幻術師
「ダメ~!」
突然私の手から、実体のない白い影が伸び、ガウリアさんに襲い掛かる黒い影の攻撃を防ぎます。
「やれば出来るじゃないか、龍巫女さん・・・」
ガウリアさんは、苦笑いします。
黒い影は、私とガウリアさんを交互に攻撃しますが、手数はこちらが多く優勢になってきました。
「龍巫女さん、見た通りあの影は魔方陣を作っている。それをあんたの舞で描き直しておくれ。中下→右上→左→左上→中央→右下→右→左下→中上・・・の順番で魔方陣の数字を思いながら巫女舞を。終わったら地主神を呼び出すのだよ」
白い影は、私の背後から上に伸び、意志を持ったように動き黒い影と攻防しています。私は、防御を白い影に任せて巫女舞を始めます。・・・そして最後のマス目で巫女舞を終えると、何かがお腹の底へ、しゅん、と収まり力が沸いてきます!
「古の盟約に従い地に住まう地主神よ、出でよ。そして、この地を脅かす魔をすべからく祓い給わんこと、龍巫女が願いとして聞し召し給え・・・我が名は、ラシル・・・」
唱えが終わると、魔方陣が描き直され光り始めます。地面がゆらゆら揺れたかと思うと、轟音と共にとてつもなく大きな存在、体に文様を持つ巨大な戦士が現れます。戦士は腕を一振り二振りすると黒い影を瞬く間に捕えます。影は生き物のように激しく体をくねらせ逃れようともがきます。しかし、戦士からは逃れらません。やがて魔方陣の中に引き込まれ、戦士と共に消えて行きました。
「やれやれ、間に合ったか・・・」
「はい・・」
放心状態でペタンと座り込む私。
ふと気がつき、地面に膝をついているガウリアさんのそばに駆け寄ります。
「大丈夫ですか?」
「出来の悪い弟子を持つと、危ない目に遭うことが分かった・・・」
もう・・・。ごめんなさい、次からは出来る子になります・・・。
「結局あれは、何だったのでしょうか?」
「あれか? 神々に反抗した魔物の成れの果てか? はたまた、幻術師の成れの果てか? まあそんなところだろう。攻防の最中、あれから何ともいえぬ憎しみと悲しみを感じた・・・」
帰途につきながら、ガウリアさんとそんなやり取りを交わすのでした。
国境の魔物は、ガウリアさんとラシルさんの手で無事封じられました・・・。




