「お金がない」と言った
勉強が得意でいい高校に入った。
伝統と格式がある学校で、俗っぽく言うといいところのお坊ちゃんやお嬢様が通うような学校だった。
学校の指導要綱を見てこの学校に決めたが、車での送り迎えされていいるような子がたくさんおり、やっていけるかどうかがものすごく不安になっていた。
しかし、みんないい人ばかりでいじめや、ハブられたりと不安にしていたようなことはなかった。
よかった。
そう安心したのも束の間だった。
仲良くなって一緒に遊びに行くようになるとクラスメイトのことが気になってくるようになった。
普段使いの小物が私でも知っているようなハイブランドだったり。
この間の連休に家族でどこに行ったなんて話したら海外に行ったとか、別荘に行っていたとか。
ふとした会話でお金のある、ないを感じるようになった。
ああ、私はハイブランドの財布なんて持ってないし連休だって水族館に行ったくらいだ。
そんなぐちぐちした考えがたまっていった時だった。
なにがきっかけだったかはよく覚えてはいない。
「お金がない」
そう言ったらみんなが言うのだ。
「それは大変ね」
お金がないと口に出したもののほんとうにお金がないわけではない。
お小遣いがもう少し欲しいとは思っているくらいでアルバイトもしていない。
学費は親が払ってくれているし、生活苦というわけではない。
本当に困っているわけではない。
でも、お金がないと言うとみんなが「大変ね」と慰めてくれる、心配してくれる。
私よりもお金を持っているお金もちの子たちが私を慰めて心配してくれる!
ええ、そうよね!お金がないことのツラさなんてお金もちのあなたたちにはわからないわよね!
クラスメイトが心配してくれることに私は喜びを感じていた。
だって、お金がないというだけでそのグループですぐに注目されたような気になれたのだ。
それがだんだんクセになっていき、言う回数も増えていった。
やめた方がいいなんて考えはこれっぽっちもなかった。