表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/40

20.生き証人を追え




突如、舞い込んで来たノルマンディの命令。

当然ティエラは、彼の存在を忘れてなどいなかった。

宰相として魔女裁判を決行し、死罪判決を言い渡した張本人だ。

その名を聞いた瞬間、ヴァロムも険しい顔をする。


「先手を打たれたか……」

「……どういう事?」

「ウインスはノルマンディと繋がりがある。魔女裁判に関係する繋がりだ。だからそれを吐かれるよりも先に、身柄を奪おうと仕掛けてきたんだ」

「まさか、口封じをするつもりなの!?」

「恐らくな。今のヒンドリー領に、ノルマンディを押し留めるだけの力はない。大方、身柄を引き渡さなければ不利になるような条件が書いてあったんだろう」


ウインスの罪が知れ渡ったのは、少し前の話だ。

自刃未遂の傷すら完全に癒えてはいない。

いかにノルマンディが侯爵兼宰相であったとしても、動きがあまりに早過ぎる。

罪人として拘束されているのだから、これ以上余計な真似は出来ないというのに、だ。

彼の推測は間違っていなかったのだろう。

アランが悔しそうに視線を逸らした。


「……その通りだよ。侯爵が言うに、僕への容疑が晴れた訳じゃない。義母を渡さなければ、共犯の可能性も捨てきれない、と」

「そんな! 無茶苦茶だわ!」

「それに、既に引き渡しの兵が向かっているらしい。宰相としての権限を使って、直ぐにでもこの屋敷に辿り着くと思う」


やり方が露骨だ。

このやり口は、ティエラが裁かれた時と似ていた。

有無を言わせずに権力という名の暴力で相手を圧しつける。

反論する機会すら与えない。

そんな横暴に、アランは従う気はないようだった。


「義母は、魔女裁判の真相を知っている。たっだら、取るべき行動は決まっている」

「……!」

「引き渡しはしない。僕はティエラ達に恩を返す」


ここでウインスを手渡せば、反撃の手掛かりは失われる。

アランはそれを危惧していたのだろう。

だがノルマンディに逆らえば、かつての自分と同じ末路を辿る。

適当な理由で共犯という罪を着せられ、全員捕えられかねない。

ティエラは説得を試みる。


「駄目よ! そんな事をしたら、権力の前に押し潰されるだけ! 私は魔女裁判で嫌という程に思い知ったわ! 命を奪われるだけじゃ済まないわよ!」


これ以上、自分のために誰かを傷つける訳にはいかない。

そんな思いすら込められた言葉に、アランもたじろぐ。

横で聞いていたヴァロムも、彼女に同調するように頷いた。


「彼女の言う通りです。アナタはヒンドリー家を継ぐ唯一の後継者。此処で失われると、領民たちは路頭に迷うかもしれない」

「しかし……」

「それにヒンドリー家は今、シュヴェルト家の領地も治めている状況です。ここで侯爵家に楯突けば、彼女の故郷もどうなるか分からない」

「くっ……!」


ウインスが拘束されている今、実質的に領土を統治しているのは、繰り上がりになったアランという事になる。

その状況で彼がいなくなってしまえば、領民たちにも多かれ少なかれ影響が出る。

ティエラの故郷、シュヴェルト家の領土も同じだ。

下手に楯突いて、ノルマンディに全てを奪われてしまえば終わりだ。

そう説得されると、アランはがっくりと項垂れた。

権力に屈するしかない自分を、不甲斐なく思っているようだった。


「僕は無力だ……。あれだけ息巻いておきながら、結局何も出来ないなんて……」

「いいえ。寧ろこれは好都合かもしれないわ」

「えっ?」

「そうよね、ヴァロム」


だが、決して悪い事ばかりではない。

ティエラがそう促すと、同じようにヴァロムも光明を見出したような顔をしていた。


「あぁ。先手は打たれたが、尻尾を自分から出してくれた。今ならまだ、掴み取れる」

「何を、する気なんだ?」

「証言を引き出す時間がない以上、ウインスは引き渡すしかありません。だったら、その上で奪い返す。彼女はノルマンディの罪を暴く生き証人です。魔女裁判の関係を吐かせて、彼の権威を失墜させる」

「な……!? そんな事が、本当に出来るのかい!?」


自らの権力すらチラつかせて、ウインスの身柄を奪おうとする強引さ。

最早、自白しているようなものだ。

この機を逃してはならない。

未だ意識を取り戻していない彼女を、このままヒンドリーの領土で匿うのは難しい。

一度は明け渡した上で、殺される前に取り返し、証言を引き出すしかない。

本来ならばそんな大立ち回りなど出来はしない。

だがヴァロムは臆さない。

アグレアスとの戦いで回復したばかりの中でも、ティエラのために忠を尽くす。

直後、使用人が慌てた様子で室内に駆けこんできた。


「失礼します、アラン様! ノルマンディ様の兵が参りました!」


立ち止まっている時間はない。

ここで手をこまねいては、全てが水の泡だ。

ティエラはアランを落ち着かせるよう、優しい声で告げる。


「アラン、彼女をそのまま引き渡して頂戴。後は、私達で何とかする」

「ティエラ!? まさか、君達は……!」

「私達も、そこに乗り込むわ」


逃しはしない。

彼女はヴァロムと共に、ウインスを追うために動き出した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ