宰相殿の一手
ここは、ユミル国の都アサラ宮殿の廊下。宰相殿は、最近懇意にしている大臣から声を掛けられます。大臣は宰相殿に近づき、そっと耳打ちします。
「どうやら、ザムで怪しい動きが・・・」
突然、不機嫌になる宰相殿、そして大臣にこう言います。
「君、それは、ここでしていい話かね?」
「も、申し訳ありません。しかし、緊急の情報故・・・」
「場所を変えた方がいいのではないか? それにあれを持っておらんではないか?」
といいながら、大臣は賽を振る手真似をします。
「え? いや? その?」
「いいから、あれを持って私の部屋へ来なさい! 話はそれからだ!」
にべもなく宰相殿に突き放され、思わずあっけにとられた大臣。しかし、確かにこんな場所で話す内容でもなかったな、と思い直し双六の盤木を取りに戻りました。
大臣が、宰相殿の部屋に案内されました。
する宰相殿、さきほどとは打って変わった態度でにこやかに迎えいれます。
「どうした、またそれか! 君も懲りないなあ、まあ負け越している君の気持ちもわからんでもない。よし、ここはひとつ胸をかしてやろうではないか!」
そう言って、うれしそうに盤の前に座り、賽を振る宰相殿、
「ところで、何か話があるのかね?」
(なんてめんどうな人だ!)
大臣は、宰相殿を初めてそう思いました・・・。
駒を進めつつ、話も進めていきます。結局、隣国藩主の聞き取り調査と、西の国境警備を強化するだけにとどまりました。こちらもうかつに動くと危ないから待て、と言われ大臣は首をかしげます。
本当にこれでいいのか? 侵攻かもしれないのだぞ!
大臣は、気もそぞろで、盤に集中できず、また負けてしまいました。
それから程なく、国境のアルマー村には、50名の兵士が派遣されることになります。
宰相殿は、大臣殿の情報にもあまり動じた様子はありません。
実は少し前に、大国ザムから拘束中の虜囚の解放要求がありました。しかし、それは到底ユミルが飲める条件ではなかったのです。つまり、あえて虜囚をユミルに留まらせておきたい、というザムの意図が見え隠れします。
辺境地で何か仕掛けてくるのは明らかですが、あえて相手の策に乗る作戦を選びます。宰相殿、双六に強いのは伊達ではありません。相手を本気にさせない対応も必要です。
誘い込んで密かに敵を迎撃する場所、自分の目で確かめたガルバ以西の地の利、峡谷を渡るつり橋、山間の道等、を思い浮かべます。
さて、今回はそれが吉と出るのか・・・?
宰相殿の放った一手は、果たして最善手となるでしょうか・・・。




