歯科衛生士1
「母様、私もうタマキと一緒にお風呂行かない!」
いたくご立腹のミサトちゃん、先ほどのタマキちゃんの爆弾発言に乙女心が深く傷ついた様子。
「何言うの、この子は!お姉ちゃんだから、下の子の面倒を見るのは当たり前でしょ!」
「お姉ちゃんじゃないもん、双子でしょ!」
「あんたの方が先に生まれたのよ、だからお姉ちゃんでしょう!」
「私、後から生まれたかった」
「何言うの、先に顔を出したのはあんたでしょ」
「「・・・・」」
お母様、それ以上はもう・・・。
ミサトちゃんは、懲りずに作戦Bへ。腹黒い笑いを浮かべます。
「母様、ラシルさんのお仕事って歯科衛生士だって!」
バタン!ダダーッ。お母様の登場早!
「そうでしたのラシルさん。ところで、子供達を診察していただけませんこと?もちろんお代は払います」
何ですか、お母様?そのキラキラした笑顔、ちょっと怖いです・・・。
「ミサト、タマキ呼んできな!」
「了解!」
あの~、返事まだですけど。断れ・・ないですね。
「嫌~!いや~!イヤー!」
泣きわめくタマキちゃん。しかし、虎さえ仕留めたミサトちゃんに無理やり連れてこられます。
何でもタマキちゃん、1月前から歯の痛みを訴えていたとか。ご愁傷さまです。
「痛くしないし、今日は診察とブラッシングが中心よ」
涙目のタマキちゃんに激しく乙女心を揺さぶられながら、優しく諭します。
「本当?本当の本当の本当?」
「ええ、本当、約束するわ」
「じゃあ指切りげんまん」
指切りでも何でもします、タマキちゃんのためなら。
「はーい、大きく口を開けてください。あ~、なるほど。はい、少しお口閉じて、お口横に引っ張るよ。はいはい、上の歯はどうかなあ?なるほど、じゃあ、一度お口ゆすいでください」
「どうですか?」
「歯茎に少し腫れがあります。私は歯を削るお仕事はできないので、ブラッシングの指導と目立つ歯石除去だけさせていただいてよろしいですか?」
よろしくお願いしますと、お母様が心配顔でうなずく。
ミサトちゃんがその様子を見ながらこっそり出口に向かうのを、母様は見逃さなかった。
「ミサト!」
お母様から一本のロープが放たれ、ミサトちゃんの目の前でさく裂。まるで生き物のように、ロープが伸び微動だにしない。それ以上前に進めなくなったミサトちゃん。
「次は、あんたの番だよ、ミサト!」
すみません、次回こそラシルさんお仕事無双です。