人。


今はまだ恋人どうしではない。


でも少なくとも俺に好意は持ってくれている。


それだけでも大きい。


恋乃ちゃんとはいずれ恋人どうしになる。


りなのさんの誘いは受けられない。


「糸池さん、俺は何を言われても、恋をすることはできないし、付き合うことはできない。あきらめてほしい」


「あきらめるだなんて……。そんなことできるわけないじゃない。わたしは振られたのよ。傷ついているのよ。助けてくれてもいいじゃない。しかも、一度告白してくれたんだから、これであきらめるわけにはいかないの」


「俺に対して一生懸命になるより、イケメンの彼にもう一度アプローチするとか、全然違う人にアプローチするとか、そういう方が建設的だと思う」


「わたしは、わたしは、康夢くんがいいの」


甘い声で言う、りなのさん。


そう言われると、少し心が動きそうになる。


性格的に苦手なタイプだとは思うが、美少女だ。


今好きな人がいなければ、心が傾いていくことだろう。


しかし……。


恋乃ちゃんと相思相愛になるのが、俺の一番の目標。


ここで迷ってはいけない。


「糸池さんの今の気持ちは理解してきた」


「それじゃあ、わたしを選んでくれるの?」


「選ぶかどうかは、理解するのとは別の話だと思う」


「理解してくれるってことは、選んでくれるってことじじゃないの?」


「気持ちは理解できる。俺のこと好きっていってくれるのはうれしいことだ」


「それならもうわたしを恋人にするってことでいいじゃない」


「それはできない。俺には好きな人がいて、その子と恋人どうしになりたいと思っている」


「まだ恋人じゃないなら、わたしでいいじゃない。第一その子と恋人どうしになれるかどうかもわからないないのに」


「俺はその子と恋人どうしになる。そう決めているんだ」


「ここまで言ってもわたしを恋人にしてくれないの……」


りなのさんは悲しい顔をする。


「俺、じゃあ帰るから」


俺は歩き出す。


これで、りなのさんも俺のことをあきらめるだろう。


お互いにとって、これが一番いい選択だと思う。


「康夢くん……。もう間に合わないっていうことなの……」


りなのさんは力なくつぶやいた。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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