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第三章 一か月が経ちました

 まずママの家を紹介しよう。

 ママの事務所はモモにココにムギが住む一軒家だが、その隣にもう一つ、ママの住居もある。基本ママはここで暮らしていて、仕事やモモの特訓の日だけ事務所へ顔を出す。

 しかしママの家はそこだけではない。何と事務所から見える家屋やアパートに倉庫全てがママの所有物だ。

 大きい倉庫は射撃場だ。事務所から隣の隣の隣は医療施設で手術ができる。アパートはすべて図書室で表札代わりに本の案内板が置いてある。その隣のアパートは食料庫でカリカリご飯に米や味噌、醤油など日持ちもする食べ物が入っている。そして事務所の真正面が武器庫で裏の倉庫は射撃場だ。

 ここら一帯はママの殺し屋育成所なのだ。

 そこを踏まえて、モモの一日のスケジュールはこうだ。

 朝の六時に起床し、アマにご飯を上げて、その後朝食を作る。万が一米やら食料が足りなければ食料庫から持ってくる。

 メニューは高カロリーが条件だ。タンパク質、糖質、脂質、すべてが体作りに必要となる。今日のメニューは朝からラーメンどんぶり二杯の唐揚げカレーだ。ジューシーな唐揚げが放つ旨味タップリの匂いとスパイスの利いた辛口カレーのコンビネーションは最強だ。それが食べ終わると食器洗いに訓練。徹底的な肉体強化だ。自宅の二階に作られた狭い筋トレルームでバーベルやダンベルに自重を使った筋トレを一時間。片手懸垂20回、ベンチプレス150キロ、デッドリフト300キロ、スクワット250キロができるのが目標だが、今はようやく懸垂が二十回できるようになったばかり。ベンチプレスは80キロ。デッドリフトは150キロ。スクワットは100キロだ。

 筋トレが終わると二十キロのマラソン。毎日町内をぐるぐる走るから、自然と道は覚えた。

 昼前。疲労で気絶しそうだ。だがアマのご飯やりと昼食を作らないといけない。

 昼食は豚骨ラーメンだ。ステーキのような分厚いチャーシューが三枚入っている。背脂の混じった白濁色のスープと背脂にニンニクにコショウの香りは最高だ。そして山盛りのご飯を二杯。胸焼けするがしっかりと食べる。そして食器洗いだ。

 昼休みなど無い。射撃訓練が待っている。弾薬や武器が不足していたら武器庫へダッシュ。

 まずは銃の組み立てやメンテナンスだ。ハンドガンだけでなくマシンガンなどあらゆる銃を弄り回す。そうすることであらゆる銃を扱えるようにさせる。それらが終わると広さ50メートルの射撃場に移動する。

 最初はハンドガンだった。次はショットガンだった。今は目標に当てるのが難しいサブマシンガンだ。百発百中でないと怒られる。反動でぶれるマシンガンは一発当てるのすら大変なのに、厳しいノルマだ。

 濃密な銃の訓練が終わると次は体術の訓練だ。射撃場の隣の倉庫で、マーシャルアーツとナイフ術に実戦向きなママ秘蔵の殺人術を体で教え込まれる。ママはもちろんココや小柄なムギにも歯が立たない。射撃に比べて体術はまだまだだ。それでもそこら辺の不良一人くらいなら倒せるような気がする。

 体術の特訓が終わった。疲労困憊だ。だが休ませてくれない。変装術の訓練が始まる。

 まずは特製のマスクと服の着脱を速やかに行う練習だ。目標は一秒未満で女子学生から男子学生になること。大変だ。いくら練習しても五分はかかる。だから叱られるし、叱られた後も慰めの一つもなく声帯術の特訓が始まる。男言葉も一緒に練習する。仕草も練習する。それらが終わったらまたしても射撃訓練と筋トレにマラソンだ。休む暇など無い。

 それが終わったら読唇術やハッキングなど細かいテクニックを学ぶ。勘弁して欲しい。

 こうして一日の特訓が終わる。しかしモモの仕事は終わらない。

 アマにご飯を上げた後夕食を作る。メニューは焼き鮭にアジの刺身にぶりの照り焼き。日本食の慎ましい仄かな魚の香りがする。もちろんご飯は山盛りが二杯。漬物や煮物もある。

 家事は無くならない。急いで洗濯機に衣類を放り込み、その間に食器を洗い、部屋の掃除をする。そして洗濯物を干す。これで家事は終了だ。時刻は八時。眠くて仕方ない。

 だがそれでも寝させてくれない。最後にママの健康診断がある。

「体つきは良くなったわね」

 ママはモモのお腹や太もも、腕、肩、胸、背中の弾力や見た目を確かめる。

「筋肉もしっかり付いて来てる。身長も5センチ伸びてる。体脂肪も標準値。病気や怪我の兆候も無し。想像以上に良い調子ね。あと二か月もすれば、とりあえず形になるわね」

 ママはパソコンにデータを打ち込む。その間、モモは直立不動だ。

(このままだとボディービルダーになっちゃう)

 筋肉ダルマは醜くて嫌いだが、殺し屋になったからには仕方ない。

 そんなどうでもいいことを考えて暇つぶしする。

「この訓練を一年続ければ、あなたは最高の殺し屋になれる」

 ママはデータを打ち込むと、真剣な眼差しをモモに向ける。

(またか)

 いつものお小言だ。早く終わって欲しい。でもママはモモの気持ちを無視して力説。

「よく聞きなさい。あなたはどんなに鍛えても、ココのように凄まじい筋肉を見に付けることはできない。どんなに体を磨いても、ムギのように男を魅了する体になることはできない。でもそれに気を病むことは無いの。あなたには別の才能がある。銃弾すら止まって見える集中力。それはもはや超能力の域。だから相手がどこを狙うか、レーザー光線で照準を合わせられたかのように感じ取れる。これはココにもムギにも私にもない能力よ。素晴らしい!」

 ママは自分の世界に入ってしまったようだ。モモが小さく欠伸をしても気づかない。

「今のあなたに足りないものは速さ。今のあなたは集中力した時、時の流れが0.00001倍速となって見える。あなたの一秒は相手にとっては0.00001秒しか経って居ない。あなたは標的の100000倍の速度で動けるのと同意なの。しかし今のあなたは相手だけでなく自分すらスローモーションに見えてしまう。だから速さが必要なの。目標としては集中力した時だけ、相手の100000倍の速さで動けるように成ることよ」

「いくら何でも100000倍は無理だよ」

 モモはママの突拍子もない目標に苦笑い。いつものことだ。

「無理とは何だ!」

 ママはいつものように大激怒。

「確かに100000倍で動くのは無理だ! だが100000倍に動いているように見せることはできる! スムーズなリロード! 淀みない体捌き! それらを積み重ねることで100000倍の速さで動けるようになる! そのための体作りでそのための訓練だ!」

 ママは怒ると男みたいな声色と口調になる。

「まだ自分の才能が分かっていないようね」

 ママは深々とため息を吐き、モモの両肩を掴む。

「あなたは私の後継者になるの! 最高の殺し屋に! ならないといけない!」

(このテンション。ついていけないな)

 モモは作り笑いするしかない。それに気づいたのか、ママは不機嫌そうにそっぽを向く。

「お風呂に入って、アマちゃんのシャンプーと毛づくろいをしなさい。それで今日は終わり」

 ママが家を出る。そこでようやく、モモは自室に戻って布団に倒れ込めた。

「今日もしごかれまくったわね」

 ココは大きな布団の上で、ムギとポテトチップスを抓みながら苦笑いする。

「濃密すぎるよ……」

 指一本動かしたくない。

「モモ。ポテトチップス食べる?」

 ムギがコロンと寝返りを打ってポテトチップスの袋を差し出した。

「ありがと」

 一枚取って口に運ぶ。塩味が美味しく、さらに眠くなる。

「モモちゃん。お風呂入ってないしょ。ママに怒られるよ」

「ああ……そう言えばアマちゃんのシャンプーと毛づくろいもあった」

 体を起こそうとする。しかし柔らかい布団が体にくっついて離れない。

「ムギ。また一緒にモモちゃんの体洗ってあげよ」

「仕方ないわね」

 ココがモモをおんぶし、浴室へ運ぶ。ムギは眠たげなアマを抱っこして来る。

「二人とも~体洗って~」

「はいはい」

 ココはモモの頭を洗う。ムギはモモの足を洗う。モモはアマにシャンプーする。汗の匂いが消えて代わりに柑橘類の甘酸っぱい匂いになる。

「アマちゃんの体洗えるなら一人で洗えるでしょ」

「無理だよムギちゃん~」

 モモは顔を上げながら右足をムギの膝の上に置いて、アマの背中をシャカシャカ洗う。

「髪は終わったから万歳して」

 モモはココに言われた通り両手を上げる。そこにココが背中を、ムギが胸を洗う。アマは体をブルブル振って体の泡をまき散らす。

 体を洗い終わり綺麗さっぱりしたらアマと一緒に湯船に浸かる。

「アマちゃんまで風呂に入るとは思わなかった」

 ココはモモの上でゴロゴロ気持ちよさそうにするアマの頭を撫でる。

「ルナさんって猫が好きなの?」

 モモはアマを持ち上げて蕩けた目で頬ずりする。

「なんか好きみたい」

「可愛いところあるね」

「私たちの前じゃ鬼だけどね」

「誰が鬼かしら? 詳しく聞きたいわね」

 ママの声がして三人は背筋を伸ばす。アマはペロペロ手を舐める。

「ママさん! どうしました! 一緒にお風呂入りますか!」

 モモは引きつった笑みで必死に話を逸らす。ママはそれにため息。

「伝え忘れたけど、私は明日から二か月留守にするわ」

「二か月も?」

「神奈川に散らばるターゲットを殺しに行くわ。だからそれまであなたたち三人」

 ママはビシッと三人を指さす。

「訓練をサボるんじゃないわよ! サボったらその分だけ寿命が縮むと思いなさい!」

 ママは言うだけ言って階段を上がった。

「二か月も楽できる!」

 モモは笑みを抑えられない。それはココとムギも同じだった。

「モモちゃん! 明日出かけよ! 皆で食べ歩きしよ!」

「ムギは新作の洋服買いたい!」

「食べ歩きに洋服! なら川崎が一番! あそこ治安悪いけど店はある! 案内してあげる!」

 三人はウキウキだ。

「モモ。今聞き捨てならない話が聞こえたんだけど」

 そこにママがやって来る。

「ママさんは早く仕事行ってください!」

 モモは堪らず声を上げた。


 ママが居ない朝、モモはいつものように山盛りのご飯を二杯食べる。

「ママが居ないんだからそんなに食べなくて良いのに」

「何だか食べないと落ち着かなくて」

 モモはココと朝食を取りながら笑う。ムギは今もお眠だ。アマはモモの膝の上だ。

 食べ終わるといつものように筋トレと射撃、変装術の訓練。マスクの大男を殺すためにも、殺しの技術は落としたくない。

「これじゃあママが居ないのにお出かけできないわよ」

 優しいココはモモの訓練に付き合いながら苦笑い。

「今日の訓練はこれで終わり。お昼から完全にオフ」

 モモはサブマシンガンで的をハチの巣にする。

「ムギちゃんってルナさんが居ないといつもこんなに寝てるの?」

「ムギは基本だらしないから。ママが居ないとゴロゴロしたりネットしたりゲームばっかり」

 ココはスナイパーライフルで的を撃ち抜いた。

 訓練が終わったらようやく休みだ! 今日は思う存分に遊べる!

 鞄に一万円の札束をたくさん! ハイパーインフレーションでも千万あれば大丈夫!

「新総理がいっぱいお金刷ってくれたおかげで一か月前より物価が10倍に上がってる」

 さあ出かけよう! そう思ってテレビを消そうとした時、ムギがげんなりした声で言った。

「ルナさんが一日50万円もお小遣いくれる理由が分かった」

 ソフトクリームは一万円だ。来月はいくらだ? モモは鞄の中の紙切れに眩暈した。

「私のお小遣いもあげるから気を落とさないで」

「ムギも貸してあげる。言っておくけど貸しだから! いつ返しても良いけど返してね」

 二人が四千万円くれた。やはり持つべき物は友人だ。

 紆余曲折あったが三人はお昼の一時に川崎駅へ到着した。アタッシュケースに札束いっぱい。いつ紙切れになってもおかしくないが、今日くらいは持つだろう。

 モモの服装は普段着が特殊部隊が着るような射撃訓練服や胴着服やパジャマしかなかったので着慣れたセーラー服だ。ココは着慣れたカジュアルスーツ、ムギは大好きなゴスロリファッションで、いざ、川崎へ出陣!

「チネチッタに行こ」

 モモは川崎チネチッタへ二人を案内する。

 チネチッタまでJR川崎駅東口から歩いて五分ほどだ。途中で10階建てのルフロン川崎を通る。フードコートやゲームセンターに水族館など豊富な施設がある。室山組の警備兵が見回っているので防犯も完璧だ。一般人は怖くて近づきたくないが、周辺の遊び場がルフロン川崎しか無いので仕方なく来る。ぼったくり価格でも涙を飲んで遊びに来る。

 三人はルフロン川崎から新川通りに沿って、川崎チネチッタ通りの入り口に立つ。そこは室山組が管理する闇市場で賑わっていた。

 幅二十メートルはある道路は闇市の露店で埋まっている。アイス屋、焼き鳥屋、おにぎり屋、サンドイッチ屋、古着屋、古本屋、米屋、八百屋、魚屋などあらゆる店が並んでいる。値段は合法で買うよりも安い。三分の一だ。

 歩く人は老人が多い。古着や本、雑誌、新聞、壺、家具など雑多な物をリヤカーで運ぶ。

 室山組は表向きは畜産や農業、飲料水に警備など数多の事業を手掛ける神奈川市の多角経営企業である。そのため闇市場では室山組の製品が並ぶ。人々はそれらを求めに金になりそうな家財道具や骨とう品、再生紙の材料になる新聞や雑誌を持ってくる。何も無ければ体を売りに来る。ヘアスプレー一つで二日分の食料が買える。心臓一つで一年はご飯に困らない。

 貨幣の価値が暴落した今、闇市場では物品交換が主流だ。金も使えるが値段が高すぎて庶民は手が出ない。だから裏社会の住人以外は古着を持ってここに来る。

 ここを歩く老人は、闇市場で僅かな財産を米や野菜に変えている。そうして得たご飯で子供をお腹いっぱいにさせる。家族を笑顔にする。

(羨ましいな)

 守る家族がいる。モモはその空気をえっちらおっちらと荷物を運ぶ親父さんから感じた。

「焼き鳥一本5000円! 安い!」

 ココはチネチッタ通りに入ってすぐの良い匂いのする露店へ足を運ぶ。そして鉢巻したやくざ風の店主からモモ肉、皮、砂肝、レバー、軟骨、ささみ、うずらの卵を五本ずつ買う。塩と肉のコントラストが食欲をそそる。

 アタッシュケースを開けた時、周りの目の色が変わったが気にしない。

「モモちゃんとムギはどれ食べる?」

「私はモモ肉で良いよ」

 モモはモモ肉を一つ選んで食べる。塩味が利いて美味しい。

「ムギはアイス食べるから要らない」

 ムギは隣のアイスクリーム屋に走る。

「バニラとストロベリーとチョコと抹茶を三つずつね!」

 ムギはウキウキとアタッシュケースを開ける。ワシのような鋭い目をした女性店主と通りすがりがどよめいたが気にしない。

「これモモの分。感謝してね」

「ありがと」

 モモはバニラアイスを小さく口を開けて食べる。冷たくて美味しい。

「お嬢ちゃんたち。いい品があるぜ」

 隣の古着屋の親父が突然声を掛けて来た。

「呼ばれちゃったね」

 ココはニコニコと古着屋の前に立つ。

「古いけど全部いい品だ。試しにこのジャンパーを見てくれ。兄ちゃんに似合うぜ」

「私は姉ちゃんです!」

 ココは文句を言った後、ジャンパーを試着する。

「良いわね」

 そう言うとココは古着を見て回る。男物のジャンパーやジーパンに興味深々だ。男っぽい。

「お嬢ちゃんはこれどうだい」

 親父がムギに一昔前の地味なワンピースを見せる。

「そんなの古い! 私に似合うのはもっと派手で豪華で綺麗な物!」

「そんな訳の分からねえヒラヒラよりこっちの方が似合うと思うけどな」

「センス古い! 何十年前の話よ!」

「その服は死んだ母ちゃんのお気に入りだったんだぜ。古いとか悪口言うなよ」

 ムギはワンピースを受け取る。

「買ってあげる」

「お嬢ちゃんならどんな服も似合うぜ」

 親父は父親のように笑った。

「冬用のセーターに夏用のシャツに春秋の上着も買わないと」

 モモはマイページに私服を探す。古いが防弾チョッキを晒して歩くより良い。

 次に隣の古本屋に入る。店主はお爺ちゃんで小説を読みながら足を組んでパイプ椅子に座っていた。先ほどの騒ぎなど無いように、モモたちには一瞥もしない。

「少年漫画も少女漫画も主役がヤクザかストリートギャング。これも時代なのかな」

 ココは漫画コーナーに一直線し、ラインナップにため息。今のご時世、政府の悪口とヤクザや不良を美化した作品がトレンドだ。

 一方ムギは雑誌コーナーでファッション雑誌を吟味する。

「全部古臭い。やっぱりファッションは雑誌も新品じゃないとね」

 ムギは残念そうに雑誌を棚に戻す。

「料理本無いかな」

 モモは料理本を見て回る。時代が変わっても料理本は実用的だ。

「その本は婆さんのお気に入りだった」

 小説を見ていた店主が、料理本を立ち読みするモモに話しかけた。つぶらな瞳をしていた。

「お婆さんの料理は美味しかった?」

「かぼちゃの煮つけが特に美味かった。こんな世になる前は毎日食べたよ」

 古本から埃の臭いがしないことに気づく。大切に扱っている証拠だ。

「ならこれ頂戴」

 モモはお爺ちゃんに笑いかけた。するとお爺ちゃんは笑い返してくれた。

「猫用のリンスだって。アマちゃん喜ぶかな?」

 さらに隣のペットショップに入ると真っ先にアマ用のシャンプーやノミ取りにキャットフードを確認する。ココがモモの後ろで首を振る。

「開けて無いって言ったって中古のリンスとかキャットフードは止めた方が良いんじゃない? それにアマちゃんのご飯とかは全部ママが揃えてるし」

 でもモモはリンスを籠に入れる。

「リンスしたらアマちゃんの毛がもっと綺麗になるよ。そしたらルナさんも許してくれる!」

 モモはリンスにシャンプーにキャットフードにノミ取りに猫じゃらしを買った。

 その後アクセサリー屋を見て回る。ガラス玉をダイヤと偽っていたがそれすら面白かった。

 そうやって長さ100メートルのチネチッタ通りに並ぶ百以上の露店を回る。すると何だかんだと要らない買い物をしてしまう。歩くたびに店主に呼び止められるから猶更だ。すでにモモたちは闇市場の話題の一つになっていた。

 やはり買い物は楽しい。難癖付けた漫画、ファッション雑誌、古着、ガラス玉のネックレス、すべて買ってしまった。あまりにも買いすぎたから中古のトランクケースを買ったがいっぱいだ。ムギなどジッパーが閉じ切れないから買ったリボンが隙間から飛び出ている。

 そんな楽しいひと時に突然、モモのアタッシュケースが引っ張られた。続いてココとムギのアタッシュケースも引っ張られた。

 引ったくりだ。闇市場で大金を持って居たら目を付けられて当然だ。

 しかし三人はアタッシュケースを離さなかった。鍛え抜かれた三人の腕力は男一人など簡単にねじ伏せる。代わりにひったくり犯が引ったくりに失敗した衝撃で道路にひっくり返った。

「離せ!」

 三人のひったくり犯は両手でアタッシュケースを引っ張る。それでも三人の片手に敵わない。

「やっぱり川崎は治安悪いわね」

 ココがめんどくさそうに言うと、それを合図にモモ、ココ、ムギは三人のひったくり犯の腹に前蹴りを叩き込んだ。

「それで済ませてやるから感謝しなさい」

 ココが軽蔑の視線をやると、ひったくり犯は腹を押さえて咳き込みながら逃げた。

「凄いなあんたたち!」

 見て見ぬふりしていた観客は騒ぎが済むと拍手する。

(助けてくれれば良いのにって言ったら残酷かな)

 モモは少しだけ観客に手を振った。

「あいつら、レッドスカーフのメンバーだったね」

 川崎チネチッタ名物の噴水前でムギが呟く。

 ひったくり犯は全員、腕に赤いスカーフを巻いていた。モモはココと一緒に頷く。

「闇市場は室山組が管理するから、本来あいつらはここに来れないはずなんだけど」

 モモは周囲を見渡す。よく見るとチネチッタ通りに室山組の代紋を付けたヤクザが居ない。

「大友を殺したから室山組の力が減ってるのよ。だからレッドスカーフが闇市場に入れるようになった。狙いは闇市場の横取り」

 ココは腹立たし気に大股で歩く。

「せっかくの休みなのにひと悶着ありそうだね」

 モモも何となく腹が立ったので舌打ち。

「住友を殺したからレッドスカーフも弱ってる。だから今は下っ端の引ったくりで済んでるけど、時間が経てば両者は力を取り戻して、ここで大規模な銃撃戦をするでしょうね」

「何だか休み返上して全員ぶっ殺したくなっちゃった」

 気分が悪い。むしゃくしゃして仕方がなかった。

「モモもココも機嫌直して。せっかくの休みなんだよ」

 ムギがぷくっと頬っぺたを膨らませてモモとココを落ち着かせる。それにモモは苦笑。

「ごめんね、ムギちゃん。ちょっとイライラしちゃって」

「イライラした時は買い物が一番! あっちの洋服見てみよ!」

 ムギはぴゅ~とチネチッタの中へ入った。モモとココはムギの元気な姿を見て微笑した。

 チネチッタは室山組が経営する違法デパートとなっていた。外と違ってしっかりと銃を持った警備員が見回っている。入るにはボディチェックと有り金の確認が必要だ。

 チネチッタの違法デパートは室山組の幹部やその愛人に家族、室山組と手を組んでいる組の幹部、室山組と手を組んでいる警察官や政治家がお客様だ。一般人も入れるが金が無いと門前払い。面倒を起こしたら射殺されても文句は言えない。でも三人は恐れず入る。

 中の客は外より少なく、上等なスーツやドレスを着ていた。脇を走ってはしゃぐ子供もスーツを着ていた。全員、ボディーガードにアタッシュケースを持たせている。

 ムギは服屋に直行してゴスロリファッションを見て回る。

「ねえねえ! これ似合う?」

 試着するとクルリと一回転。スカートがはためき、黒いストッキングが見えた。

「似合うけど値段高くない?」

 ココが指摘するとムギは値札を見る。そこに五千という文字があった。

「ハイパーインフレーションなんて死んじゃえば良いのに」

 ムギは渋々服を戻した。

 その後も三人はチネチッタを見て回ったが、どれもこれも高額だった。

 安くて千万、高いと十億、貴金属など金塊で無いと買えなかった。

 結局ムギは二千万円のストッキングと千万の上下の下着を買った。モモもムギと同じく千万の上下の下着を買った。ムギは赤でモモはピンク色だった。かなり際どい下着で買っても着ないと思ったが空気に押されて買った。それでも楽しかった。

 買い物が終わったら夕食だ。日本料理店で雰囲気が良い。

「ちょっとだけ奢ってあげるわ。ちょっとだけだから!」

 ココが持ち金の少ないモモとムギを見かねて奢ってくれた。だから遠慮なく頼む。

「ムギはきな粉とわらび餅とこしあんのお汁粉に豆腐の和風デザートかな。モモは?」

「私はお刺身定食の特上!」

「モモちゃんもムギも目が腐ってるの? 私たちが食べられるのはお茶漬けだけ!」

 三人は二千万のお茶漬けを三つ頼んだ。ぼったくりだが美味しかった。

 夕食が終わった。良い時間だ。だが有り金全て使い切るまで帰る訳にはいかない。明日紙切れになるなら価値がある今日のうちに使わないと勿体ない。

 三人は露店で飲み物とおやつを買うと、騒がしいチネチッタ通りから外れて裏道に座る。

「ココちゃんって料理上手いの?」

「モモちゃんが来る前は私が家事担当だったから」

「ココちゃんってムギちゃんより先輩でしょ。だったらムギちゃんがやるのが自然じゃない?」

「あの子って家事が本当に苦手。特に料理は壊滅的」

「不味いの?」

「上手に作れるんだけど、後片付けしないの。食器も洗わないし、材料は出しっぱなし」

「作るの楽しいけど後片付け面倒なんだよね」

 他愛のない話をしているとムギが両手いっぱいにジュースとお菓子を持って戻って来る。

「なんの話してたの?」

 ムギはモモとココにジュースとお菓子を渡すと目を輝かせる。

「ムギちゃんは可愛いねって」

「本当に! やっぱりそう思う!」

 ムギは可愛いと言われると嬉しそうに二人の前でモデルのようなポーズを取った。

「見つけたぜ。クソ女ども」

 そうしていたらレッドスカーフのメンバーに取り囲まれた。美少女三人が地べたに座っていれば目立つのも当然だし、モモはセーラー服を着ている。見つけるのは簡単だ。

 ひったくり犯が仲間を連れて仕返しに来たらしい。全員、大ぶりなナイフを持って居る。

 そんなもの持って居たら三人を怒らせてしまう。

 モモとココとムギは足払いで男たちを転倒させ、隙だらけになったところでナイフを奪った。十人の男は情けないことに一秒で敗れた。

「消えて。そしたら怪我しないよ」

 モモは地べたに這いつくばる男たちを見下す。ムカついても今日は休みだ。買い物もたくさんした。汚い血で汚したくない。

「やっぱりお前ら室山組の女か」

 男たちは捨て台詞とともに尻尾をまいて逃げた。

「何か勘違いしてるみたいだね」

 モモは仏頂面のココとムギに笑いかけた。

「勝手に勘違いさせておけば良いわ」

 ムギは表情を和らげたが、ココはまだカリカリしている。今にも噛みつきそうだ。

「ムギがジュース買ってきてあげる」

 ムギはココを気遣ってジュースを買いに行った。その間にモモはココの背中を撫でる。

「ココちゃん機嫌直して。あんな奴らに機嫌悪くしてたら川崎でやってけないよ?」

「川崎って魔界ね。ミサイルで吹っ飛ばした方が良いわ」

 ココが肩をすくめると殺気が消えたので、モモは一安心した。

 何だかんだと真っ暗になった。楽しいと時間はあっという間に過ぎる。

「電車無くなっちゃう!」

 ココが悲鳴を上げる。時間は午後の十時だ。川崎駅は十時に閉まってしまう。ほぼ手遅れ。

「ムギは川崎から歩くなんて嫌だよ!」

 ムギが走ればモモとココも走る。川崎から武蔵小杉駅まで五キロ以上。自宅となるとその倍はかかる。歩けば二時間以上、荷物いっぱいならさらに重労働、汗だくはごめんだ。

「待て!」

 そしたらすぐにレッドスカーフのメンバーが立ちはだかった。またさっきの奴らだ。狭い裏道に十人が通せんぼ。さらに仲間を集めた。蟻一匹通れない。

「何なのよ!」

 踵を返すが、後ろにもレッドスカーフが居た。三人は総勢二十人の男に囲まれた。

「動くなよ」

 さらに二十人の男が銃を突きつけた。

「ちょっとピンチかな?」

 モモはココとムギの様子を見る。

「こんなの私たちならピンチに入らないでしょ」

「男ってバカだから、すぐに鼻の下伸ばして油断する」

 ココとムギはどこまでもふてぶてしい。だからモモも勇気が出る。

「こいつらは室山組の女だ。油断するんじゃねえぞ」

 男たちは表情を険しくさせた。当てが外れたモモは横目でココとムギを見る。

「ちょっとピンチかも」

「ムギはモモやココみたいに銃弾なんて避けられないよ」

 少しだけ二人の表情が強張る。さすがに狭い路地裏で二十人に一斉射撃されたら、いくら弾道を感じ取れるモモでも避けることはできない。

「全員裸になれ。靴も脱げ。変な真似するな!」

 唇と両耳にピアスを付けたリーダー格の男が銃を向けながら命令する。

 モモは背中に冷たい物を感じた。

 服を脱がせる。それは本来、男が女を犯すための行動だ。だがこの状況で意味するのは三人が武器を持って居ないか確かめるためだ。

「分かった。脱ぐから撃たないで」

 抵抗したら発砲される。それが分かったので三人は全裸になった。すると手下が素早く地面に落ちた上着に下着を奪い取る。

「武器は持ってません」

 手下は三人が丸腰であることを報告した。

「ロリの超デカパイに女子高生。しかも喧嘩もつええ。良い女だ。一人は男みたいだが」

 ピアス男は報告を受けるとようやく、部下とともにチンパンジーよりも低能と分かる下種な笑みを浮かべた。特にムギに熱い視線を向けた。その腐った目にモモは生理的な嫌悪感で身の毛がよだつ。ムギも同じようで胸の谷間や首筋に汗をにじませる。滴がキラキラ宝石のように光り、おまけにミルクのような匂いがするので男たちは一層興奮する。

「あのデカパイどんだけでけえんだ! 堪らねえ! やっぱり室山組って金持ってんだなぁああああ! あんなロリとやれるなんてぇえええ!」

「女子高生とやれるなんてやっぱり室山組ってすげえんだな!」

「あいつ女だったのか……男のボディーガードより女のボディーガードの方が間違いはねえって感じだろうが、騙されたぜ」

 男たちはモモとムギに夢中だ。

「やっぱり私って男に転生するべき?」

 ココはキラリと涙を流した。

「お前ら、こいつらをどうしたい?」

 ピアス男はニタニタとモモとムギの裸体を舐めまわす様に見る。

「連れてって輪姦しちまおうぜ」

 手下もピアス男と同じようにズボンを膨らませる。

(こんな不潔で気持ち悪い奴らなんて嫌だ!)

 モモは煙草と歯磨きの一度もしていない黄ばんだ歯垢塗れの歯を見て真っ青になる。

「ムギたちは室山組の秘密を知ってるよ」

 ムギが一歩前に出た。

「どんな秘密だ」

 ピアス男の表情が強張る。

「室山組はあんたたちのアジトと、どこに誰が住んでるのか知ってる」

「何だと!」

 ピアス男はもちろん手下も一斉に青ざめた。

「言えるのはそれだけかな~」

 ムギは両手を頭の上に組む。体を揺らして大きな胸とお尻を揺らす。

「マジだったらどうする?」

 手下の一人がピアス男に囁く。モモとココとムギは読唇術で会話を聞く。

「マジだったら俺たち全員寝込みを襲われちまう……」

 男たちは気まずい表情で視線を迷わせる。

「村井さんに合わせよう」

 ピアス男が手下に言った。

「良いのか? 嘘だったら逆に殺されるぜ」

「室山組の女が言ってんだ。嘘とは思えねえ」

 闇市場で大金を持っていてそこら辺の少女とは思えないほどの強く気も強い。ピアス男が室山組に所属する女性だと思い込むのも当然だ。

「それにこれだけの上玉だ。殺すのはもったいねえ」

 ピアス格の男はムギを見て涎を垂らした。

「分かった。車を持ってくるから待っててくれ」

 手下の七人が路地裏から去った。他は銃を向ける。

「せっかく目の前にムギみたいな良い女が居るのに犯さないの?」

 ムギは不機嫌そうにアヒル口になる。

「お前は体通り淫乱か?」

「ムギはエッチ大好き!」

 ニパッと微笑む。

「お前ら、油断するな。一物を食いちぎられる。楽しみたいなら後だ」

 ピアス男は油断しても最後の一線は越えなかった。

「命拾いしたわね」

 ムギは顔を逸らし、忌々しそうに呟いた。

「お前らこっちに来い」

 数分もしないうちに、男たちは銃を突きつけながら三人を歩かせる。

「ムギの服と荷物持ってきてよ!」

「うるせえそんなこと言える立場か」

 三人は素っ裸でチネチッタ通りに出る。そうすれば闇市場の店主たちの視線を集める。

(いくら何でも恥ずかし過ぎる!)

 モモは顔を赤くする。両手を上げているから胸も下も隠せない。

 撃たれないようにするためだったから、下卑た男たちの視線は我慢できた。羞恥心を感じる前に、命があることにホッとした。

 しかし百人近くの民衆からジロジロと好奇の視線を向けられるのは我慢できない。先ほど知り合いになった古本屋の店主に気づくといよいよ泣きたくなった。

「モモちゃん。こんなので怖気づいてたらマスクの大男なんて殺せないわよ」

「ムギたちは殺し屋だよ。裸の一つ二つ見られても下を向いちゃダメ」

 そんなモモを、二人は小声で諌めた。

「そうだね」

 モモはどこまでも前を向く二人に勇気を貰った。

(私は殺し屋だ。命のやり取りをするんだ。ならこんなことで怯んじゃダメ!)

 モモは恥ずかしかったが、顔を上げて、男たちに隙が無いか目を光らせた。

「てめえら退け。見世物じゃねえんだ」

 男たちはモモたちの裸を見ようと集る野次馬にイラついていた。視線は三人から外れていた。

(隙はあるけど、ここで抵抗したら他の人が危ない)

 絶好のチャンスだった。だが古本屋の店主は巻き込みたくない。

「ココちゃん。ムギちゃん。今は大人しくこいつらの言いなりに成ろ」

 モモは読唇術で二人と会話する。

「ここはモモちゃんに任せるわ」

 二人はモモの提案を了承した。

 ここで戦うことはできない。ならば流れに身を任せて反撃の機会を伺う。

 モモが決心を固めた後、人波が捌けた。その時、古本屋の店主と目が合った。他にも闇市場で見た目とたくさん目が合った。全員、バツが悪そうに視線を逸らした。

「大丈夫」

 それでもモモは指で丸マークを作った。

「すまない」

 古本屋の店主が会釈するように頭を下げた。それを見届けた後、モモは新川通りに路上停車中の七台の車の前に引っ張られた。

(高そうな車)

 七台の車はリムジン風だった。モモは車の種類など知らなかったが外車であるように見えた。

「お前はこっちに乗れ」

 三人は別々の車に乗せられた。用意周到だ。こうなると仲間と連携が取れない。

 モモは先頭車両の後部座席に座らせられた。そして挟み込むように両サイドに男が座った。

「出せ」

 助手席に座るピアス男が命じると、外車は軽快に走り出した。

「村井さん。お話があります」

 ピアス男は車が走り出すと即座に電話を始めた。

「室山組の女を捉えました。そいつらの話だと、室山組は俺らのアジトを知ってるようです。内容が内容なんで村井さんに会わせた方が良いと思って」

 格上の相手なのか、電話する手が小刻みに震えている。

「気も喧嘩も強い良い女です! 輪姦したらどんな良い声で鳴くか想像もできません!」

 ピアス男は突然、後ろを向いてスマホのカメラでモモを撮った。

「良い女でしょ! 会う価値はあると思うんですよ」

 ピアス男は撮影データを送信した後、饒舌になった。

「ダイス? どうして俺みたいなチンピラが?」

 ピアス男は声を落とした後、何度か会釈して電話を切った。

「運が良いなお前!」

 ピアス男は上機嫌に煙草に火をつける。

「運がいい? 運が悪いと思うんだけど?」

 モモはピアス男の態度が気になった。ピアス男は大笑いする。

「レッドスカーフのボスとやれるなんざまたとない機会だ!」

 ピアス男はとにかく上機嫌だ。

「レッドスカーフのボスとやれる!」

 モモはモモでピアス男の言葉に胸が弾んだ。

「今日で俺は幹部の仲間入りだ!」

 ピアス男は気持ちよさそうに煙草の煙を吸い込む。

(都合が良いって事かな)

 モモは深呼吸して昂る気持ちを抑える。

 レッドスカーフのボスとやれる。つまり会えるということだ。

 息を吸うごとに震えがこみ上げる。これから殺し合いが始まると己に言い聞かせる。

 これはレッドスカーフのターゲットを皆殺しにするチャンスだ。失敗は許されない。

「良いおっぱいしてんな」

 モモが平常心を保とうとしている最中、左に座る男が、我慢の限界とモモの胸を触って来た。

 車内は口臭と体臭という名の生ごみのような悪臭で満ちる。鼻が曲がりそうだ。おまけに手垢が凄く触られるとねちょりとナメクジに触られたような感覚で鳥肌が立った。

「三木さん! 俺たちもやらせてください!」

 右の男は息を荒くしながら尻と太ももに触って来た。

 豚小屋の方が居心地が良いと断言できる。

「我慢しろ。俺が幹部に成ったら腰が抜けるまでやらせてやるからよ」

 ピアス男は五本目の煙草に火をつける。

 モモは気持ち悪い手つきに身じろぎ一つしなかった。


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